第4.5話 師匠の日誌

 ○月18日

 テラスティアを発ってから暫く、俺はアルフレイムでも有数の大都市、キングスフォールに足を運んだ。 

 なるほど、整備された街並み、活気に溢れた人々、大都会だ。


 だが俺の目的は観光じゃねぇ、官警に追われずに人殺しの技をいい感じに教えられるようなクソみたいな場所、つまるところスラムなわけだが……なんと、変な娘を拾っちまった。


 ナイトメアのガキだったが、手前に石を投げたガキの顔面をめちゃめちゃになるまで殴り倒して平然とした顔をしていやがる。


 たまーにこういう暴力に躊躇のない変な奴が生まれるのは戦場渡り歩いてるから知ってるが、こういう腐った目をしてる奴は初めてだ。環境や受けた仕打ちで性根が腐るんじゃなくて、生まれた時からのロクデナシだなこりゃ。


 。うちの流派を継がせるに最適な素質だ。


 ニルデスト戦場生存術は俺のような金貰って人殺しやる奴にはお似合いのクソみたいな流派だ。つまるところ、倫理も何もない最悪の奴が継ぐのがこれからの応用と発展につながるだろう。


 大体なんなんだリュッケンの堅物どもは。『殺しすぎだ』だのなんだの言ってて追っかけ回しやがって、人も蛮族も戦場にいるなら何も変わらねぇだろうが。カルゾラルでまで俺のことを殺そうとするとか頭おかしいんじゃねぇのか?


 そりゃお前村人全部殺したりとかしたけどよぉ……不可抗力だぞありゃ、アンデッドになっちまったなら仕方ねぇだろ。それに騎士殺しちまったのはあいつが先に喧嘩売って来ただろうが? それともあれか?クロチルドの子飼いの奴の首折ったのが悪いのか?(以下愚痴が続いている)


 ええい、紙の無駄だ。とりあえずうちに弟子が出来た事を祝おう。とりあえず土地は組織力が明らかに弱いヤクザ者から奪って、道場も大工に頼んで作らせたしそこに放り込んどくか。


 ○月31日

 イリーナだが中々根性がある。一日に数本は必ず骨を折っているし、ブッシュダガーなどの暗器を腹に刺したりしてるが、死ぬほど痛そうな顔はするが倒れねえし泣き言は言わない。というかもの凄い罵倒を慇懃無礼に飛ばしてくる、やっぱこいつ才能あるな!


 ×月6日

 背骨を折っちまった。かなり焦ったが神殿に駆け込んでギリギリ助かった。普段滅多に大声を上げねぇ無愛想な娘がめちゃくちゃな悲鳴をあげたのは驚いた。治癒した後、夕飯に大量の唐辛子を入れられたが甘んじて受け入れてやろう。


 ×月27日

 あんの馬鹿、俺の目にバグナグ(虎の爪を模した暗器)をねじ込もうとしやがった。食費と風呂貸してる奴にそんなことするか普通? だがまぁ、扶養者でも容赦なく殺しにかかるその姿勢は良い、気分が良かったのでつい気合が入ってしまいイレーナの顔面の骨が粉砕してしまった。また神殿に駆け込んだら神官に手甲付きの拳でしこたま殴られた、なんだあの女。


 □月7日

 イレーナは一通りうちの技を覚えた。小さい子供からか飲み込みが早い、俺より強くなるのも後数年だろう。そろそろ2、3人殺させてみるか、まぁ別にこいつの場合躊躇いとかなさそうだが。


 という訳で何人かぶち殺すまで帰れないゲームを開始することにした。まぁスラムのチンピラ数人死んだところでここの官警は動かないというのはわかっているので好きにやらせていいだろ、多分。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る