第11話 2016年 8月 1日~2017年 3月31日 入魂のゴジラ小説

 …という訳で僕は、シン・ゴジラを観た翌月から自分なりのゴジラ小説を書き始めた。

 この時分には僕はすでに2~3の小説を趣味で書き上げていて、会社の同僚に見てもらったり、事務部署の女子に原稿化してもらったりしていた。

(ちなみに、拙作「奇跡の猫みにゃん」「たけんこうち王子の伝記」などはこの頃に書き上げたものだった)


 会社勤めの身で、しかも仕事がかなり忙しい中での執筆は、正直大変だった。

 携帯に1話およそ1200字づつ文章を作り、こっそり事務の PC にメール送信して事務員の女子に原稿にしてもらう。

 そうやって書ける時に少しずつ原稿作りを進めて行き、およそ3ヶ月近くかかって、オリジナルゴジラ小説、

「復興へのG作戦!目覚めよゴジラ!」

 を完成させた。

 ストーリーはこうだ。


 … 202 × 年、福島原発事故後の残留放射能及び核燃料処理問題に苦慮する日本政府は、これを解決するため防衛省と共に極秘にて「Gプロジェクト」を計画。

 その内容は、福島県沖海底に休眠中のゴジラを目覚めさせ、原発の現場に誘導して、核燃料及び残留放射能を吸収してもらうという、驚くべきものだった。

 そして作戦は決行され、海自の潜水艦によって誘導されたゴジラは原発エリアに上陸、狙い通り核燃料や放射能を吸収して放射線量は安全レベルまで下がった。

 さらに自衛隊は人工的に造ったモスラ(成虫+幼虫)を現地のゴジラに差し向け、対決させる。

 激闘の末、モスラに勝利したゴジラは咆哮を上げた後、動く原子炉であるその身体を冷却するため再び海中へと去ろうとする。

 かくして「Gプロジェクト」作戦は成功したかに思えたが、その時茨城県に地震が発生し、断層の中から新怪獣が地上に出現、新たな敵対相手を感知したゴジラは、再上陸して陸路を茨城県に向かうのだった…。

(以上全13話 約16000字)


 とりあえず僕はこれを会社の同僚や、ごく親しい友人に見せてみた。

 …結果は上々だった。

「面白い!」

「描写がけっこうリアル!」

「ゴジラのキャラクターが良く活用されている!」

 など、おおむね作者が作品に込めた意図を理解評価してくれるコメントをもらった。

 …こうした「内輪受け」に僕は素直に得意顔になったが、同僚の1人がボソッと、

「何か…これじゃあ片手落ちな感じだなぁ」

 とこぼした。

「えっ?…」

 僕は得意顔から不審顔に変わった。

「森緒さんがゴジラフリークなのは良く分かったし、原発事故の処理にゴジラを利用するアイデアも面白いと思うけど、怪獣映画に馴染みのない読者には、"ふ~ん" 程度の感覚だと思うよ。…ラストに新怪獣を出したなら、やはり場所を変えてゴジラとさらに迫力あるバトルを見せてほしいよね!そうすればもっと面白くなると思う」

「…なるほど」

 僕は同僚の言葉に頷かざるを得なかった。


 それから約ひと月、僕はゴジラ小説続編の構想を考えに考えた。

 しかしなかなかこれは難しいことだった。

 すでにキャラクターが確立しているゴジラやモスラと違って、一からそのキャラクターを構築し、姿態を文章にて読者に知らしめ、ゴジラと互角にバトルするだけの武器や能力を備えさせなければならない。

 さらに言えば、日本の実際の場所で怪獣対決のシーンを描くとなれば、説得力あるリアル感をもたせる必要がある。…ゆえに新怪獣にはむやみに破壊光線やら必殺ビーム出すとかの描写は控えようと思った。


 そしてそれからさらに3ヶ月後、僕は続編の、

「2大怪獣激突! ゴジラ VS バラート」

 を書き上げた。

 …ストーリーはこうだ。


 突如として茨城県つくばみらい市に出現した新怪獣は北北東に進行を開始した。

 その体長は60メートル、硬質な体表面、頭部に2本の触覚と1本の突起角を持つ巨大甲虫形態の怪獣である。

 福島原発から南に進行するゴジラとの遭遇地点は茨城県東海村の原子力研究所と予想され、防衛省自衛隊は2大怪獣の激突を回避するため、新怪獣を攻撃する。

 一方、福島県浜通りを南下するゴジラへは、海上から海自の護衛艦が砲撃して足止めをさせていた。

 しかし攻撃を受けた新怪獣は地中へ潜り、その結果相手の気配を失なったゴジラはいったん海中に去る。

 2大怪獣が姿を消し、脅威は去ったかと思われたが、「バラート」と名付けられた新怪獣は、5日後に福島県いわき市に出現。バラートは地下の石炭を餌にしてパワーアップしていた。

 自衛隊戦闘ヘリによる攻撃を頭部突起角から火炎弾を発射して撃墜させたバラートはいわき湯本温泉街を破壊し、人々は逃げまどいパニックになる。

 そして小名浜港からゴジラが出現、いわき市内にて2大怪獣が激突!バトルの結果、ゴジラの熱線をかわしたバラートは背後からゴジラを掴んで飛翔、東京方面に向かう。

 自衛隊は戦闘機を出撃させ、飛行中の2大怪獣にミサイルを発射し、命中させる。その結果ゴジラは東京湾に落下、負傷したバラートは東京スカイツリーに取り付く。

 自衛隊はロケットランチャー部隊をスカイツリーに派遣し攻撃するが、その時ゴジラが東京湾から江東区辰巳埠頭に上陸、再び飛翔したバラートと東京で2大怪獣最後のバトルが始まる。


「よし、出来た!」

 僕は自信作の完成に1人ほくそ笑んでいた。






















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