第6話  魔器装

 それから数日が経ち、いつの間にか金曜日の昼休みを迎えていた。あの日以来、極力食堂を使うことを避けて、購買で買って来たパンと紅茶を食べていると、伊織が思い出したように話しかけてきた。

「そうだ。そろそろ移動しないと。午後はみんな専修だし」

 専修の授業。魔器装の適正に応じて、クラスが分けられる。勇斗は強襲科アサルトが専修になっていた。

 たしか貰った時間割表には四時限目までしか書いてなかった。午後の授業が書いてないのは書く必要がないからか。

「そっかー、勇斗は元々普通の高校に居たからね。金曜日の午後の授業は基本的に魔器装を使った授業になるから、専門棟に移動するの」

 専門科棟に向かうらしい。クラスメイトもちらほら移動をはじめていた。

「遅れると殺されるからな。ほら杜若あいつ、生徒相手でも容赦しないし」

「あんまりそういうこと言わないほうがいいよー?」

 伊織は昔から陰口とかが苦手だったか? しかし、そういう感じは全く感じさせない。むしろ警告しているようにも聞こえる。

「あんま、硬いこと言うなよ、委員長様。こいつにもちゃんと教えておかないとマズいぜ? 遅刻して恥を晒すのはやばいからな」

「誰が容赦ないんだ? イヴァン」

 杜若先生がイヴァンの真後ろに立っていた。

 気配を殺して近づいていたらしい杜若教諭は、イヴァンにヘッドロックをかけ、逃げられないように拘束していた。

「先生、………すいませんでした」

 無意味に抵抗していたが、逃げられないことがわかると素直に謝った。

「それはそうと初魄、理事長室に行ってから授業に参加しろ。遅刻を認める」

「理事長室ですか?」

 まだ手続きが終わっていないのか。それとも別のことだろうか。勇斗の不安を取り除くかのように続ける。

「お前の魔器装がヴァリトから届いたらしい」

 強襲科棟でお前の実力を見定めてやる。そう言い残し、杜若先生は教室から去っていった。

 魔器装が届いた? 俺に専用魔器装をくれるということか。

「いいなー、専用魔器装かー。わたしも欲しいなー」

 自分専用の魔器装を持てるのは、ここに通学している生徒としては羨ましいのだろう。

「オレも持ってるぜ。じゃあ強襲科棟で会おうぜ」

「そうだね。わたしは専門科が別だからここで一旦お別れだね」

 二人も教室を出ていく。

 とりあえず、理事長室に向かうとしよう。

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