第五十五話 野外授業2日目 2
ダンジョンの中、ゼルドリスを先頭に進んでいる。
ダンジョンはよくある作りで周りは岩で覆われている。
あまり明るくないダンジョン内、本来であれば雷属性の魔法を使って周りを照らすのが普通だが、その指示をゼルドリスが出さない。
俺がやってもいいが、それでは意味がない。
すると、
「先生、周りが暗くて見にくいのですが?」
一人の女子生徒が声を上げた。
少し怯えた声。
それでも女子生徒は勇気を振り絞って言ったんだろう。
「っち! 雷魔法を使えるやつはいるか」
一人の男子生徒が手を上げる。
「なら、フラッシュだったか? その魔法でダンジョン内を照らせ」
ゼルドリスは命令口調で言う。
その言葉に従って男子生徒が雷魔法のフラッシュを使う。
それによりダンジョン内が照らされて明るくなった。
「それじゃ、お前達のチームが前を歩け」
先ほどダンジョン内が暗いと指摘した生徒のいるチームを指名した。
彼女らは昨日の森での戦闘の時、少し苦戦していた。
周りの戦いを見ていたおかげで何とか勝てたという様子だった。
そんな彼女らを一番に指名するのは流石にひどい。
ゼルドリスの事だから、自分が気づけなかったことを指摘されて腹が来たんだろうが、生徒に当たるなんてどういうことだ。
指名された生徒はどうした物かと困っている様子。
しょうがないかと、
「俺達が先頭を歩くよ」
俺が声を出す。
流石に見ていられなかったしな。
「無能がしゃしゃり出てくんな! 俺はそこの生徒を指名したんだ!」
「困っているじゃないか。それに、交代で戦闘を行うんだ、別に誰が最初に先頭を歩こうが関係ないだろう。それとも、何か別の理由でもあるのか?」
そう言う俺に対して何も言ってこないゼルドリス。
まあ、ただの腹いせだとは言えないはな。
俺達三人は前はクラスメイト達の前に出た。
その際に、女子生徒とすれ違った時、
「ありがとうございます」
小声でお礼を言われた。
この声はゼルドリス達には聞こえていなかったようだが、後ろを付いてきていた二人にしっかりと聞こえていたようで、少し怒っている様子。
後が怖そうだと思う。
俺達が先頭に出てからはしばらくは何もなく静かな洞窟の中といった印象。
学園長から話は聞いていたが、それほど強い魔物もいない様子。
これなら、まあ心配ないかと思いながら、周囲の警戒をしながら進んでいく。
そんな時、
「スレイブお兄様!」
ミリアリアが声を上げる。
その次にアスナも気づいたようで、杖を構える。
「様子を見てみようか」
俺達が声を上げたため、他の生徒達も警戒をしているが、まだ魔物の姿は見えない。
そのことを疑問に思う声が後ろから聞こえてくる。
後五秒もすれば姿を現す。
一般的で、それほど強くない魔物のため、それほど問題もないだろう。
最初に現れる魔物としてはちょうどいいと思う。
「あれ!」
生徒の一人が姿を現した魔物を指さした。
俺達の目の前に現れたのは、骸骨の魔物スケルトン。
武器を持っていないため、下位の魔物に分類されるだろう。
「ミリアリア任せていいか」
「はい、分かりました」
腰に下げている剣に手を掛けるミリアリア。
そのことに少し不満そうなアスナ。
今回は、ダンジョンでの戦闘未経験のミリアリアに順番を譲ってやってくれて心の中で思いながら、ミリアリアの方を見る。
スケルトンは全体が骨であるが、それほど防御力は高くない。
それに武器も持っていないため反撃も殆どないだろう。
ミリアリアにとっては、朝飯前であろう。
このダンジョンに出てくるのが武器を持たないスケルトンばかりなのであれば、他の生徒達でも少しは苦戦をするだろが問題はないだろう。
そんなことを考えている間にミリアリアの戦闘は終わっていた。
「こんな感じですか?」
「ああ、十分だ」
五体のスケルトンを一撃で倒したミリアリアが不満そうな顔で戻ってくる。
あまり手ごたえを感じなかったんだろうな。
まあ、このダンジョン程度ではしょうがないだろうなと思いながら次のチームと先頭を交代するのだった。
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