第4話
なぜこんな事になった。
一人の少女が頭を抱えていた。マシュマロン女王国の女王カール・フルーティアだ。20歳の若さだが一国の主だ。
「我が国の財政は、破綻寸前です。これも全てカール女王様の責任ですぞ。」
マシュマロン女王国の貴族達からねちねちと言われ、どうにか財政を立て直すにも、果物と野菜しかない我が国では、どうしようもない。
「隣国のギャルメル王国に助けて貰えば、いやいや交流もないし、攻められたらすぐにやられてしまう。」
ギャルメル王国は、この世界で一番発展した国で、戦力も桁違いに強い。
そうだ!ギャルメル王国の強さの秘密を知れば、我がマシュマロン女王国も発展出来るに違いない。
女王は騎士3人に指示を出し、ギャルメル王国の強さや町並み、経済状況などの調査を依頼した。
それから3日後正午過ぎに、マシュマロン女王国を襲う悲劇が始まった。
「我々は、ギルティー実行団、わが主への敵対行動と見なしやってきた!」
マシュマロン女王国の城の周りには、様々な種族達が集まっていた。マシュマロン女王国の騎士団は、捕縛され動けなくなっている。
ギルティー実行団ってなんなの!
有罪なの!私は彼らの主への罪で殺されるの!
ギルティー実行団達が、女王のいる広間までやってきた。
商人の人間やエルフやドワーフ、魔族や獣人がいる。
ギルティー実行団は、お菓子屋【ギルティー】の非公式の秘密団体である。
「私がマシュマロン女王国、女王のカールよ。あなた達の主は、誰なのかしら?」
おそらくギャルメル王国の王様だろう。
「我々の主は、キャンディ・スイーツ様だ!」
商人の男が声を上げる。
「え?キャンディ・スイーツ?様ってだれ?ギャルメル王国の王様かしら?」
『はぁ』
女王の発言にキャンディー実行団全員がため息をつく。
ありえない。世間知らずにも程があると全員が女王を見ている。
「キャンディ・スイーツ様は、お菓子屋【ギルティー】を経営するこの世界一番のパティシエで我が人間の宝である。なのにあなたは一国の主でありながらキャンディ・スイーツ様を知らないなんて恥ずかしくないのか!」
一商人が女王様に説教するなんておかしい事だか、ギルティー実行団は、誰も止めない。
むしろ。
「いやいや、彼はエルフの進化した姿に違いない。ハイエルフいやゴッドエルフに違いない。」
「ふざけてるのか?あの建築技術は神の秘技に違いねぇ。エルフな訳ないだろ。奴は創造神の生まれ代わりでドワーフの仲間だ!」
「ふっふっふ、今の種族なんて何でも良い。だがあと80年後には、我が魔族の仲間入りだ。最高位のパティシエリッチキングとして君臨するだろう。」
などと、張り合っている。
「パティシエリッチキングって何?いやそれよりも、キャンディ・スイーツなんて知りません。」
頭の中で骸骨がマントをなびかせ、ケーキを作っているが、女王様は本当に知らない。女王業務のため、他国に遊びに行くこともないし、城の料理人の料理しか食べていない、箱入り娘なのだ。
「それが罪です。あなたが送った騎士3人がキャンディ・スイーツ様の店で買い物をして虜になったのは良いです。しかし、そのせいでキャンディ・スイーツ様が国家侵略加担容疑にかけられました。その意味が分かりますか?」
「なぜ?騎士達の仲間だと思われたから?」
「正解です。さすが女王様、頭が良いですね。キャンディ・スイーツ様のお菓子は、世界を虜にしています。我がギャルメル王国の防衛大臣が目の敵にしてまして、これを期にキャンディ・スイーツ様に牙を剥きました。」
「そうですか。全面的に私が悪いですね。」
「いえいえ気にすることはありませんよ。キャンディ・スイーツ様を知る機会がなかったのでしょう。一回目は許します。二度目はありませんけどね。」
商人の男が笑顔を向けるが、目が笑っていない。周りの者達も嫌に圧が強い。
ギルティー実行団団員のルール、どんな人でも知らない事はどうしようもない。だから一回目は許す。だが二度目は自分の意思で反抗しているので、決して許さないのだ。
「それではこちらが、キャンディ・スイーツ様のお菓子です。」
商人の男がお菓子の詰め合わせを女王様へ渡す。
「これがお菓子ですか。」
カール女王が袋から取り出した一つのマシュマロを口に入れる。
「ん~~~~!素晴らしいです!」
今まで食べてきたマシュマロは、腐っていたと錯覚するほどの美味しさだ。こんな状況だが今まで生きてきた中でも最高の笑顔で、さらに袋からマシュマロを取り出している。
プルプルプル。
商人のポケットから音が鳴る。通信の魔法道具で、鉄の板から声を送受信できる。
「はい。国王様久しぶりです。キャンディ様があんな事になって、え?キャンディ様がマシュマロン女王国の果物が欲しい。分かりました。対等の交易ですか?女王様に変わります。」
「女王様、ギャルメル王国の国王様が話があるので変わってください。」
通信機をカール女王に渡す。
「はい、マシュマロン女王国の女王カール・フルーティアです。」
マシュマロを素早く飲み込み答える。
「ギャルメル王国国王マルコリーニ・ギャルメルだ。マシュマロン女王国では、果物が特産品らしいが、我がギャルメル王国と交易をしようではないか。」
「交易ですか。不利な条件はありませんか?」
マシュマロン女王国は小国で強国のギャルメル王国との交易では、不平等な条件になるだろう。
「条件?いやいや無いよあるとすれば、キャンディ君が望む果物は優先して用意して欲しいくらいだね。財政が厳しいらしいじゃないか、すぐに農業で国が潤うはずだよ。」
「よろしくお願いします。一度キャンディ・スイーツ様と会えませんか?」
「キャンディ君に?そうだ、一度ギャルメル王国においでよ。娘と同い年みたいだから、話も合うだろう。交易の書状も作るついでに遊びにおいで。今からくるかい?」
「今からですか?馬車でも3日はかかりますよ。」
「我が使い魔なら3時間で着きますぜ。」
魔族の男が手を上げる。
「お願いします。今から向かいます。」
女王様と国王様の話は終了した。
「それでは行きましょうか。」
魔族の男が口笛を鳴らすと、城の広場に10メートル級のドラゴンが降り立った。
ドラゴンの背中には、人が入れる小屋が乗っている。
小屋に魔族の男と女王、商人の男が乗り込み王都へ飛び立った。
残ったギルティー実行団達は、お菓子屋【ギルティー】マシュマロン女王国店の確保のため街へくりだした。
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