第二十四話 決戦 1
俺達が今向かっている先からものすごい魔力を感じる。
つい一週間程前の俺であれば、逃げ出していた。それほどの魔力を感じる。
後ろにいる二人もそれを感じ、少し顔色が悪い。
「近くに来るとより凄いわね」
「ああ、これまで戦ってきた中で一番強い相手だな」
「そうですね。私の中でも一番の相手です」
少し恐怖を感じている。
それでも、
「やるしかない。そうしないと村がまた襲われるからな」
「そうね。それに私達も強いですもの」
「そうよ。負けるわけないわ」
この調子を維持できれば負けない。
そして俺達は最後の部屋へと到着した。それと同時に最後の二人の悪魔族と目が合う。
その瞬間、背筋が凍るような悪寒を感じ、
「後ろに下がれ!」
大声で叫び後ろへと下がる。
すると、先ほどまで俺達がいた場所に大きな斧が飛んできていた。
「外したか」
太く大きな声が聞こえてきた。
「少しなまったのではないか」
「そうかもしれんな」
「ちょうどいいではないか、目の前には丁度いい的がある。あれで練習をすればいい」
「そうだな」
その言葉の後、すぐに俺達目掛けて斧が飛んでくる。しかも一回ではない。連続で二本も飛んできた。
狙いは正確で、避けなければ確実に当たっている。
「また外した」
少し残念そうな声が聞こえてくるが、最初の攻撃よりも正確になっている上に、今度は回避先まで読んで仕掛けてきている。
「危なかった!」
「そうですね。まさかここまで正確な攻撃を仕掛けてくるとは思いませんでした」
「強いわね」
本当に。相手はまだ一歩も動いていない。そして魔力すら使っていないにも関わらず、既に追い込まれかけている。
「スレイブどうするの? 今のままじゃ、ジリ貧よ」
「分かっている。だが、」
先ほどから休む暇なく斧が投げつけられている。今は斧を躱すだけで精一杯。
だがこのままでは、らちが明かない。
「俺の合図で仕掛ける。ミリアリアはいつも通り全力で突っ込んでくれ。俺はそれに続いて魔法を使って仕掛けていく」
「分かりました」
「私は何をしたらいいの?」
「サポートを頼む。それと隙があれば攻めてもいいが、危険な真似だけはするな」
「分かったわ」
打ち合わせが終わったところでまた、斧が飛んでくる。
その攻撃を躱した後、すぐ、
「ミリアリアいけ!」
ミリアリアにのみ聞こえる声で指示を出す。
「了解!」
返事をすると同時に、悪魔族へと向かって行く。
俺はそれに合わせて魔法を発動。今回使うのは、火の中級魔法、ファイアーランスである。
複数個発動させて周りに展開、ミリアリアから二秒ほど遅れて俺も接近戦を仕掛けていく。その際に、足元に風魔法の俊足を発動させて突撃速度を上げる。
その際に、アスナより強化魔法を掛けてもらう。
俺の狙いは一つ、意表を突いた攻撃で倒すこと。
だがその狙いは一瞬で潰された。
「この程度か」
俺の耳に届いた悪魔族の言葉。
俺よりも先に仕掛けていたミリアリアの攻撃が片手で防がれている。
「少しがっかりだ。それに、」
俺はその後の言葉を聞かず、展開していたファイアーランスを悪魔族の顔目がけて放つ。
魔法は悪魔族に当たるもダメージはそれほどない。
だが、一瞬だけミリアリアから意識を外すことには成功。その隙にミリアリアは悪魔族から距離を取った。
「まさか生きているとはな、驚いたぞ!」
もう一人の悪魔族がミリアリアを見てそんなことを呟いた。
そしてその言葉に反応したのは俺でなく、
「どういうことよ!」
ミリアリアであった。
「興味があるのか」
「あるわ! この手で殺してやりたいくらいにね」
「ほお~、それをやったのが俺だと言ったらどうだ」
悪魔族の言葉が終わると同時に、ミリアリアが攻撃を仕掛けていた。だが、その攻撃は、いとも簡単に防がれてしまう。
「少し落ち着けよ。神速の姫君様、それと後ろにいるのは勇者と言ったところか」
俺の正体までバレている。
「まあこれは悪魔族の中で一部しか知らない情報だから他の者達が正体に気づかないのもしょうがないが、まさか人間如きにいとも簡単に殺されるとは、悪魔族の恥だな。しかもこんな雑魚にな」
「そうだな。まさかこの程度の相手を俺達、悪魔族が恐れているとは拍子抜けだ。だがそれも今日までか。ここでこいつらを殺せば全てが終わる。いや始まると言うべきか。なぜならこの世界が俺達の物になるのだからな」
急に笑い始めた。
「まだ勝負はついていない。私がお前ら二人を殺して計画を潰してやるわ」
普段のミリアリアでは考えられないくらい怒りを表に現している。
「やってみろ」
一人、二人の悪魔族に攻撃を仕掛けていくミリアリア。
いつも冷静な彼女からでは、考えられない程に頭に血が上っているようだ。
「ミリアリア! 少し冷静になれ!」
「私はいたって冷静です! 勇者様はそこで見ていてください」
これはダメだ。
そう思った俺は、
「アスナ! 全力で俺に強化魔法を掛けてくれ」
「分かったわ。でもどうするの?」
「止める。このままではミリアリアが死ぬかもしれない」
「そんなにやばいの?」
「ああ、いつものミリアリアなら互角には戦えると思う。でも今の彼女では無理だ。頭に血が上り過ぎている」
「分かったわ」
アスナに全力で強化魔法を掛けてもらった後、ミリアリアが戦闘をしている元へと突っ込んでいった。
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