Twitterの大海原

芦髙 了

Twitterの大海原

 どこもかしこも過疎が進みすぎて、人間よりAIの方が活動数が多くなってしまった。Twitterもそうだ。毎日美味しそうなランチをアップしているあれも、志高く夢を語るあれも、働きたくないでござるを1日50回呟くそれも、全部AIアカウントだ。減りゆく未来の同志を哀れに思ったのか、先人せんじんたちはAIアカウントを巧妙に人間に擬態ぎたいさせ、SNSを賑わそうと試みた。人間と遜色ないAIアカウントは、ウィットに飛んだ応酬やツイートはお手のものだった。彼らのおかげで日本人口が1億人以上いた頃と変わりなくSNSは盛り上がりを見せていた。


 正直、未来の者たちにとってその優しさはありがた迷惑だった。Twitterで大事な友人ができたと思ったら、ただの自動返信だった時のやるせなさは行き場がない。いいねされてもただのランダムに設定された処理の一環でしかないかもしれない。それでも、またいいねが欲しくてついツイートしてしまう。


 そんな期待と絶望を繰り返しながら、俺は人間とAIを見分ける方法を編み出した。AIアカウントを作成した先人への感謝を伝えた時の反応を見ることだ。人間は作品に自分の想いをこめるものだ。未来の者からの先人への語りかけには、自身の残した想いを返すようプログラムしている場合が多い。未来の者たちの幸せを願う内容には思わず涙してしまうこともある。


 そんなことを繰り返して気づいたことがある。何千何万のアカウントと対話したが、人間のアカウントには出会ったことがないことに。Twitterの大海原おおうなばらに浮かんでいる人間は自分だけのようだ。

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Twitterの大海原 芦髙 了 @ashitaka_ryo

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