第5話 ●出番 ~ありがたくいただきます
「よう、先生、元気か?」
もうまもなく日が沈むであろう時に、ノワールの自宅兼診療所に一人の男性が訪れた。ダイナーだ。
「ダイナーさん、今日はどこが調子わるいんですか?」
先日、正体を隠して治療したのだが、またどこか悪くしたのだろうか?と考えたが、
「違う違う、差し入れだよ♪夕飯を持ってきた。どうせロクなもの食べていないだろうから。」
ぐうの音もでない。図星である。
ノワールも料理ができないわけではなく、食に興味がないわけではないが、ひとりでいると栄養摂取に対して無頓着になる。
このダイナーの料理は、盛り付けや味付けは豪快である。
ただ、味が大味かというとそうではなく、絶品であり、町のほとんどの人からその料理は愛されている。
ノワールは遠慮することなく、いただくことにした。どうせ断っても押し付けるだろうから、その「いやいや」、「どうぞどうぞ」というような、不毛なやり取りは嫌いだからだ。
「そういや先生。この前カーゴのやつ治してくれたんだってな♪ありがとよ♪ずいぶん喜んでいたよ。」
そういえば、ダイナーとカーゴは幼いころからの付き合いで、今も親しく交友を持っている、と聞いた。
そんなことを思い返しながら、ノワールは謙遜に首を振る。
「そういえば、あいつ今日王都から帰ってくるはずだけど、まだ帰ってきていなかったな。」
ダイナーはポツリとつぶやいた。
当然のことながら、ノワールはそのつぶやきに反応した。そしてどうしても結びつけてしまうのが、最近出没している盗賊団のことである。
「なんだ、ありゃ?」
ダイナーふと遠くに目を向けると、馬にまたがった騎士団の一団が、町から王都に向かう街道に向かっていくのが見えた。その速度はかなりであり、そして先頭の騎士団員は赤い旗を掲げている。
その騎士団の様子からして、何か異常なことが生じたことがうかがえる。
「なにがあったんだ一体?なあ先生。」
ダイナーがそう言ってノワールの方に振り向いたが、そこにノワールの姿はなかった。
「あれ?先生?あれ?」
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