第8話 みんなのカフェ始動
次の日の朝です。
ルルンおばさんとこざるのミミはお散歩にでかけました。桜の木のある空き地に行くと、漁師の次郎さんと肉屋の志郎さんが先に来ていました。
「次郎さんに吾郎さん、おはようございます」
「ルルンおばさん、ミミ、おはようございます」
漁師の次郎さんに挨拶をされて、こざるのミミはびっくりしました。
「もうみんな知っているよ」
肉屋の志郎さんもこざるのミミに話しかけます。するとそこにトラックがやってきました。大工の吾郎さんです。
「じゃあ、みんなで運んでしまいましょう」
漁師の次郎さんと肉屋の志郎さんと大工の吾郎さんは、冷蔵庫やテレビ、こざるのミミがいた本棚もトラックに載せました。
こざるのミミはなんだか寂しそうです。
「ちょっと待って。この本棚は私の家に運んでくれないかしら」
ルルンおばさんのお願いをみんなが聞いてくれました。
家に帰りルルンおばさんが本棚をきれいにすると、こざるのミミはとっても喜びました。
「この本棚はどこにおきましょう」
「カフェのテラスにおいてください」
こざるのミミがいいました。
「あら、どうして?」
「だって、元の持ち主の人が見つけてくれるかもしれないから」
こざるのミミは小さな声で言いました。
その本棚には小さな女の子が描いたような絵がありました。お花や赤い服の女の子、そしてこざるのミミもその絵の中にいました。
空き地には、パン屋の一子さん、漁師の次郎さん、農家の三智子さん、肉屋の志郎さん、大工の吾郎さん、そしてもちろんルルンおばさんが集まっています。
「キッチンカーならレンタルできる会社を知っているから、確認してみます。もしかしたら中古で掘り出し物があるかもしれなし」
肉屋の志郎さんが言いました。
「志郎さんは顔が広いから、お任せしますね」
「そうね」
「それがいい」
一子さんも次郎さんも賛成しました。他のみんなも頷いています。
「そのキッチンカーの前に作るテラスなのだけれど、これが息子の設計図だよ」
吾郎さんがみんなの前に設計図を広げました。
「屋根もあって、雨風も防げて、とってお素敵だわ」
三智子さんが絶賛しました。みんなも勿論喜んでいます。
「子どもたちからお年寄り、身体の不自由な人たちにも安心してこられるカフェにしたいわ」
ルルンおばさんが言いました。
「そうだよね。だったら、ここの段差は・・・」
みんなで意見を出し合いながら、カフェ作りが始まりました。
カフェの設備が整いつつあります。でも、まだカフェの運営方法など中身のことは何も決まっていませんでした。そこでルルンおばさんの家で作戦会議が開かれました。
「この街の人たちが気軽に集まれる場所にしたいわね」
「でも、あまり無理はしたくないわ」
「だったら、営業時間をキチンと決めましょう。お休みの日もちゃんと設けて」
それぞれができることをして協力をし合いカフェを運営していくことになりました。
「みんなで運営していきましょう」
「リーダーなんて必要ないわね」
「責任はみんなで負いましょう」
「何かが起こった時には、みんなで相談し合って解決していきましょう」
「楽しいカフェになるといいわね」
「絶対に楽しいカフェになるわよ」
みんなの顔が一段と明るく晴れやかになりました。
カフェがオープンする前の日、一子さんが一人でルルンおばさんを訪ねてきました。いつもの笑顔はありませんでした。
「ルルンおばさん、ちょっと相談があるのだけれど・・・」
「あら、どうしたの?」
「うん・・・」
一子さんは言い出せずにモジモジしています。ルルンおばさんは一子さんが話し出すのを待ちました。
「カフェのお金のことなの」
「ええ、三智子さんがカフェの工事費用を全額負担してくれたのにカフェの売上金はいらないって言っていたことかしら」
「そう、ルルンおばさんもおかしいと思うでしょう。ちゃんと三智子さんがオーナーとなって売上金を受け取らないと」
「三智子さんは他にもアパート経営をしていて儲かっているから売上金はいらないって仰っていたわね」
「そうなのよ。三智子さんはどうしてそんなことを言うのかしら。私はそれだといけないと思うのよ」
「どうしてそう思うの?」
「だって、みんなのカフェなのに三智子さんだけが損をしてしまう。平等ではないわ」
「平等って何なのかしらね」
「それはみんな同じ立場でいるってことじゃないの」
「実はね、昨日、三智子さんとお話をしたの」
「どんな話だったの?」
「三智子さんのご主人は農家の後継ぎだったけれど農作業は全部三智子さんに任せて、アパート経営に夢中だったそうなの。それでご主人が亡くなった今でも三智子さんはお金持ちなのだけれど、どうもそのご主人のやり方が嫌だったらしいのね」
「やり方?」
「そう、家賃が払えない人たちを容赦なく追い出すこともしていたらしくて」
「それは経営者としては仕方のないことだけれど・・・」
「そうなのよ。三智子さんはそれもわかっていて、今は管理会社に全て任せているから三智子さんがジャッジをすることはないのだけれど、何か困っている人たちを助ける方法はないものかと、いつも考えていたそうなの」
「だからカフェでの儲けは街のみんなが利用すればいいって言ったのね」
「そうだと思うわ。三智子さんはカフェという場所をみんなに提供できて嬉しいって言っていたの。だから、その言葉に私は甘えようと思うのだけれど・・・そして、私ができることは何でもしようって決めたの」
一子さんはしばらく考えていました。
「わかったわ。私も私ができることをしていきます。ルルンおばさん、ありがとう」
一子さんは笑顔を取り戻しました。
「明日がとっても楽しみね、ルルルン」
これからここでどんな楽しいことがおこるのか、一子さんもルルンおばさんもとってもワクワクしてくるのでした。
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