第五十六話 野外授業2日目 3

 先頭を行くチームが何回か交代して、今はレイド達のチームが先頭にいる。

 レイドが先頭へ行く際、「出来損ないどもが」などと小声で言っているのが聞こえてきた。

 正直あいつの人を見下す態度は目に余るものがある。

 だがそれをここで言ったところで訊く耳を持たないことは分かっているため何も言わない。

 

 それに、今回のダンジョン探索ではクラスメイト達にとってはかなりいい勉強になった。

 出てくる魔物達は弱いスケルトンのみだが、森で戦った魔物よりは強い。

 そんな相手にどういう風に戦って勝つかを考えるのはいい経験になる。

 それに、今回の戦闘で魔物を倒した経験事態が自分達の自身にもなっているようで皆、胸を張っている。

 これなら、将来的にも期待が持てるだろう。


 などと思っていると、近くに一体の魔物の反応がある。

 戦闘を行うのはレイド達にチーム。

 彼らの事だし余裕だと思っていたのだが、今回の魔物は少し違う。

 数自体もここまで出会ってきた魔物達に比べて少ないが、かなりの魔力をため込んでいる。

 ダンジョンでたまに見かける変異種だろう。


「スレイブお兄様」

「ミリアリアも気づいたか」

「はい。この先にいる魔物少し変ではないですか?」

「そうだな。たぶん変異種だろう。ダンジョンではたまに現れるんだ」

「強いのですか?」

「ああ、ここまでで出会ったスケルトン達とは比べ物にならないだろうな。なめてかかるとケガではすまないかもな」

「あいつらならそれくらい分かっているんじゃないの。なんせ元クラス一位の実力者達なんだし」

「そうですね。きっと余裕で倒してくださいますね」


 などと俺達は呑気に話していた。

 

 だが結果は俺達の予想を反して、レイド達の劣勢。

 しかも戦闘に参加していないクラスメイトにも被害が出ている。

 

 予想できなかったわけではないが、まさかここまで酷いことになるとは思わなかった。

 戦闘の最中一度だけ、「助けに入ろうか」と声を掛けたが、「お前らの手など借りん」と言われたため後方で見ているだけだった。


 正直、オオカミ型のスケルトン魔物にここまで苦戦するとは思わなかった。

 それにゼルドリス達も助けに入ろうともしない。


「ミリアリア! アスナ! いつでも戦闘に入れる準備をしといてくれ」

『了解!』


 二人が声を揃えて返事をする。

 その声を聞き俺は、


「ゼルドリス指示を出せ! そうしないとケガだけではすまなくなるぞ!」

「分かってる。全員後方へ退避しろ。レイド達は、そのまま魔物の中位を引いておくんだ! いいな」

「ですが」

「口答えをするな。今はこれが最善の策だ!」


 ゼルドリスの声に従ってクラスメイト達が来た道を駆け足で戻っていく。

 その間、ゼルドリス達はクラスメイト達と一緒に逃げていった。

 俺は、その光景をみてまじかとあきれ果てた。


「おい!」


 俺は逃げているゼルドリスの腕を掴み声を掛ける。


「っち! 無能が何のようだ!」

「何の用だじゃないだろう。自分の生徒が必死に戦っているんだ! 手を貸してやらないのか!」

「なんで俺達がそんなことをする必要がある! 俺達にもしもの事があったらどうするんだ!」


 たかがオオカミ型のスケルトンの魔物相手にこいつは何を言っているんだ。


「それでも勇者かよ! もしお前が本当の勇者だと言いたいんならあのくらいの魔物一撃で倒して見ろ!」

「うるさいな! ならお前達が勝手にやれ! 俺達に関係ない」


 ゼルドリスは俺の手を振り払って出口へと全力で向かって行く。

 その光景に俺だけでなくミリアリアにアスナも驚きを通り越して呆れていた。

 そんな中必死に戦っているレイド達。


「行くぞ」


 俺は二人に声を掛けて魔物との戦闘に向かうのであった。

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