第四十一話 学園寮

 学園長室での話を終えた俺達は、それぞれの寮へと来ていた。


 俺が到着すると、


「待っていたぞ!」


 ガタイの良い男が入り口に立っていた。


 半袖半ズボンの少年のような恰好。ただ、俺より身長が高く、顔は少し老けている。


 ただ、何というか、男子寮って感じの寮長だと思った。


「初めまして! スレイブ=アストレイです。本日からよろしくお願いいたします」


 頭を下げて一礼する。


「そんなにかしこまらなくていいぞ! 今日から一緒に生活するのだ! 無礼講で行こうじゃないか。ハハハハ!」


 なんというか陽気な人だ。


 だが、これなら楽しい寮生活になりそうだ。


 俺の部屋へと案内してくれた寮長。


 一階の入り口、入ってすぐの右側の部屋が俺の部屋であった。


 学園長の計らいで、一人部屋である。


「さあ! ここが今日からスレイブ君の部屋だ。それと学園長から今日の夜の件は聞いているから安心してくれ」


「そうですか」


「うむ。ではゆっくりしてくれよ。それと、もし何か分からないことがあったら何でも聞いてくれよ! じゃあな。ハハハハ!」


 部屋から出て行く。


「やっと休める」


 ベットに腰を下ろす。


 部屋は一人部屋だと思えないくらい広い。


「まさかここ、もともとは二人部屋じゃないのか」


 などと思う。


「とりあえず今日の夜の件だな。ミリアリア達とは夕食を食べた後に、学園の入り口の所に集合と言う話になったが、さてそれまでどうするか? 時間は十七時、夕食まではまだ一時間程あるしな~」


 やることがなくて頭を捻る。


 俺は、やることもないので今日一日の出来事を振り返ることにした。


 いろいろあった一日、初めて城を訪れたとき以来の忙しい日だったと思う。


 でも本番はこれからになる。


 などと考えているうちに寝てしまったのだろう。目を覚ますと、寮長が俺を呼ぶために、部屋の扉を叩いていた。


「スレイブ君! スレイブ君、夕食の時間だよ」


 なかなか大きい声。このまま叫び続けられても迷惑だと思い、急ぎ扉を開ける。


「ス! やあ」


 凄い笑顔だ。


「呼びに来ていただいてありがとうございます」


「いやいいんだ! そんなことよりも食堂へ案内しよう」


「助かります」


 俺は寮長に案内されて食堂へとやって来た。


 そこには、同じクラスの者や、それ以外のクラスの者、それに制服の色が違う者など様々であった。


 色の違う制服を着ているのは先輩だろうな。


 それに、制服をよく見ると右腕にある紋章が違うことに気づいた。


「寮長、制服の色が違うのは何となく分かるのですが、右腕についている紋章が違うのはどういう意味があるのですか?」


 教室にいたときは皆同じ紋章をつけていたから、学園の紋章か何かかと思っていた。


「そのことか、あれはクラスを現している。君のその星の紋章は最高クラスであることを表しているんだ」


 そうだったのか。


 それ以外の紋章の事も寮長に教えてもらった。星以外に四角に三角、丸と紋章なしがある。それぞれ四角が星の一つ下で、三角がその下と言った感じにランク付けされている。そして、最後の紋章なしは別名無能印と呼ばれている。他のクラスの者からしたら何故この学園に通えているか不思議なくらいなのだとか。無能印の者達は、広い食堂の中でも端に集まりひっそりと食べている。


 その空間だけ、闇でもかかったかのようになっている。


 寮長と別れた俺は、夕食を食べて部屋へと戻った。


 言うまでもないが、一人で食べた。まだ初日で仲のいい奴もいないので仕方がない。


 それに、依頼をこなすのに友達がいたら何かとやりにくい。このまま一人でいるのも有りなのかもしれないと思った。


 そして、ミリアリア達との約束の時間となる。





 一方その頃、ゼルドリスはというと。


「何故俺がこんなところに」


 ゼルドリス達、元勇者パーティーメンバーは、副学園長に呼ばれてここまで来た。だが、住む場所を用意していなかったらしく、空き部屋のある学生寮で生活することに。だがもともとゼルドリスの件は、副学園長の独断でのこと、宿代まで出す余裕はなかったようだ。


「それにあいつもここにいるのか!」


 ゼルドリスは食堂に来ている。ただ、目の前に寮長と話しているスレイブの姿がある。


 凄く気まずい。


「俺は今何を考えた。あんな雑魚のことを恐れているのか! この俺が、勇者である俺がだと。ありえん、あってはならない」


 小声でそんなことを呟きながらスレイブが食堂へと入っていったのを見て、こっそりとゼルドリスも食堂へと入って行くのだった。

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