第四十二話 調査 1
夜。
俺は約束の場所へとやって来た。
「二人は……まだ、みたいだな」
俺は、学園の門の所でキョロキョロと辺りを見渡す。
時間までは後もう少しある。
「だが、少し気味が悪いな」
学園長室での話では誰もいない部屋から音がするらしい。
正直こういうのには慣れていない。
「ごめん! お待たせ!」
二人がやって来た。
「待っていないよ。俺も今さっき来たところだから」
「そ、それなら良かったです。寮ではクラスメイト達に囲まれて大変でしたよ」
「っえ!!」
俺は驚いた。
寮の中では一人。食事中も俺の方を見ている者達はいたが、声を掛けてくる者はいなかった。
「本当にね。約束があるって言っているのに、本当に迷惑」
「でも編入初日だし、皆私達のことに興味があるのよ」
寮でのことを楽しそうに話す二人。
それとは逆に、少し悲しくなる俺。
「スレイブどうしたの?」
「いや、何でもないよ」
少し落ち込む俺に声をかけてくれるアスナ。だが、今はその優しさが辛いよ。
「もしかして……」
「なんだよ」
「ボッチだったとか? なんてね。スレイブの事だし、皆から引っ張りだこだったんでしょっ、て、あれ? まさか本当にボッチだったの?」
人の心の傷をえぐってくる。アスナは基本いい奴だ。いい奴なのだ。天然と言うのか、たまに無神経なことを言ってくることがある。
無意識で言っていることを分かっているから何も言えない。
「そうだよ。悪いか!」
「勇者様、本日の朝の事もございます。皆様少し話しにくいのでしょう。それも日が経てばきっと、解決しますよ。だから、そんなに落ち込まないでくださいね」
あ~、優しいな。ミリアリア本当に優しいな。
俺はミリアリアの一言に癒されていた。
すると、アスナがもの凄く睨んできていた。
「何よ! 二人だけの世界作っちゃって! どうせ私は無神経な人間ですよ!」
っあ! 怒らせてしまった。
「別にアスナのことを攻めているわけじゃないんだ。それにアスナだって俺に悪口を言いたくて言ったわけじゃないだろ。だからそんなことで怒るなよ。俺にとっては二人とも大切な仲間なんだからな」
「ありがと」
アスナが素直に答えてくれた。
「そうですね。勇者様の言う通りです」
「さてそろそろ行くかな」
『は~い』
俺たちは学園の中に入ることに。
門にいる警備員さんに学園長より貰った許可書を見せると、あっさりと通してもらえた。その時、警備員さんから校舎カギを受け取った。
ただそこで、
「気を付けてください。ここ数週間、夜の学園ではろくなことがありませんから」
「分かりました」
それだけ答えて中へと入る。
まずは、本校舎の調査。殆どの目撃情報はこの校舎である。
「は、入るぞ」
「は、はい!」
俺とアスナの声は震えている。
「二人とも何をしているのですか? 早くいきますよ」
そんな俺達と違って、元気なミリアリア。
「ミリアリアは、こういうの苦手じゃないのか?」
「何がですか?」
「え?」
「そんなことよりも勇者様、何をしているのですか! 早くいきますよ」
元気すぎる。まさかミリアリアはこういうの得意なのか?
などと少し疑問に思いながら、ミリアリアを先頭にして、先へと進んでいく。
まずは俺達のクラスのある一階からである。
一階には、俺達一学年のクラス以外に、教師がいる職員室、学園長室、それに副学園長室がある。
「どこから見て回りますか?」
「そ、そうだな~、まずは自分達のクラスからでいいんじゃないか? 特にこれといって特定の場所があるわけではないし。この校舎全体を見て回らないといけないんだから」
「そうね」
「分かりました」
と、いうことでまずは一回一番奥にある教室から見て回ることになった。
その間、俺の心臓はバクバクであった。
夜の校舎。今ある明かりはミリアリアの持つローソクのみ。本来暗い場所の探索をする場合は、光系の魔法を使うのだが、今回の調査は不可思議現象の調査。もし光系の魔法を使うと起きないことなら調査にもならない。そのため、ローソクの炎で辺りを照らしている。
ただそれがより一層不気味な雰囲気をかもち出している。
「ねえねえ、スレイブ」
俺の袖を引っ張るアスナ。
「どうしたんだ?」
「そんなに早くいかないでよ」
「俺に言うなよ。俺はミリアリアの後をついていっているだけなんだから」
「でも~」
「どうしたのですか?」
「アスナがもう少しゆっくり歩いてくれだってさ」
「分かりました」
俺達の移動速度は少し落ちた。
そして、校舎に入って三十分程で教室へと到着した。
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