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俺は完全に犯罪に巻き込まれてしまった。武博は絶望的にそう思った。後ろのキチガイ野郎は国会議事堂とか抜かしてやがる。何で俺が巻き込まれるんだよ。ふざけるな、俺の日常を返せ。
「まぁ何かの縁だ、俺もこれから死ぬとこだし、一つ置き土産でもするか」
何をするのか、と武博は生唾を飲んだ。まさか俺を巻き添えに道連れにするつもりか、冗談じゃない。
「俺はテロリストだ」
またしても不意に男は言った。武博は驚きはしたが、事故は禁物だと、しっかりと前を向き直った。
「名は秋山輝彦、25歳」
突然名乗りだした。25?俺と4歳しか変わらないじゃないか。
「俺は今まで同志と共に何度も国家と戦ってきた。秘密裏の戦いだから報道には全く流れてこないがな」
秋山が武勇伝を語るかのごとく話し出した。
「もう同志は皆やられて俺だけとなってしまった。だが俺は簡単に死ぬわけにはいかない。この腐った国の中枢に風穴を開けてやるまでは俺は死に切れない」
「だったら何で俺を巻き込むんだよ」
武博は口調を荒げた。
「大丈夫だ、国会に着くまでにはお前にはサヨナラする。殺しもしない」
妙に和らいだ口調だ。本当にこのキチガイ野郎はテロリストなのか?
「だったら聞いてみたい。何でテロリストなんかやってるんだ?大義でもあるのか?」
武博はぶっきら棒に聞いた。何となく思った、ただそれだけだった。
「聞いてみたいか?・・・ち、警察だ」
「あんたがヘルメットを被らないからだよ」
秋山はバイクに乗ってからヘルメットを着用していなかった。ずっと迷彩柄のキャップを被っていて、妙に涼しげな顔で佇んでいた。ついで武博は助かったと思った。ここで検挙されて、こいつの銃の所持がばれる。いや、俺がばらす。そしてこいつは逮捕され、事件は未然に解決される。そうして俺の日常は戻る。だが、武博の予想は甘かった。
「そこのバイク止まりなさい」
案の定止められた。武博は素直にパトカーの前の路肩にバイクを寄せ、片足を着いた。
「後ろ被らないとダメだよ」
一人の警官がパトカーから降りて来た、とその時パァンと乾いた爆音が鳴り響いた。秋山が発砲したのだ。
「何やってんだよおめぇ!!」
武博は怒鳴った。そこで秋山は容赦なくパトカーの中にいた警官の眉間を撃ち抜いた。
「早く行けぇ!!」
銃口が武博の首筋に当てられた。こうまで容赦なく撃つなら本当に撃たれる。武博は止むを得ずバイクを発進させた。
周りの沿道で歩行者が叫び声を上げて混乱していた。バイクが走り去った。すると、最初に撃たれた警官が動き出した。まだ生きていた。パトカーまで這い蹲りながら無線機を取った。
「お、応援を・・・、たの・・む。ZR-01、ナンバー、○、○区23、52の、・・・43・・・ダ」
彼はそのまま気を失った。
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