第六十一話 ゼルドリスサイド ~遭遇~
時間を少し遡り、悪魔族からの宣戦布告を受けたときのこと。
勇者パーティーのメンバーは副学園長の元へと集まっていた。
「副学園長! 一体何が起こっているんだ!」
ゼルドリスが叫ぶ。
「悪魔族が街へと攻めてきたと言う情報しかない。ただ、この非常事態に際して、国王様が勇者様方の力を借りたいと言っておるようじゃ」
副学園長は、学園長が国王より届いた手紙を受け取った際、偶然近くいた。
その際に手紙の内容を見ていたのだ。
そこに書いてあった勇者と言うのをゼルドリス達と勘違いしている。
「でもどうして国王様は、私達がいる事を知っているのですか?」
「わしもにも分からんが、勇者様方はこの世界で有名ですから、何処からか噂が広がったんだと思う。まあ、そのおかげでこのような事態に急ぎ対処できるのだからよかったと言えよう」
ラミアの疑問に答える学園長。
かなりいいように勘違いしている。
国王が知るはずもないし、知っていたとしても頼ることなどない。
何故なら、ゼルドリスが勇者ではないことを知っているのだから。
ただこの時、国王の耳元にはゼルドリス達のよくない噂だけが複数も伝わっていたのだが、このことをゼルドリス、副学園長が知る由もなかった。
「そうですね。ですが、悪魔族とは一体何者なのでしょうか?」
「わしにも分からんの。今まで聞いたこともない種族名だしな」
「もしかすると、かなり遠くに住んでいる種族かもしれませんよ」
「確かに、それなら聞いたことないのも仕方がないですな」
「まあ、どんな種族が襲ってきたとしても俺達、勇者パーティーにかかれば問題ない」
「そうですね。勇者様はこの世界を救うお方なんですから」
なかなかいい勘違いをしている。
まず、悪魔族が遠くに住んでいる種族、これ自体はあながち間違えではないが正解でもない。
だが、聞いたことないのは王家が隠してきたからである。
それとゼルドリス達は勇者でもない。
そろそろ自覚して欲しいものだが、どうしようもないだろう。
そして、ゼルドリスは悪魔族に一度ボロ負けしているため問題大ありなのである。
「では皆さん、よろしくお願いいたします」
「ああ」
副学園長と別れてゼルドリス達は街へと出て行く。
その後、副学園長室に一人残された副学園長は、
「これでわしのこれまで失敗も帳消しになる。それどころか、この王都に勇者様方を呼んでいたことを評価されるだろう。そうなれば、この学園の学園長の座はわしの物じゃ」
などと薄気味悪い笑みを浮かべているのであった。
学園を後にしたゼルドリス達はまっすぐに悪魔族達がいる南門へと向かっていた。
悪魔族を倒す、それだけを頭に置いて。
その道中、
「誰か! 誰か助けてください!」
悪魔族らしき者に襲われている女性を二人を見つけた。
ゼルドリス達はその光景を見て一瞬動きを止めたが、
「どうする」
「私達の目的は大元を倒すことです」
ラミアの言葉に対して、
「多少の犠牲は仕方ないよ」
それに続くクリス。
「先を急がないとです」
そしてセルカ。
「そうだな。俺達が外にいる悪魔族を倒せばいいだけだからな」
ゼルドリス達は助けを求めている女性を見捨てて先を急ぐのであった。
女性二人はその光景に絶望してしまった。
それでも生きることを諦めなかっただけ精神が強かったと言える。
それからゼルドリス達はまっすぐに南門へと進んでいく。
そして、後百メートル程の所までやって来た所で、数匹の悪魔族達と遭遇するのだった。
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