第12話 2017年 4月1日~2018年 7月31日① 僕の小説は何処へ

 ちなみにこの「2大怪獣激突!ゴジラ VS バラート」は全16話、約 21,000字である。

「よし、このゴジラ作品2編ならば、もし映画化されたとしても尺は充分だな!」

 僕は勝手に自己満足に浸りつつほくそ笑んでいた。

 もちろん続編の方も、最後はゴジラが勝利して咆哮をあげ、東京湾に去ってエンドロールになるという結末だ。


 ゴジラ小説の続編を完成させたと伝えると、会社の同僚や内輪仲間らは「見せて、読ませて!」と言ってくれた。

 …読後の感想を聞くと、僕の予想以上に好評だったので、僕は心中でガッツポーズの拳に力を込めて叫んでいた。

(ヨッシャ~ッ !! )

 ちなみにどの辺が良いと思ったのか訊いてみると、自衛隊による怪獣への攻撃シーンがなかなかリアルで臨場感があると、なかなか手応えのあることを言ってくれた。


 またまた「内輪受け」が良かったことに気分がアガった僕は、ゴジラ小説2編を東宝映画 (ゴジラ映画製作担当者宛て) に郵送した。

 原稿にはメッセージ文を別添で同封した。…内容は以下の通り。

「古くからの東宝ゴジラ映画のファンです。この度、シン・ゴジラを期待に胸躍らせて拝見しました。…しかしながら観賞後の率直な感想を言えば、ゴジラがスタンダードなキャラクターからは離れており、それ故に失望感を覚えました。作品自体のイメージがヱヴァンゲリヲンを連想させるものであり、ゴジラはまるで使徒のように見えました。古くからのゴジラファンの希望として、スタンダードなキャラクターに戻して今後またゴジラ映画を製作して頂けるようお願いします。…つきましてはその一案として、私の作ったストーリーを勝手ながら送付しましたので是非とも目を通し、参考にして頂きたいと思います。どうかよろしくお願い申し上げます」

 そしてそれとは別に、すでに原稿化してあった「奇跡の猫 みにゃん」と「たけんこうち王子の伝記」は某大手出版社2社の新人小説賞の応募に送ってみた。

 ハッキリ言ってすっかり僕の気分はイケイケだったと思う。同僚の中には、

「森緒さん、ついに作家デビューですね!受賞したらその賞金でみんなでご馳走食ってお祝いしましょう !!」

 などと言って盛り上がってる奴もいた。


 …という訳で周りも僕もすっかり舞い上がった展開になったんだけど、その後の現実はもちろんそんなに甘くなかった。


 東宝映画からは一週間後くらいに封書が返って来た。

 中を開けると、メッセージ文書があり、

「この度は貴重なる資料を送付頂きまことにありがとうございます。しかしながら現在のところ、持ち込みによる企画や郵送による投稿などは受け付けておりませんので、誠に残念ながら原稿を返送させて頂きます」

 という内容の文言と共に僕の原稿は戻されて来たのである。

 一方、「奇跡の猫 みにゃん」「たけんこうち王子の伝記」のほうも新人小説賞には全くかすりもせず、虚しく月日だけが過ぎて行った。

「良いなぁ…森緒さん、以後の人生は楽々印税生活じゃないですかぁ !? 」

「作家デビューしたら、この会社辞めちゃうんですか?」

 などと、以前はテキトーに持ち上げてくれていた同僚たちもこの結果に、

「え~っ !? … 私は面白いと思ったけどなぁ ! 残念でしたねぇ」

「また次の作品を書いて頑張って下さい!」

「ドンマイです!」

「森緒さん、ファイト !! 」

 などと能天気な、慰めなのか励ましなのかよく分からぬ言葉を僕にかけてくれましたよ。

 しかし実際のところ、この現実に僕はかなりヘコんでいた。

 …冷静に考えて見りゃ、東宝映画には、

「オレの好きな感じのゴジラじゃなかったぞ!… オレ好みのやつを作れ !! それはこういうやつだ!」

 とやった訳だから、やられた方も、「何だコイツ、不愉快な奴だな!」となるのも当然の話である。

 出版社主催の小説公募にしても、おそらく何百何千通といった数の応募が集まるだろうから、 仲間内で受けが良かった程度の作品が、運良く賞を取る可能性なんぞ限りなく低いのが当たり前だったのだ。第一、そんな数の作品をはたして本当に全て完読して審査など出来るのだろうか?


 という訳で、2~3日ほどヘコんでた僕も、頭を切り替え何とかこの自分の作品を他の手段にてより多くの人に読んでもらう方法を模索することにした。

 と、なるとまず考えられるのは「自費出版」である。

 幸か不幸か、この時僕は会社で営業職に就いていたので、取引先の中に印刷、出版関係の会社がないか調べてみた。…私の勤務先は給排水設備のメンテナンスを主業務とした建物管理の会社なので取引先は多岐に渡り、軒数も多いのだ。

 その中で都内にあるD社が、該当する会社と判明、松戸市内に印刷工場も持っていることが分かった。そしてこの工場の汚水処理浄化槽をウチの会社でメンテ契約していたのだ。

 さっそく僕は都内D社に電話を入れ、適当な理由をつけて表敬訪問のアポを取った。


 …そして3日後、先方の担当部長に面会するべく電車に乗って都内に向かったのである。














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