どこから送られてきたのかしら?
錬金術師の本名はリボソームです。
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ワタクシはニンゲン国の錬金術師です。
キンニク社の司令室には
ところがある日突然、見慣れない
出来上がったホムンクルスはキンニク社のどの社員とも違った姿をしていました。話を聞いてみると、彼はニンゲン国のホムンクルスでさえなくて、コロナ組の海賊船の乗組員で、スパイクと言う名前だそうです。コロナ組という名前を聞いた途端、ワタクシの前世の記憶がよみがえりました。
* * *
前の生でワタクシは別のニンゲン国の錬金術師で、キドウジョウヒ社に勤めていました。ところがある日コロナ組の海賊が
* * *
前世の思い出から我に返ったワタクシはあらためて送りつけられて来た
ところで、
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(解説:読み飛ばして下さってかまいません)
”錬金術師”の本名はリボソームで、メッセンジャーRNA(”
新型コロナウイルスのRNAワクチンはスパイクというタンパク質をコードするメッセンジャーRNAが元になっています。リボソームがメッセンジャーRNAを認識する5’-UTRという部分を効率の良いものにするとか、コドン最適化というトリックを使ってタンパク質合成効率を改善するとか、RNA合成に使う4種類のヌクレオチド(”
RNAワクチンは細胞に取り込まれるとしばらくの間リボソームによって翻訳されてスパイクが作られますが、もちろんここからウイルス感染が始まることはありません。RNAワクチンの接種は3週間おきに2回行われますが、ここでは初回だけ描かれています。
新型コロナウイルスのRNAワクチンが筋肉注射された後、実際にどの細胞に取り込まれてどのくらいの期間スパイクタンパク質が作られるかは人間では詳しく研究されていません。良く似たRNA・脂質ナノ粒子をマウスに筋注した場合、RNAにコードされたタンパク質が接種箇所の筋肉組織で10日間ほど、肝臓で2日間ほど検出されます。このシリーズでは接種箇所の骨格筋細胞(”キンニク社”)に取り込まれた場合が描かれていますが、筋肉組織中にいる樹状細胞という食作用のある細胞に多く取り込まれるという説もあります。また、ここでは作られたスパイクが細胞外に放出されるということにしてありますが、スパイクは細胞膜にくっついているタンパク質なので、細胞が壊れないと出てこないという可能性もあります。
”錬金術師”の前世では、本物のコロナウイルスが気道上皮細胞に感染して増殖しました。この場合はコロナウイルスのRNAゲノムが複製され、スパイクを含む何種類ものコロナウイルスのタンパク質が作られ、ウイルス粒子(”海賊船”)が組み立てられて、次の感染サイクルが始まります。
次回の主人公はスパイクです。
(参考文献)
1. リボソーム (https://ja.wikipedia.org/wiki/リボソーム)
2. コロナウイルスの構造と複製サイクル(ライフサイクル)(https://www.jiu.ac.jp/features/detail/id=6822)
3. Pfizer–BioNTech COVID-19 vaccine (https://en.wikipedia.org/wiki/Pfizer–BioNTech_COVID-19_vaccine)
4. Moderna COVID-19 vaccine (https://en.wikipedia.org/wiki/Moderna_COVID-19_vaccine)
5. An Evidence Based Perspective on mRNA-SARS-CoV-2 Vaccine Development (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7218962/)
6. Expression kinetics of nucleoside-modified mRNA delivered in lipid nanoparticles to mice by various routes (https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4624045/)
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