第4話 おしまい

 怖い。

 全身がガチガチに凝り固まってしまったようだ。


 それでも、ンジャヤは死なない為に必死になった。


 敵をしっかり見ること。

 無理はしないこと。

 大丈夫そうだと思えた時にだけ、攻撃すること。

 辛抱すること。


 ンジャヤにとってはいつだって、それだけが全てだった。


 目の前には大きな、大きな魔物。リュウと呼ぶそうだ。


 周りには怪我人、死人もいるかもしれない。

 叫び声が、うめきが聞こえる。


 正直、今まで経験した全てにおいて、一番酷い状況に思えた。

 リュウが口をかっと開いたので、ンジャヤは攻撃が当たらなそうな所まで逃げた。

 それからまた、隙を見て攻撃する。逃げる、隠れる、攻撃する。


 どのくらいの時間が経ったのだろう。


 気づいた時、ンジャヤはドシィン、とリュウが倒れる姿を見ていた。


 怖かった。

 怖かった。

 とても怖かった。


 ガタガタと震える体を抱きしめ、ンジャヤはその場にへたり込んだ。

 歓声は生き残った兵たちのものだろう。


 暗雲が晴れていく。

 臭くて臭くてたまらなかった空気に、どこからか花と草の香りが紛れていた。


 ンジャヤは二度と戦いたくない、怖かったし感触は気持ち悪かったし、最悪だったと思いながら、ンジャヤの為に用意された、よたよたと帰りの馬車に乗り込んだ。


 役人が言う。


「ンジャヤ様には国王様より褒美がもたらされます! 」


 役人が言う。


「望めば王族と結婚することもできましょう!」


 役人が言う。


「広場に銅像を建てる予定があります!」


 ンジャヤは首を振り、ああ大変な目に合った、と与えられた宿まで昼寝をすることにした。

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村人の勇者 ササガミ @sasagami

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