第二十二話 聖域のスキル
先へと進む道中、
「アスナ、少しいいか?」
「何?」
「さっきどうやって悪魔族の男を倒したんだ? 確かに戦えることは村で見せてもらったけどあそこまで戦えるとは思わなかったぞ」
「私もびっくりしました。アスナ様の噂は耳にしたことがあります。ですが、それは全て聖女様としての物です。戦闘に関しては、全くでしたので」
俺も聖女以外の噂など聞いたことがない。一緒に依頼に行った時も後衛で回復役に徹していたため、ここまでの戦闘が出来るとは思わなかった。それに戦闘が出来るとは言ってもまさか悪魔族を一撃で倒せるほどとは本当に驚いた。
「それはそうだよ。この三年間、一切使ってこなかったからね。それに私の戦闘系のスキルは補助的な物で、二人の持っているスキルとは比べものにならないしね」
「ですがそれだけで、あのような戦闘を出来るとはびっくりです」
「私は女神様から低ランクの戦闘用スキルを複数個授かっているの。まあ、護身用というか、勇者パーティーに所属する以上は最低限、自分の身は自分で守れるようになんだって。それに、治癒のスキルを授かってから毎日のように夢の中で女神様から戦い方を教えられていたのよ。しかも四年間、毎日ね。そのせいで自然とあれくらいの戦闘なら出来るようになったのよ。初めてのときは私自身もびっくりしたけどね」
少し、ぐったりしたように話すアスナ。
「あの戦闘のとき、アスナから少し変な魔力の動きを感じたんだが」
「正しいかも。あの時、付与魔法を複数個、拳に付与した後、腕にのみ身体強化して、全身に回っている魔力を全て拳に集めて放った一撃だったからね」
今、とんでもない言葉が聞こえてきた気がした。
「もしかして村で戦っていた時も同じことをしていたのか?」
「そうだよ。あの時は足に移動系の付与魔法と強化を付け加えて一瞬で移動した後、剣に切れ味アップを付与して、身体強化をして倒したかな」
「凄いわ。私には絶対できない」
俺にも無理と言うか、技術だけならこのパーティーで一番じゃないか。
「結構苦労したからね。でも単純な力比べでは二人に絶対勝てないわ。技術以外の点でもミリアリアには既に勝てそうにないけど。まだスレイブにはギリギリ勝てるかもね」
俺もそう思う。
「でも、それも時間の問題かな」
「そうですね。私も勇者様に勝てるとしたら今の内だけでしょう」
「???」
二人は一体何を言っているんだと頭を捻る。
「勇者様の聖域のスキルが次のレベルへ上がれば私達ではどうやっても勝てませんから」
「え!」
「今の勇者様は簡単な戦闘スキルを手に入れただけです。それは体を慣らすためでもあります。ですが、その次、レベル三になると身体能力が大幅に向上します。その上で身体強化の魔法や付与魔法、それに魔力量が今の二倍以上になると聞いております」
ミリアリアから嘘とも思える程の話を聞いてしまった。
「私も女神様から同じ話を聞きました」
「一つ、質問いいか?」
「何ですか?」
「聖域のスキルってどこまでレベル上がるんだ?」
「五だと聞いています。そこまで上がるとこの世界にある全てのスキルを習得するらしいですよ」
人間じゃ無くなるのか俺?
その話を聞いた後、俺は何も話せなかった。とんでもない話を聞かされたこともあり、頭の中が混乱していたのだ。
「まあそうなるよりも先に残り二人の仲間を見つけないといけませんし。今はまず目の前の敵を倒さないとですね」
「そうだな」
目の前に新たな悪魔族が二体、姿を見せるのだった。
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