第二章 幼女、内政無双する

第23話 外壁作り

 温泉を十分楽しんだ後、男女別れて入っていた皆がまた居間に集まってきた。

「素晴らしいお湯でしたわ。ありがとうございます」

 アスタロトが、お父様に礼を言う。

「我が家の自慢です。お気に召したら、いつでもいらしてください!」

 ガハハ、と豪快に笑って答えるお父様。


 そして、居間のソファにみんなで腰を下ろした。

 すると、侍女が、湯上がりなので、冷やした紅茶を皆に提供してくれた。

「ぷは〜!」

 体が熱っているので、つい、ごくごく飲んでしまう。


「ひとごこちついたところで、今後の話をしましょうか」

 お父様の言葉に、アスタロトも含めて頷く一同。

「アスタロト殿の飛竜隊には、大変お世話になりました。事態が落ち着きましたら、必ず、ご領地へお礼とご挨拶に伺わせていただきます」

 まずは、アスタロトに礼をいうお父様。

「いえいえ。あまり硬くお考えになられることはありません。ですが、友好を結ぶためにも、是非一度魔王陛下と直にお会いしていただけると、嬉しく思いますわ」

 アスタロトはやはり魅力的な微笑みで答えていた。

「ああ、それはぜひ! 陛下によろしくお伝えください!」

 そうして、お父様とアスタロトは硬く握手していた。


「じゃあ、またね。リリスちゃん」

 立ち上がって、私の側にやってくると、私の頭を優しく撫でて、アスタロトは我が家から帰っていった。


「さて、今後の予定だが……」

 客人が去った後、家族で今後の国づくりについて相談を始める。

「そうだ。前宰相殿がこちらに到着されたら、引き続き、宰相職をお願いしてみては? 彼は有能ですし、国という大きな領土を治めた経験のない父上にとって、良い補佐役となってくださるでしょう」

 カインお兄様が提案する。

 確かに、宰相閣下は、真っ先にお父様に賛同してくださった。

 きっと、お父様のお力になってくださるだろう。


「次に、インフラ面ですが、ここが王都になるわけだから、移民が増えることが想定されるね。それに、貴族街も広げないといけないでしょう」

 カイン兄様が提言する。

「すると、一部の壁を崩し、新たな壁を作ることによって、居住地を広げる必要がある……か」

 ふむ、と、お父様がメモを書く手を止める。

「カイン、お前の精霊達でどれぐらいかかる?」

 お父様が顔を上げて、カインお兄様を見た。

「そうですね、ノームとゴーレムを呼んでも、一週間ほどはかかるかと……」

 ふむ、とお父様が呟く。

「それでも十分早い。仕方がないか……」


 ーーうーん。私の英霊達がお役に立てないかしら?


「サモン、だいけんじゃ、マーリン」

 私は、思いついたことを相談すべく、マーリンを呼び出す。

「マスター、どうしましたか?」

 私の隣に立ち、尋ねてくる。

「マーリンとか、えいれいって、おしろのかべ、つくれりゅ?」

 すると、にっこり笑ってマーリンが自分の胸を叩く。

「私の土魔法でしたら、あっという間にできますよ? 今でしたら、マスターの魔力も上がりましたから、以前より効率よく建設できるでしょう」

「あっという間……」

 お父様、お兄様達が唖然としている。


「失礼」

 マーリンが、前のめってきて、お父様が書いたメモ書きを覗き込む。

「なるほど、今の三倍に都市を広げたい、と。外側に、外敵向けの堀があり、その傍に城壁を建てる感じでよろしいでしょうか? マスターのお父様」

 マーリンが尋ねると、驚きながらもお父様が頷く。お父様は、心なしか、驚きのせいで、目が大きく開いているようにも見える。


「でしたら、堀として削り出した土を使って、魔法で壁を形成し、強化魔法で壁を強化しましょう。城壁は最大の守り。一刻も早く、拡げた外側を作ってしまいましょう! マスター、明日やりますよ!」

「へ! あした?」

 いきなり明日と言われて、私はびっくりして、まんまるになった目でマーリンを見上げる。

 マーリンは、相変わらず、にっこりと笑っていた。


 翌日。

 私は、マーリンに抱っこされて、新たに城壁を作るための場所の上空に浮いていた。

 騎士団の人達にお願いして、危険がないように人払は済んでいる。


「じゃあ、行きますよ。城壁作成クリエイトウォール!」

 すると、土がどんどん削れていって、堀ができていく。そして、削れた土は、レンガのような長方形の形に形成されて、どんどん積み重なっていく。

 やがて、それはまだ短いながら、壁の形状になっていた。ちゃんと、所々に、防衛戦になった時用の、小窓も空いている。

「しゅごいわ! マーリン!」

 私は、マーリンに抱き抱えられながら、絶賛してパチパチと拍手する。

「ふふ。まだこれからです。続けますよ!」

 そうして、なんだかんだと一日かけて、新しい城壁を一日で作ってしまったのだ。

 門のところは、色々細工がいるから、大工さん達にお願いして、跳ね橋タイプの立派な城門を作ってもらったわ!

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