第二十八話 決着

 俺とアルドの戦闘は俺の勝利で終わった。


 最後の一撃、お互いに相手の急所、一撃で倒せる部位を狙って仕掛けていた。


 そして、俺は悪魔族の首を取った。その場に崩れ落ちるアルド。


「お、終わった~」


 集中力を高めるのは疲れる。相手が弱かったからよかったが、もう少し強いと、今の俺ではかなり厳しかったかもしれない。


 そして、


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 聖域がレベル3へとアップしました


 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


 レベルが上がった。


 レベルが一から二へと上がった時に比べて、かなり早かった。


 それと同時に、俺は自分の体が軽くなったのを感じた。それに、体の中心からあふれ出すこの力、魔力が増えている。


 二人から聞いた聖域のレベル三の効果と同じ。


 それに使える魔法も増えている。これは感覚で分かる。これは水と雷、それに身体強化に付与魔法も使える。


 レベルが一つ上がっただけで、ここまで能力値が上がるとは思わなかった。


 俺は改めて、この世界唯一のスキルである聖域の凄さを感じた。


 そんな中、もう一つの戦闘が終了した。


「勇者様! 私、勝ちました」


 ものすごい笑顔で俺の元へと駆け寄ってきたミリアリア。


 それと、


「そっちも無事みたいね」


 少し顔を赤くしながら俺の元へとやってきたアスナ。


「ああ、二人も無事でよかった」


「あの時は、ありがとうございました」


「別にいいって、それに、もしもの手段を使わなくて済んで助かったよ」


「もしもの手段って何ですか?」


「いや……それは」


 俺は顔を真っ赤にしながらあたふたしていた。


 流石にいざとなったら、口づけでもして止めてやろうと、思っていたなんて言えないだろう。


「その話は、もういいだろう。そんなことよりも、今回の戦闘で俺の聖域のレベルが三に上がったんだ」


「おめでとうございます」


「よかったわね」


「ああ、さて後始末をして村へと帰るか」


『はい!』


 二人、声を揃えて返事をする。


 それから俺達は悪魔族の死体を、異空間収納にしまった後、アジトを後にしたのだった。






 俺達が村へと戻ってくると、


「スレイブ様、ご無事で」


 村長が出迎えてくれた。


「ああ、それよりも村長、お話があります」


「分かりました」


 村長は俺達を家へと案内する。


「それで勇者様お話とは?」


 村長の家の客間。


 今いるのは俺達勇者パーティーの三人と村長のみ。


「村人達を攫っていた連中は全員始末しました。今後同じようなことはおきないだろう」


「それでは」


「これで全ての依頼は終了です」


「良かった。ありがとう、ありがとうございます。やっと安心して生活できます」


 涙を流す村長。


「それは良かった。それともう一つだけお伝えすることが有ります。今回の一件全てに、悪魔族が関わっておりました」


「悪魔族とは先日、捕らえた男と同じ、ですか?」


「ええそうです」


「先に帰ってきました村人達が、洞穴にこの世の者とは思えない程強い者がいたと言っておりました。それが」


「そうです。それが悪魔族だったのです」


 それから、洞穴でのことを全て伝えた後、今日の話はここまでとなった。


 俺達は、泊めてもらっている家へと移動。明日の朝、王都に戻ることになっているため、今日は少しでも早く寝ることに。


 すでに外は夜。


 そして今は、パーティー三人のみでいる。


「つ、疲れました~」


 部屋に引かれている布団に倒れこむミリアリア。


「姫様としてそのかっこはどうかと思いますよ」


「勇者様、私のことは名前で呼んでって言ったではありませんか! 何故今、姫様とよそよそしく呼ぶのですか! それに今は勇者様とアスナしかいません。そのような時くらい自由にさせてください」


「少しからかってみただけですよ」


 少し頬を膨らましてそっぽを向くミリアリア。


「私も疲れたわ」


「アスナもお疲れ。でも、ガイル達の依頼に付いて行ったりで、これくらいの依頼には慣れていると思っていたけど」


「慣れてはいるけど、あの時は後方で支援しかしていなかったから、本気を出すなんてことなかったしね。それに戦ってきた相手が比べものにならないくらい強かったし」


「それもそうか。俺も今日はへとへとだ」


 俺もミリアリアと同じように布団に倒れこむ。


 疲れているからか、布団が凄く気持ちいい。このまま寝てしまいそうになる。


「勇者様! 私にあんなことを言っておいてなんですかその格好は!」


「いいじゃないか、今日はもう疲れたよ」


 へとへとでもう体が動かない。


「仕方がないですね~」


 俺とミリアリアはそのまま意識を失ってしまったのである。


 そして翌日、鳥の鳴き声で目を覚ました。


「う、う~」


 俺は目を覚ましてすぐ「はっ!」となった。


 結局あのまま朝まで寝てしまったのだ。


「二人とも起きろ!」


 俺だけでなく隣で横になっていたミリアリア、それにアスナまでも寝てしまっていた。


 皆疲れていたため仕方がないのだが、今日、王都に帰ると言うのに何の準備も出来ていない。


「なんですか一体?」


「なによ~」


 目をこすりながら起きる二人。


「もう朝だ! 帰る日だぞ」


『え! え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!』


 驚きすぎて大声をあげる。


「なんで、なんでよ」


 あたふたしているアスナ。


「早く準備をしないといけませんね」


 いつも通り冷静なミリアリア。


 それからあたふたと帰る準備を済ませた俺達は、お世話になった家の主人に礼を言った後、村長の家へと向かった。


 村長の家の前に馬車が用意されている。


「皆様、おはようございます」


『おはようございます』


 三人そろって挨拶を返す。


「短い期間でしたがありがとうございました」


 深々と頭をさげる村長。


「村長、頭を上げてください。俺達は依頼を受けてきました。その依頼を完遂しただけです。それに、村長が一冒険者に対してそんな風にしていたら他の村人に示しがつきませんよ」」


「ですが」


「いいんですよ」


「わ、分かりました。ですがこれだけは言わせてください。この度は、本当にありがとうございました」


 村長からの最後の言葉を聞いた俺達は、馬車に乗り込んで王都へと出発するのだった。

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