第二十一話 アスナの力
戦闘の終了後、
「ミリアリア、お疲れ様!」
「ありがとう、アスナ」
「噂には聞いていたけど本当に強いんだね。私、ビックリしちゃった」
「そんなことはないよ。勇者様もあれくらいなら簡単に出来ますよ」
確かに今回のミリアリアの戦闘は、最初の三体の悪魔族を倒した時以外、一切本気を出していなかった。しかも、あの模擬戦で俺と戦った時より力を抑えていたのではないかと思う。
そんな力で悪魔族を圧倒して倒してしまった。
「まあできなくはないが、今のミリアリアのようにはできないな」
これは俺の本音である。現状の聖域、レベル二ではどうしようもない。もう少し力が付けば可能かもしれないが。
「ふ~ん。そろそろ私の力も見せないとかな。二人の力は見せてもらったわけだしね」
「う~ん、アスナの力なら村での戦闘の際に見せてもらったと思うが」
「スレイブ! あれを私の本気だと思わないでね」
「だが、お前は悪魔族に捕まってここに連れてこられたんだろう。流石に一人で戦うのは危険じゃないか!?」
「スレイブ、私が捕まったのはわざとよ。捕まればこいつらのアジトを見つけるのも簡単だと思ったのよ」
おいおい、俺はかなり心配したんだぞ。もしものことがあったらって考えていたのにその心配を返せって言いたくなる。
「それならいいが、それでもアスナ一人で、戦わせるのはかなり危険じゃないか」
「任せなさい! この程度の相手なら私でも余裕よ。流石にミリアリアのようには戦えないけど、これでも勇者パーティーの一員なんだから、任せておきなさい!」
「分かったよ」
もしも何かあった時には、助けに入ればいいかと思い承諾した。
「では行きましょう」
ミリアリアの言葉で先へと進むことに。
次の戦闘でアスナが一人で戦うため先頭を歩いてもらっている。
「次の分かれ道を右に行けば悪魔族が一人いる。さっきの奴よりは強いぞ」
「オッケー!」
それだけ返ってきた。
そして、
「に、人間だ! なんでこんなところにいるんだ。入り口には監視役の二人がいるし、ここまで来る途中には力バカのレイがいたはずだが」
ほお~、さっきの悪魔族の男はレイと言うのか、覚えとこ。
「それに低ランクとは言え、手下が三人もいたんだ人間如きが生きていられるはずがない」
「私が倒したわよ」
ミリアリアが前に出る。
「お前が! ふざけているのか。そんなヒョロヒョロの体で勝てるはずがないだろう」
まあ、知らない者からしたらそう思っても仕方がない。
「そう、そう思うなら好きにしたらいいわ。ただ、人間をなめていたら痛い目に合うわよ、ってもうあっているのかしらね」
「俺達が人間をなめるだと、そらそうだろう。人間は俺達の足元にも及ばない存在だ。そんな奴らに本気を出すだけ無駄だろう。ただの遊びなんだよ」
「そうなの。あの男、レイだったかしら。最初から本気を出していればもう少しまともな戦いが出来たかもしれないのにね」
それだけ言って俺の元へと戻ってくる。
「逃げるのか」
「いえ、あなたの相手をするのはそこにいる彼女よ」
ミリアリアから視線を外し、アスナを見る。
そして、
「このガキが俺の相手だと! 笑わせてくれる」
「イラ」
「俺をバカにしているのか。お前よりさらにガキが相手になるわけないだろう。まだお前の隣にいるガキの方がましだ」
「イライラ」
なんだろうか。目の前にいるアスナからものすごい魔力を感じる。今までに感じたことのない魔力量。
「ミリアリアこれって?」
「アスナです。凄い魔力の持ち主だと思っていましたが、ここまでとは、流石は女神様に選ばれた聖女様です。勇者様を除けばこの世界でトップの魔力量の持ち主でしょう。しかもその力を完全に制御しきっています。かなりの物ですね」
ミリアリアがここまでアスナのことを褒めるとは思わなかったが、仲間として認めているってことなんだろう。
それと、アスナは自分をないがしろにされたことをかなり怒っている。
「そこの化け物! 私を無視するな!」
「何か言ったかガキ」
「ええ言いましたよ。あなたのことを化け物だとね」
一瞬冷静になったように見えたが違う。笑いながらかなり怒っている。
「嬢ちゃん。悪いことは言わね~、今なら見逃してやるから帰りな。俺は後ろの二人に用があるからな」
「???」
一瞬頭を捻った後、アスナの右こぶしが悪魔族の腹に突き刺さった。
「私をバカにするのもいい加減にしてくれませんか。いくら仏のアスナと呼ばれる私でも限界がありますからね」
切れている。しかもかなりだ。
それに、聞いたことのない言葉が聞こえてきた。
仏がなんとかと言っていたように聞こえてきた。だが、同じパーティーを組んでいた三年間で一度も聞いたことないぞ。
それにまさか一撃で悪魔族を倒すとは思わなかった。
先ほど放った一撃。それにより気を失ってしまった悪魔族。
「ふ~、すっきりした。スレイブ! こいつどうするの? なんか気を失っているみたいだけど」
「せっかく生かして捕らえることが出来たんだ。俺の異空間収納に入れて王都まで連れて帰ろう」
「分かった」
俺は悪魔族に近づき収納する。
それと、
「アスナだけは絶対に怒らせてはいけないな」
収納しながら小声でそんなことをつぶやくと、
「スレイブ~、今何かいった」
笑顔でそんなことを言ってきた。
その時、俺はぞっとした寒気を感じてしまった。
「何も、何も言っていないさ。それよりも先に進もう」
俺は慌てて悪魔族を収納した後、戦闘を切って先へと進んでいく。
「ちょっと待ってよ」
「お待ちください勇者様」
二人が慌てて付いてくるのだった。
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