中学編 第17話 俺の答えは②
「あ!土屋っ…!?秀ッ!!」
だらんとした秀と、それを支える俺を見つけた斎が血相を変えてこちらへと駆け寄ってきた。
傷口はまだ深くて、未だに肉が見えてしまっている状態だ。
「完治薬使ったところだ…。あと少ししたら完全に傷は閉じるはず。」
まだおさまらない自分の焦りとは裏腹に、飛び散ってしまっていた血も、肉片も、普通では有り得ない速度で修復されている。
その代わり、秀の顔は激痛に耐えて顔がクシャクシャになってしまっていた。
「……。」
斎の顔が青く、今にも泣き出してしまいそうな顔で秀を見る。ブツブツと呟きながら、何か考え込んでいるように見えた。
だけど俺はそれを気にすることが出来るほど余裕は無い。でも学校のみんなは守らなきゃ。そう思いながらも、ただただ腕の中の友達が生きることだけを願っている。
刹那、遠くからガラスが割れる音が耳に入る。
「土屋…何が起こってるんだ?教室の方の廊下もめちゃくちゃなんだ。気がついたら周りの物が散乱してた。一瞬だけ、なんか不気味な女の顔が見えた。」
カッシャーン!
「死人だ…こんな昼間っから。秀もそいつにやられた。」
音が…近くなってくる。
「速すぎてほとんど見えなかった。気付いた時にはもう…。」
ガラスの音。マテリアルが崩れる音。吹き出す蛇口の水の音が、奥の廊下から。
「斎は秀を連れて安全なところに。みんなの誘導はどうにか俺が…」
「大丈夫、長谷川さんと阿部さんがタッグでやってくれてる。風で一気に運べるからって、すぐ応援に来」
グァンッ
突如激しく地面が揺れた。いや、学校が、揺れてるのか。パラパラと細かいマテリアルが降る。砂埃がたってくる。
学校ごとぶっ壊すつもりなのか。
「土屋…僕、もやる。」
「秀…ッ!」
ぐったりしていた秀が、もそもそと動いた。
生きてる。死ななかった。良かった。…良かった。
「でもお前…」
言葉が否定しようとしたその瞬間、身の毛のよだつような殺気。
「【
直後、3人を囲む守りの
『脆い…脆い脆い脆い脆い脆い脆い脆い脆い脆い脆い脆い脆い!!!!』
金切り声をあげながらその印象的な頭にある生き物を振り上げる。
「【
「【貫け、ニノ槍】」
振り上げた大きな口が秀の
間髪入れずに炎の槍でその頭を貫く。
手応えのないメキョッと変な音がした。
「「!?」」
分厚い氷の盾が、いとも簡単に…。
『雑魚が。』
ネチャッと笑うその瞳が一瞬…消えた。
次に見えたのは、ゼロ距離の死人。目の前にある大きな青い目。
ドォン!!学校をぶち破る…音。
そして身体中に広がる息が詰まるような痛み。
「…かはッ…!」
グラウンドまで転がる自分の身体。
意識が朦朧として。
吹き飛ばされた身体は全身から血が滴っていた。
土屋ッ!
遠くで二人が声をあげていた。
立ち上がれなかった。
救援を呼ばなきゃ…。
キューブの回復力だけでどうにか持ち堪えていた俺は未来に助けを求めようとした。でも。
「せん、とう中…。」
キューブで開示した未来の情報は、戦闘中。
あいつもどこかで戦ってるのか。
なら、助けを呼ぶわけにはいかない。
遠くで広がる見なかったことにしたい光景を、霞む目でしっかりと見据えた。
立て。
立て。俺の足。
「骨が、折れようが…。」
立て。支えなければ崩れそうな胴体。
「内蔵が、破れようが。」
口から吐き出される血を拭って。
「立て…隙を一瞬でも見せるな…!!」
立て!!!!
「ナイスファイト、つっちー。」
不意に、重い身体が軽くなる。
傷が、修復されていく。
「遅くなってごめんね土屋君。」
「…長谷川…阿部…。」
「耐えてくれてありがと。参戦するヨ。」
隣に立っていたのはかつての絶対王女と悪戯好きの不思議サポートちゃんだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます