第二十五話 決戦 2
私はどうしたのだろうか?
心の中はいつものように冷静で周りの状況も理解できている。なのに頭で考えられない。体が先に動く。言うことを聞いてくれない。
いつからこうなったのかは分かっている。そう、あの時、悪魔族から言われた一言が原因なのです。
私に呪いをかけた犯人が目の前にいる。
父上に心配をかけ、自分の夢を潰されるかもしれないと、ここで死んでしまうのかと、毎日のようにうなされていたあの時のことを思い出す。
憎らしい相手。今この手で殺せる。そう考えたとたん、こうなってしまったのです。
「絶対! 絶対に殺してやる」
考えてもいない言葉が口から出る。
私の体が勝手に攻撃を仕掛けていく。正面からの攻撃、こんな物が当たるわけもない。
型がない適当な攻撃。
「この程度か、神速の姫君というのは」
簡単に剣をはじかれる。
「なめるなーーーーーーーーーーーーー!」
私は全身の魔力を剣に乗せて攻撃を仕掛ける。
だが、
「アンチマジック」
悪魔族得意の魔法封じの魔法。
これを使われると発動した魔法が無力化されてしまう。それに魔力すらも一瞬消すことが出来る。そのため、剣に集めた魔力が、消されてしまった。
ただしこの魔法には一つ弱点がある。それは、自身より実力が上の者の魔法は、封じられないということ。
だが、今の私ではまだ実力が足りない。
「この程度の相手であれば呪いなど使う必要もなかった」
悔しい。
目から涙がこぼれ始めた。
そして、
「終わりだ。最後の情けだ苦しませずに一撃で終わらせてやろう」
悪魔族の持つ剣が私に当たろうとしたその時、
キーン!
「一人で頑張りすぎだ。お前はひとりじゃない。今は俺達がいるだろう」
目の前に私の大好きな人がいた。
悪魔族の剣を受け止めている。
「は、はい」
嬉さのあまり涙を抑えられなかった。
少し前、アスナに強化魔法を掛けてもらい、突っ込みながら悪魔族とミリアリアの戦闘をどう止めようかと考えていた。
今のミリアリアは、いつものように冷静な判断が出来ない状況。
そのため、ただ声を掛けただけじゃ聞いてもらえないかも知れない。
「正直この手段はあまり使いたくないが、もしもの時はやるしかないか」
独り言をつぶやく。
別の意味で覚悟を決める俺。
そんなとき、目の前のミリアリアにピンチが。
「急がないとな」
俺は、急ぎ悪魔族とミリアリアの間に割って入る。
「一人で頑張りすぎだ。お前はひとりじゃない。今は俺達がいるだろう」
俺の言葉を聞いたミリアリアの目から涙が流れた。
そして、
「は、はい」
小さな声だったが確かに返事が返ってきた。
「弱い人間が邪魔をするな」
「悪いな。俺の仲間をやらせるわけにはいかないんだ」
「お前が入ったくらいで何も変わらん。ただ命を短くするだけだ」
「それはどうかな? それにお前は俺の仲間を一度どころか、二度も殺そうとした」
「それがどうかしたか? 人間が俺達、悪魔族に殺されるのは道理であろう。この世界は弱肉強食、弱い人間が強い悪魔族に殺されるのは普通じゃないか」
「ほ~お、その原理なら俺がお前を殺してもいいってことだな」
「やってみればいいさ」
「ああ、そうさせた貰う」
再び剣を構えて戦闘態勢を取る。
そして、
「そこでおとなしく待っていてくれ。すぐに終わらせるから」
背後にいるミリアリアに声を掛けた後、戦闘開始となった。
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