第2話 編入
ゴールデンウィーク明けの第三高等学校校門前。
「着いた。やっぱりすこし遠いよな」
勇斗は前日に下見に来ているとはいえ、居住区画から離れた場所にある学園区画その中でも魔器装特区は人で溢れていた。
気になるのは、同じような制服でも細部が微妙に異なっているあたり、制服の改造は公序良俗に反しない限り、認可されている。らしい。
ここの学園都市は〈世界有数の
校門をくぐると目の前にグラウンドがみえた。グラウンドだけでも先週までいた高校の校舎がすっぽりと入ってしまいそうだ。校舎もそれに負けないくらい大きい、他にも学科棟らしきものが見える範囲で二、三棟はある。総生徒数どれだけいんだよ。
転入生かな。
上級生らしき人が横を通り過ぎていく。ここで立ち止まっていても仕方ないので、校舎に向かって歩いていく。
生徒用玄関に辿り着くと、その下駄箱の数に驚く。
「嘘だろ。下駄箱だけでもこの数かよ」
三年制の高校なのに三十クラス分はあるだろうか、すさまじい広さだ。ここから自分のクラスを探すだけでも大変だろう。
新入生これ大変だっただろう。俺も初めてだから探すんだけど。
「一年七組、一年七組と。あった。ここの一番端の一番下にネームプレートがあるらしいんだけど、これか」
勇斗は自分の下駄箱を見つける。
そういえば、上履き貰ってないし持ってきてないけどどうするかな。
何も入っていないであろう下駄箱を開けると、なぜか新品の上履きが入っていた。
「至れり尽くせりだな。ありがたいけど」
勇斗は靴を下駄箱に押し込み、新品の上履きに履き替える。
さて、職員室はどこにあるのだろうか。
学校までの地図は貰っていても、校内の案内図は貰っていないことに気づく。
「職員室に行くんだよね?こっちだよ」
「ああ、ありがとうございます。・・・なんだ、伊織か」
声をかけてくれたのは伊織だった。学校だけあってちゃんと制服を着ていた。周りにいる生徒のほとんどが改造しているので、パンフレットに載っている制服と同じものを着ているあたり、相変わらず真面目だなと感心してしまった。
「なんだとは失礼ね。幼馴染のよしみで案内してあげようと思っていたんだけどなー」
「すいませんでした。お願いします」
九十度近くまで頭を下げ、許しを請う。
「あはは。そんなに怒ってないよ。じゃ、行こっか」
伊織は同じクラスのようだ。一年七組の下駄箱で靴を履き替えていた。
「こんなに広い学校だと迷わないか?」
先導して歩く伊織の後を追いながら、聞いてみる。
在校生が校内で迷うなんてなさそうだが、入学したての一年生はどこに行くにも迷いそうだと思った。と言うか迷える自信がある。
「あー、聞いたことある。校内で迷って遅刻したり、授業に遅れたりしたせいで休日を補習で潰されたなんてこともあったらしいよ」
さらっと怖いことを聞いてしまった。これから注意しておこうと肝に銘じておく。
「ここが職員室。わたしは教室に行くから、またあとでね」
職員室までの案内をすると、自分の教室に足早に向かって行った。
(もし遅れたらすまん)
八時くらいに着くようにしてはいたが、職員室に来るまでに十分程過ぎていたため、心の中で伊織に謝っておく。
コンコンコン。
ノックをしてから、職員室に入る。
「失礼します。今日からここに転入することになった初魄勇斗です。
職員室に入ると自己紹介をして、担任が居るかを確認する。
「君が初魄勇斗か、話は校長室で聞く」
髪をオールバックに整えた、眼鏡の職員が席を立ち、真反対にある扉を示し、勇斗に移動を促す。
それに従い、職員室から校長室へ入る扉の前に移動する。
「失礼します。校長、彼が到着しました」
ノックをして入るなり、杜若先生は校長に報告をする。庭を見ていたらしい校長がこちらへ振り返る。
「君が初魄君か、初めましてここの校長の
生徒に対してと言うより、来賓に対してするような丁寧過ぎる対応をしてきた。
「杜若だ。お前の担任で強襲科の主任だ。これから三年間は俺の指導は絶対だ。出来る、出来ないではなく、やれ」
逆に杜若教諭は、昨今の教育方針を無視するかの如き発言をする。
「ともあれ初魄君、代表候補生としての責務をちゃんと果たすためにも学をしっかり修めてくれ」
成宮校長はまた、庭を眺め始めた。話は終わったということだろうか。
「さて初魄、職員室に戻るぞ」
杜若先生に促され、職員室に戻る。
職員室に戻ると、整理整頓が異常なまでに行き届いたデスクからプリントを一枚取り出し勇斗に渡し、自分は当然のように腰掛ける。
「初魄、軽くガイダンスを始めるぞ。当然だが、先日送られた資料にはもちろん目を通してあるな」
一応、目は通してある。と言うか、目を通しておかないと授業内容が把握できないからではある。幸いなことに先週まで通っていた高校より授業は進んでいなかった。
「よろしい。まずこの学校は魔器装使いの育成に特化した教育機関だ。ここでは実力至上主義だからな、代表候補生であろうが弱ければその権限を剥奪される可能性もあるということを肝に銘じておけ。それと俺個人としてはお前の実力に期待している」
最後によくわからないが、期待されてしまった。
キーンコーンカーンコーン。
「チャイムが鳴ったな、教室に向かうぞ」
椅子から立ち上がると教室へ向かう。俺もそれについていく。
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