第6話 ●道中 ~予感的中?

時刻は黄昏時。街道には明かりがないため、この時間になるとほとんど人通りはない。


その道沿いの森の上を、滑らかなペンで線が引くように、黒い何かが通り抜けていく。


仮面をつけて全身黒の衣装に身を包んだノワールである。


先ほど、騎士団が赤い旗を掲げて、慌てて王都に向かう道に進んでいった。


騎士団員には各々緊急救助ボタンが渡されており、騎士団が赤い旗を掲げながら進んだ場合、そのボタンが押され、救助要請が発せられた先に向かっていることを意味している。


可能性としては、カーゴに同行している騎士団員から発せられたことが考えられる。




つまり、それはカーゴたちが盗賊団に襲われた可能性が一番高い。


もちろん、それはあくまでも可能性であるが、ノワールは最悪の事態を想定してすぐに行動に移した。


というより、実はカーゴのことを気にしてか、いつでもかけつける準備はできていた。


別にこのことはカーゴから依頼されたわけではないため、本来はノワールがかけつける必要はないのだが、彼の『お節介』という性格からどうしても駆け付けずにいられなかった。




(杞憂であってくれ。)


そう祈りながら、ノワールは街道脇の森の上をすすむ。


前述したが、町から王都への道は一本道であり、場所の特定は比較的容易と思われる。


そして、今日町に帰ってくる予定であることを考えると、事件は王都から町にかなり近づいた場所で発生した可能性が高い。


そして、ノワールとしては、騎士団が現場に到着する前に、到着し、かつ事を片付けておく必要もある。




ちなみに、常人はこうした木の上をすべるように走る、などという芸当は到底できない。


【稀能者】であるがゆえにできることである。


【稀能者】は通常の人間の数十倍に身体能力も向上しているため、常人できない動きも容易に行うことができる。




時間としては、数分であろうか。森の上を進んでいると、馬車が横転しているのを目に周りに幾人かの人が血を流して倒れていた。


(あそこか)


ノワールは、その場に直ちに駆け寄った。


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