第五十話 野外授業 1日目 1

 朝、俺達は学園の広場に集まっていた。


 ここには、一学年の生徒全員が書くクラスごとにチームに別れて集まっている。


 正面にはそれぞれのクラスの担任教師、それ以外の数人の教師と学園長がいる。


 そして、


「これより野外授業へ出発する。各クラス、担任の教師が指導役兼監督役として付いて行くことになる」


 時間になり一人の教師が話し始めた。


 俺達の指導役はゼルドリス達になる。


「それともう一つ、毎年この授業では負傷者や死者が出ている」


「っえ!!」


 生徒全員が驚いた。


「ただこれは早いか遅いかでしかない。君達は将来騎士団に入ることになる。そうなればこのような演習など日常茶飯事になる。死者が出る事も当然ある。だからこそこのような授業が必要なのだ。ただこれは授業である。そのために数名の教師が一緒に付いて行く。もしものことがあるときは教師陣が全力で君達を守るから安心してくれ」


 さっきの話を聞いて安心してくれと言われても、そう簡単にはいかない。


 生徒達からは不安な気持ちがあふれ出ている。


 それはそうだろな。あの時、一撃でやられたゼルドリス。そんな奴が自分達のことを守れるのかと思っているのだろう。


 それから、各クラスごとに出発。


 俺達は、王都南にある森へと向かうことになった。


 今回の予定は、一日目は森の中の探索と夜営、二日目にはダンジョンの内へと入り、一階の探索をする。魔物と出くわした際には戦闘をチームごとに行う。


 予定自体はかなり簡単ではあるが、殆どの者は戦闘未経験。そのため、指導役の教師の腕が試されるのだが、俺達に付いているのはゼルドリス達。まともな指示が出来るとは思えないが大丈夫なのかと少し心配になる。


「では出発するぞ!」


 俺達の前に立ち、歩き出したゼルドリス。最後尾にはラミア達がいる。他のクラスを見てみると、最前列を担任教師が行き、最後尾に他の教師がいる。


 最低でも二人体制でやるようだ。


 ただ、それだと俺達は一番のはずれを引いたことになる。


 そんな感じに俺達は王都南門より一時間ほどで着く森へとやって来た。


「さてそれではまず俺達が見本を見せる。その後はチームごとに戦ってくぞ!」


「は~い!」


 声を揃えて返事をするもやる気が感じられない。


 気持ちは分かるが、少しは緊張を感を持たないとマジで危ないぞ。


 森の中へと入って行く。


 獣道が続く中、俺の探索魔法に反応がある。


 魔物が二体、こちらへと向かってきている。ただまだ少し距離があるが、勇者メンバーは一切気づいていない様子。


「スレイブお兄様、この反応」


 俺の隣にいたミリアリアも魔物に気づいたようだ。


 それに、


「そんなに強くはなさそうだけど、でも流石に」


 アスナも気づいているようだ。


「分かっているよ。だけど先頭を行くゼルドリスは気づいていないようだし。他の生徒もそうだ。今はとりあえず知らないふりをしておこう。もしもの時は、こっそりと倒せばいい」


「分かったわ」


「かしこまりました」


 小声で話し合った。


 それから、二分ほどで目の前に狼型の魔物をが現れた。


「止まれ!」


 ゼルドリスの声を聞いて全員が止まる。


 辺りにただならぬ緊張が走る。


「あれが魔物なの」


「おい、嘘だろう。狼の形をしてやがる」


「っえ! 狼って魔物じゃなくても狂暴なのに、魔物になったらどれだけ狂暴なの?」


 皆初めて見る魔物に怯えている。


 ただ、オオカミ型の魔物はそれほど強くない。初心者冒険者用の魔物なのである。


 今回の依頼で一番多く倒すことになるであろう魔物。早めに慣れておかないといけないだろうな。


「まず俺達で相手をする。よく見ておけよ」


 それだけ言って、ゼルドリスとクリスが攻撃を仕掛けていく。


 残りの二人は生徒の護衛をしている。これは他のクラスに比べて人数がいるメリットともいえる。


 そんな感じに戦闘は進んでいき、ゼルドリスとクリスが一体ずつ仕留める。


 かかった時間は五分程。


「どうだ! こんな感じに戦ったらいいんだってのが分かったか」


 正直な所まったく参考にならなかった。力任せの攻撃。二人で戦うならクリスはゼルドリスのサポートに回らないといけないはずが、それをせずに、もう一体の魔物を倒すのに必死になっていた。


 これでは何のための指導役なのか、他のクラスメイトも同じことを考えているようであった。


「よし! まずは君達からだ!」


 ゼルドリスが一チームを指名した。


「次に魔物が現れたら俺が指示を出すからそれに従って」


「は、はい!」


 大きな声で返事をする。


 今度はゼルドリスに選ばれた生徒が先頭を歩くことになった。

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