ドンでバン!でボン。

青条 柊

日常

 朝。


 我が鈴谷家には嵐がやってくる。


 「凛ーー!迎えに来たぞー!」

 「はいはい。茜、おはよう」

 「ああ、おはようだ!」

 隣家のあき あかねがやってきた。


 「それでなー、私はシュバババッとやってやったんだ!」

 茜は最近FPSにハマっている。

 「うんうん、それで?」

 「そしたらな、グレネードがドンって来てな!バンッて避けたんだ!そこにあったガソリンに火がぶわって行ってな!ボーンって爆発したんだ!」

 

 茜の言葉は擬音が多い。


 昼休みも、違うクラスの俺の所にやってきて喋っている。

 「古文のむっちゃんがねー、勉強しとけって、がー!って感じで言うんだよー。私予習もばっちりしてるし、復習だってガンガンしてるのに!」

 「そうだね」

 「だってさ、テストでカリカリかけないだけなの。それでもがー!って言われるんだよ!凛、助けて~!」

 「いや、頭に入れような。手伝うから」


 何なら、十分しかない休み時間だって来る。

 

 「ねぇねぇ、凛!さっきさ、ぐわーってカラスが欠伸してたよ、見た!?見た?」

 「いや」

 「え~、もったいないなぁ。こう、ぐわーってぐりゃってなってぶわーって来たんだよ!その後、黒猫がにゃーってやってうりゃうりゃってカラスを追い払ってたんだ!」

 「そうか」

 「でねでねー―――――」






 そして、放課後は勿論話を聞きながら帰る。


 「このゲームでね、戦車のボーン!って音が細かいんだ!こうドドォオーンって感じで、ドカーンじゃなくてねー!」

 「へぇ」

 

 「兄がばくーって食べちゃったんだ!一口で!ペロンと!ほんと私怒って、うがーってやってたら菜月(茜の妹)がぷぷって笑うんだ!ひどくないか!?」

 「そうだな」

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


 ふいに、茜が立ち止まった。

 どうしたんだ。

 さっきまで機嫌良さそうにうがーって言ってたじゃないか?


 「……………私、話面白くないか?」

 「ん?」

 

 振り向けばうつむいている。

 夕日に背を向けて茜の顔を見ても反射でよく見えない。

 

 「ずっとうがーっとか言ってばっかだし」

 「うん」

 

 「ずっと私が喋ってるだけだし」

 「そうだね」

 

 「凛は何も話ししてくれないし」

 「ん?」


 「・・・・・・」

 「茜?」

 

 黙った。

 どうしたんだ?

 近寄ってみても何も反応しない。

 寧ろ唇をかみ始めた。


 仕方がない。


 「どうした、茜?」


 身長差があるから俺がしゃがみ込まないと。

 覗き込む。


 ――――目に涙がたまっている。

 「ちょ、どうした!?」

 「―――――ふぇぇんんんーーーー!」

 ボロリと大粒の涙がこぼれ始めた。

 キラキラとながら帰る。


 「このゲームでね、戦車のボーン!って音が細かいんだ!こうドドォオーンって感じで、ドカーンじゃなくてねー!」

 「へぇ」

 

 「兄がばくーって食べちゃったんだ!一口で!ペロンと!ほんと私怒って、うがーってやってたら菜月(茜の妹)がぷぷって笑うんだ!ひどくないか!?」

 「そうだな」

 

・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


 ふいに、茜が立ち止まった。

 どうしたんだ。

 さっきまで期限良さそうにうがーって言ってたじゃないか?


 「……………私、話面白くないか?」

 「ん?」

 

 振り向けばうつむいている。

 夕日に背を向けて茜の顔を見ても反射でよく見えない。

 

 「ずっとうがーっとか言ってばっかだし」

 「うん」

 

 「ずっと私が喋ってるだけだし」

 「そうだね」

 

 「凛は何も話ししてくれないし」

 「ん?」


 「・・・・・・」

 「茜?」

 

 黙った。

 どうしたんだ?

 近寄ってみても何も反応しない。

 寧ろ唇をかみ始めた。


 仕方がない。


 「どうした、茜?」


 身長差があるから俺がしゃがみ込まないと。

 覗き込む。


 ――――目に涙がたまっている。

 「ちょ、どうした!?」

 「―――――ふぇぇんんんーーーー!」

 ボロリと大粒の涙がこぼれ始めた。

 

 「茜?」

 指でぼろぼろ零れる涙を拭ってみる。

 「凛がぁー!相槌しかしてくんないしぃ!こんな擬音ばっかじゃダメかなぁー!!」


 ああもう。

 

 茜の前髪をすくい上げる。いっぱいいっぱいに涙のたまった目と視線を合わせる。

 「ふぇぇぇぇぇええええええ」

 「ああもう、茜!」

 「ひぅ、っく」

 

 おでこにキスをした。

 

 「ふぇ!?」

 

 「そんなに可愛いとダメだ。喋れなくなっちゃうじゃないか」

 

 茜の頬が、アキアカネみたいに赤くなる。

 

 「――――そんなの、ドンでバン!でボンってなっちゃうよぉ」

 

 あーあ、泣いちゃった。

 でもなんか、素直に嬉しい気がする。

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ドンでバン!でボン。 青条 柊 @aqi-ron

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