第十八話 悪魔族のアジト
第十八話 悪魔族のアジト
今回の事件について考えていたことをミリアリアに話すことにした。
この事件に悪魔族がかかわっている可能性が高いこと。それにただ村人を攫っているわけではないことなどを話すと、
「私も勇者様の考えは正しいと思います。まだ確証があるわけではないのですが、先日の男の件もあります。その線で調べるのがいいと思いますわ」
ミリアリアは俺の話を聞き、納得してくれた。
それから俺達は昼食を食べた後、すぐに森へと戻った。ただし、先ほどまでと違って二人で森の調査を行うことに。
理由としては二つ。一つ目は、アスナと同じようにならないようにするためである。お互いにパーティー内ではアタッカーポジションである。そのため、アスナと同じようなことになることは少ないかもしれないが、用心をしておくにこしたことはない。
それと二つ目の理由としては効率である。俺はすぐにでも相手のアジトを見つけだし攻め込むつもりだ。そのため別々に行動していては、どちらかが発見した際に、相手を呼びに行く時間がかなり無駄だ。だからこそ二人で調査をしている。
「勇者様そろそろいいかと」
ミリアリアの言葉を聞いた俺は全力で探索魔法を使う。
午前中の森の探索で使っていたのと同じではなく、全力で魔力を使う。
どれほどの範囲を探索できるかは分からないが絶対に見つけて見せる。
探索には魔物の魔力や人、それ以外にもさまざまな魔力を持つものがどこにいて何をしているかが分かる。昨日あった悪魔族の男。あいつと同じ魔力を持つ者を見つけ出せばいい。そうすればアジトも自然と見つけ出すことが出来るだろう。
「これは違う、ただのモンスターだ。これもだ。こいつも違う。どこだ! どこにいやがる!」
俺はすでに、半径二キロの範囲を探っているが未だに見つからない。悪魔族であろう魔力を見つけられなくてもアスナの魔力を見つけられればそこに奴らがいるはずだ。だがそれすらまだ見つからない。
探索範囲を拡大していく。
そして、
「見つけた!」
悪魔族らしき魔力に、アスナの魔力、それに村人の魔力も固まっている。
場所はここから三キロ程離れているが、十分もあれば余裕で着ける。
「どこですか!?」
「ここから三キロほど先だ! 行くぞ!」
俺達はダッシュで向かった。
目的の場所に到着。
森の中にある小さな洞穴。
今は、その近くにある茂みの中に隠れている。
「間違いなく悪魔族ですね」
ミリアリアが洞穴の前で警備をしている二人を見て言った。
その言葉の後、俺も洞穴の方を見る。
「確かに悪魔族だな。それに」
俺は範囲を洞穴内に特定して探索魔法を使う。
中にも十人程度の悪魔族がいる。その内二人がアスナや村人達の所にいる。逃げないように監視をしているのだろう。
「勇者様どうしますか? 私達二人なら問題ないかもしれませんが、あちらには人質もいます。人質を盾にされれば手の出しようがありません」
「そうだな。だからそうならないようにサクッと倒していくぞ」
俺はそれだけ言って茂みを飛び出した。
「え!!」
俺は少し浮かれているところがあったことは否定しない。新たな力を手に入れて初めての依頼。昨日なんて初の実戦での対人戦を余裕で終えた。心の中に余裕が出来た。ただそれがいいのか分からないが、今は自分を信じるだけだ。
「何奴だ!」
俺に気づいた。
「ここはお前みたいなガキの来るところではない。分かったのなら帰れ!」
俺の姿を見てそんなことを言ってくる。
見た目的には人のように見える。それにしゃべり方にも違和感を感じない。
何も知らないで、きていたらただの人だと思っていたかもしれないな。
「ガキの来る場所じゃないね。でもさ~、ここに攫ってきた人たちがいるんでしょ。それとさ、あんたら変装して人間のように見せてはいるけど、悪魔族だよね」
「!!」
驚いているな。
「お前! 何故俺達の正体に気づいた」
怒った怒った。
思わず笑いそうになった。
「別にただそうではないかと思っただけさ。それにこんなところに隠れている時点で普通の人間ではないだろう」
「ゆ、スレイブ様!」
ミリアリアが一瞬俺のことを勇者様と呼ぼうとしたが、やめて名前で呼んできた。目の前にいる悪魔族に俺の正体を悟らせないためだろう。
それに腰に下げている剣に手がかかっている。流石だ。
「っち、貧相な村しかないと思っていたがバカな人間もいたもんだ。何も気づかなかったことにして帰っていれば痛い目に合わなくても済んだものを。まあ痛い、目、で済めばいいがな」
「そのお心遣いどう~も。だが痛い目を見るのはどちらだろうな」
少し笑いながら答えてやる。
「そうですね。私達を相手にするのです。悪魔族のお二人が少しかわいそうになってきますね」
「人間、俺達を本気で怒らせたいようだな」
「ああ、俺達が人間の、それもガキなんかに負けるわけがない。それどころか一瞬で終わる」
悪魔族の二人からもの凄い殺気が漏れている。
狙い通り。
それに、二人の雰囲気が変わった瞬間、ミリアリアから笑みがこぼれたのを俺は見過ごさなかった。
あからさまに俺達を殺す気のようだし、ここでこいつらを殺しても、中にいる他の悪魔族を捕まえれば問題ないだろう。
「本気でやれ! ミリアリア!」
「分かりました。一瞬で終わらせます」
その答えの後、目にも止まらぬ速さで悪魔族へと向かって行った。
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