第五十七話 野外授業2日目 4

 オオカミ型のスケルトンの魔物の前に出た俺達。

 ただ、魔物は俺達には目もくれずにレイド達を見つめている。

 

「無視ですか!?」


 そのことに腹を立てているミリアリア。

 俺も、少しイラっとしていた。


「おい!」


 オオカミ型のスケルトンに向かって声を掛ける。


 俺の声に反応するオオカミ型のスケルトンと、恐怖のあまり目に涙を浮かべてもう限界のレイド達。


「レイド達を後ろに下がらせてくれ。魔物の相手は俺がする」


 二人に声を掛ける。


「分かりました」

「任せて」


 二人はすぐにレイド達の元へと向かってくれた。

 そして俺は、一対一でオオカミ型のスケルトンの魔物と向かい合う。

 そんな俺を見て睨みつけてきているようにも見えるが、全体が骨のみのためよく分からない。

 だが、睨まれているような視線を感じる。


「グルゥゥゥゥ~~~~~~~!」


 俺を見て唸り声をあげている。


 俺を殺すためにタイミングをはかっているのだろう。


「少し落ち着けよ。どうせ直ぐに勝負がつくんだからよ」


 俺は腰に下げている剣に手を伸ばす。

 そして、集中力を上げている。

 オオカミ型のスケルトンの魔物同様にタイミングをはかっている。


 そんなところにミリアリア達が戻ってきた。


「勇者様!」

「スレイブ!」


 周りに他のクラスメイトがいないため、二人が本来の呼び方で声を掛けてくる。

 だが、その声に答えることはない。


 体中の魔力が剣へと集まってくる。

 そのことにオオカミ型のスケルトンの魔物も気づいているのか、俺の気が背後にいる二人へとそれたことを見逃さず攻めてきた。

 その攻撃に一瞬遅れて反応する俺。

 ただ、魔物如きに後れを取ることはない。


 一瞬遅れて出た俺の攻撃は、光を超える速度でオオカミ型のスケルトンの魔物へと直撃した。

 音もなく交わった俺とオオカミ型のスケルトンの魔物。


 後方で見ている二人は息をのむ。


 俺は振り返りオオカミ型のスケルトンの魔物を見る。

 同じくオオカミ型のスケルトン魔物も俺を見ようと振り返ろうとすると同時に崩れ落ちた。

 先ほどまで動いていたとは思えない程に、静かな骨。


「一撃でしたね」

「そうですね。こんな簡単に勝負がつくとは」


 別に簡単ではないがな。

 かなり体力も使ったし、普通に戦っていた方が楽だったかもしれない。

 だが、今回は自分の魔力をどこまで高めれて、どれだけ剣にその魔力を乗せて攻撃を放てるかを試したかった。

 その攻撃を使って、魔物を一撃で倒せるか試して見たかったのだ。


「まだまだだな。正直ミリアリアの剣速にはまだ届かないや」


 俺は、笑いながら言う。

 悪魔族との戦いの時に見たミリアリアの剣。

 あれは美しく、かっこよかった。

 だからこそ、伸びた能力でどこまで再現できるのかと思っていたが、まだまだのようだ。


「そうですか? 私には勇者様の剣の方が凄いと思いましたよ」

「いや、まだまだだよ。でもいつかは追い付くつ」

「そうですね」


 ミリアリアは遠くを見るような目をしながらつぶやいた。


 それから暫くして俺達がダンジョンを出ると、クラスメイト達が凄く心配そうに待っていた。


「出て来たぞ!」


 一人の生徒が俺達の姿を見ると、指をさしながら声をあげた。

 それと同時に、クラスメイト達が俺達の元へと駆け寄ってくる。

 そして、質問攻めにあうのだが、


「皆、学園に戻ってからにしないか」


 俺が言うと、


「そうだな」

「こんなところだと落ち着いて話も聞けないしな」

「戻ってからにしましょう」


 皆納得してくれた。

 そんなクラスメイト達とは別で、ゼルドリス達が少し離れた所から俺達のことを見ていたのだった。

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