第五十四話 野外授業2日目 1
翌朝、野外授業二日目を迎えた。
クラスメイト達は、寝なれない場所で寝たのと、短い睡眠時間のためか、あまり疲れが取れていない様子で、目を擦っている。
俺達はと言うと、俺はほぼ寝ていないので少し眠いがまあ問題ない。
アスナは冒険者時代からよく夜営をしていたので全く問題ない様子。
それどころか、よく眠れ過ぎて逆に眠そうだ。
ミリアリアは慣れていないのか凄く眠そうである。
それもそうか、戦いに慣れているとは言え、ミリアリアはお姫様で俺達と以前行った依頼も夜営はなかった。
つまりは、他のクラスメイト達と同じように今回が初めてだということである。
「おはようございますスレイブお兄様、アスナ」
「おはよう二人とも」
「おはようございますスレイブお兄様、アスナお姉様」
お互いの顔を見合せて挨拶をする。
周りに他のクラスメイトがいるため二人とも普段呼びはせず王様が決めて設定で呼び合う。
起きた後は焚火を消して、軽い朝食を食べる。
朝食は昨夜の残り物のパンを少し食べて腹に入れるだけ、正直味気ないが仕方がない。
そんなこんなでクラスメイト全員が出発の準備を終えた所で、
「さてそろそろ出発するぞ。今日はすぐ近くにあるダンジョンへ潜って魔物と戦う。その後王都へと帰還する流れになる」
そう言って出発するゼルドリス達。
それに続く俺達。
昨日のように順調に行けると皆思っているようだが、そんな簡単なことはない。
森のような魔物達であれば楽なのだが、
「今のままじゃ心配ね」
「そうだな。こんな気持ちでいたら死者が出るかもしれないな。だが、その空気を変えないといけないはずの奴は前を何も気にせず呑気に歩いていしな」
「森の魔物達とはそんなに違うのですか?」
「違う。」
俺は断言する。
「森の魔物達は元々が動物だ。そんな彼らが魔力を吸い込み変化したのが魔物になった姿。だがダンジョン内に巣くう魔物達は違う。奴らは全てが魔力でできている。ダンジョンが生み出した存在なんだ。そんな魔物達が弱いはずがない。むしろダンジョン外の魔物など小物だろう」
俺の言葉に対してミリアリアは少し驚いた。
元々対人戦の経験しかなかったため魔物に対しての知識がそれほど多くない。
ダンジョンに潜ったこともないだろう。
そんなミリアリアがダンジョン内の魔物とそれ以外の魔物の違いを知らなくても仕方がない。
まあ俺の場合、ゼルドリス達のパーティーにいた頃、魔物の情報など全て俺が集めたりしていたこともありかなり詳しくなった。
「それだけじゃないけど、今回は学園の授業で来ているんだしそれほど強い魔物もいないはずよ。森でも普通の魔物しか出てこなかったしね」
「普通の魔物ですか? 他の森なのでは普通の魔物以外もいるのですか?」
「いるわよ。変異種とかと呼ばれる魔物がね。そういう魔物は冒険者が倒すことになっているけど」
「そうなのですね。勉強になりますわ」
「俺達が戦うことはないよ。王様からの依頼では来ないだろうからね」
「そうですね。私達は戦わないといけない相手は悪魔族ですものね」
俺達が話していると、
「後ろ! うるさいぞ! 静かにしろ!」
ゼルドリスが俺達に向かって大声で叫ぶ。
そんなに大声を出したら魔物達が気づいてこちらに向かってくるぞ。
「すみません」
めんどくさそうに答えてまたミリアリア達との話に戻る。
そんなこんなで俺達はダンジョンの入口へと到着した。
その間、魔物達とは出会わなかった。
俺の仕業なんだけどな。
クラスメイト達は、初めて来るダンジョンにかなり興奮しているようだった。
それはミリアリアも同じであった。
「ここならそんなに問題はなさそうね」
「ああ、この程度なら死者も出ないだろうが、少しは用心が必要だな」
「そうですね。何が起きるか分からないしね」
俺とアスナはダンジョン内で起きるであろう最悪の事態に対処できるように心構えを整えるのだった。
そして、ゼルドリスを先頭にしてダンジョンの中へと入って行くのだった。
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