第二十七話 決戦 4
俺が新たに発動した魔法、それは凄く簡単で誰でも使える物である。ただそれはまだ俺しか使えない。
それは何故かと言うと、俺が初めて見つけた魔法であるからだ。
ミリアリアにこのことを話した時、少し驚かれた。
「この程度は、ピンチでも何でもない」
俺は新魔法を発動する。
「強がりを、これで終わりだ!」
グレコスは、雷属性の魔法を放ってくる。
俺はその魔法に合わせて、
「魔力弾!」
魔力の弾を魔法に合わせて放ち、打ち消した。
「!! 何をした!」
「魔法に魔力をぶつけただけだ!」
魔人族の使うアンチマジックは魔法を封じる魔法。魔法を封じる事の出来るのはこの魔法のみでそれ以外にはない。だが俺は今、グレコスの魔法を消して見せた。
悪魔族しか使えない魔法を人間が使った。グレコスは今そのことに驚いているわけだ。
だが俺のやったことは、原理その物が違う。俺は魔力弾を適切なタイミングでぶつけたのみ。これが少しでもずれていたら打ち消すことは出来ずに負けていただろう。
「問題ない。俺が潰す」
アルドが斧を振り下ろしてくる。
それを剣で受け止めるが、
「お、重い」
かなりの重さ。素の力に振り下ろされたときの速度、それに斧が一本ではなく二本であることもその要因であった。
なんとか防いでいるが、それも時間の問題。
「バカ力が!」
「っふん、誉め言葉として受け取っておこう」
バカにしたつもりなんだがな。
そんなことよりもだ、そろそろ抜け出さないとな。
「フレイムランス!」
「効かぬ」
俺が目を狙って放った魔法は一本の斧で防がれた。
「同じ手が我らに効くとでも思ったか」
「いや」
アルドが斧を下げた瞬間に別の魔法が当たる。それにより斧が俺から離れる。
そしてアルドの動きが止まった。
「やらせぬ」
俺がアルドに攻撃を仕掛けようとした瞬間、グレコスが魔法で攻撃してくる。
だがその魔法に対して魔力弾で対応して対処する。
「勇者様! グレコスは私に任せてもらえませんか?」
復活したミリアリアは、自分が戦うと言ってきた。
「大丈夫なのか?」
「はい! 任せてください。グレコスはこの手で倒して見せます」
「分かった。なら俺はアルドの相手だな。さっさと倒して加勢しないとな」
「私の方が早く倒して勇者様の加勢に回ります」
「ならどっちが先に倒すか勝負だな!」
「そのようですね」
俺とミリアリアは、同時に攻撃を仕掛けていく。
「人間が、何をバカなことを言っているんだ。お前ら如き、片手で一捻りだ」
俺とミリアリアはそれぞれグレコスとアルドへ挑んでいく。
それを迎え撃つ悪魔族の二人。
俺はアルドに接近戦を挑んでいく。
それを斧で迎え撃つアルド。
「我に接近戦を挑むとは、身の程しらずめ」
「それはどうかな。今は俺とお前の一対一だぜ。そんな簡単にはいかないぜ」
俺の持つ剣と、アルドの持つ斧がぶつかり合う。
一回、二回、どちらも引かない攻防。
まだ魔法や魔力をお互いに使っていない。
「スレイブ! 私も力を貸すわ」
「俺にかまうな! 代わりにミリアリアの援護を頼む」
「分かった」
俺はまた目の前にいるアルドへ意識を戻す。
それからも何度も何度もぶつかり合う。
お互いに一歩も引かない攻防が続く。
「俺と互角にやり合うとは驚いたぞ」
「それはこっちのセリフだ! それに互角じゃないぜ」
何回目になるかわからないが、剣と斧がぶつかり合った時、
バキ!
アルドの持つ斧にひびが入る。
「何!」
「狙い通りだ!」
そして、次に剣と斧がぶつかり合うと斧が砕ける。
「どういうことだ!」
斧にひびが入った時もかなり驚いていたが、今回はそれ以上に驚いている。
「人間の力で俺の武器が壊れるなんて」
俺は、アルドの持っている斧の一点のみに剣を当てていた。それが何回、何十回と続けばどんな丈夫な物であろうとひびくらい入る。そして、ひびの入ったところに剣を思いっきり当てれば砕くことくらいは出来る。最後の一撃だけは当たる瞬間に少量の魔力を流して破壊した。
「もろい武器を持っているな。俺の剣には刃こぼれすらないぜ」
「っく! よくもやってくれたな。だが俺の武器がそれだけだと思うな」
新たな斧を取り出してくる。
最初の斧を投げてきたことからも、かなりの量の斧を持っていることは想像がつく。このままではただの消耗戦にしかならない。
「そろそろ本気を出して行こうか」
アルドが肩を回しながらそんなことを言ってくる。
「俺もそうさせてもらおう」
集中力を高める。
この勝負は一瞬で決まる。これは俺だけでなく、アルドも分かっているだろう。
だからこそお互いにかなり集中している。
ただ俺はそんな中で少し不思議な感覚を味わっている。
かなり集中している。本来であれば、目の前にいるアルドしか見えていないはずが、逆に周りの様子が手に取るようにわかる。
隣で戦っているミリアリアの事。戦闘はもうすぐ終わる。グレコスを圧倒しているところからかもなり余裕そうだ。
それに、アスナも、ミリアリアのサポートをしっかりしている。あの二人に関しては一切問題ないだろう。
俺は、目の前にいるアルドへ意識を向ける。全身に回っている魔力が研ぎ澄まされていく。その全てが足へと集まる。
一瞬の静寂、お互いに何か合図をするでもなく動きだした。
そして、決着がついたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます