第十七話 新たな被害
ローブの男を捕獲し村長からの一つ目の依頼は終了となった。
そして今、男の取り調べをするべく村長と一部の村人達と一緒にいる。
「ではスレイブ様、お願いいたします」
俺は村長の言葉に従って男のローブを取り、顔を見る。
すると、そこに現れたのは人のそれではない。黒い顔、頭には二つの角を生やしている。
その姿を見た全員がよくわからないと言う顔をしている中、
「悪魔、悪魔族です」
ミリアリアが男のことを悪魔族と呼んだ。
この世界を滅ぼそうとする脅威であり、俺達勇者パーティーが倒さないといけない相手である。
ミリアリアに呪いをかけて殺そうともしていた。
「私も本で読んだだけですが、特徴が全て一致しています」
ミリアリアが言うのであれば間違いないだろう。
俺やアスナはそれで理解したが、他に集まっている村人達はよくわからない様子。
そんなとき、
「よく知っているじゃね~か」
意識を取り戻した悪魔族の男が話かけてきた。
「お嬢ちゃん名前は?」
「何故あなたに言わないといけないのですか!?」
「別にいいじゃね~か、俺らのことを知る珍しい人間の名前くらいは最後に聞いておこうと思っただけだよ」
何かを企んでいる様な顔でそんなことを言った。
「私は、クリセリア王国王位継承権第一、ミリアリア=クリセリアです」
ミリアリアの名前を聞き悪魔族の男が少し驚きの表情を見せた。
「まさかお姫様がまだ生きているとは思わなかったぜ」
その言葉に対して、
「あの呪いをかけたのはお前か!」
俺は怒ってしまった。
「そんな面倒なことするかよ。俺なら一瞬で殺すさ」
「なら誰がやった」
悪魔族の胸倉をつかみ、引き寄せる。
悪魔族の男は、俺を一瞬睨んだ後、
「そんな怖い顔すんなって、俺も噂で聞いただけで知らね~さ。だが、俺達のかけた呪いを解けるやつがいたことには少し驚いたぜ」
「それを解いたのは俺だが」
「!! まさか!」
「それ以上言うなよ! 言ったら即殺すからな」
「分かった、分かったよ」
「スレイブ! そんな話今はどうでもいいでしょ。それよりもこの村を襲った理由を聞かないと」
「そうだったな」
「そんなもんね~よ」
俺達の会話に答える悪魔族の男。
「ないことはないだろうが!」
「ね~よ。ただの暇つぶしさ」
それ以上何も答えようとしない。
少し脅して見ても駄目のようであった。
「とりあえずはこのままここに置いておきましょう。紐で縛ってありますし、カギを掛けておけば逃げられないでしょう」
「そうですね」
俺たちは小屋にカギをかけて宿へと戻っていった。
まだ昼を少し過ぎたくらいだったが、今日の所は宿でゆっくりすることに。
翌日の朝。
宿で朝食を食べた後、それぞれ森に入り、調査をすることになった。
俺は周りの気配を探りながら森の中を歩いていく。
聖域のスキルの覚醒によって魔力を操作できるようになり、辺りを探る探索魔法を使えるようになった。探索魔法はスキルとかとは関係なく、魔力を扱える者であれば習得可能な魔法である。
そのため俺も、魔力の使い方を習った初日に教えてもらったのである。なんでも、探索魔法を使えるようになると、他の魔法の習得が早くなりやすそうだ。
そんな感じに森の中を歩いていると、複数の反応を見つけた。前方百メートル先に魔物らしき反応が五つある。
俺はどうしようかと少し考えた後、狩ることにした。今回の村人達の行方不明の原因が何かわからない以上は、少しでもその可能性のあることは見過ごせない。
急ぎ魔物の元へと向かうと、俺の接近に気づいた魔物達が襲い掛かってきた。その魔物達を一撃で倒す。
「原因は……、こいつらではないな」
倒した魔物達をアイテム袋へとしまい移動を再開する。
歩きながらあることを考えていた。これは、村を襲っていた男を捕まえ、その正体が明らかになった時から考えていたことなんだが、
「もしも、あの男以外に悪魔族がこっちの世界にきていたらどうだろうか? そうであれば今回の村人達の行方不明事件も少し納得がいくところがある。やつらなら村人達を使って何かしようと企んでいても不思議ではないからな」
などと、独り言をつぶやきながら辺りを探索。
午前中は特にこれといった発見もなく終了した。
もしも、本当に悪魔族がかかわっているとしたら何らかの痕跡が残っているはず。それに、人を捕まえているのであれば、どこかにアジトらしき物があっても不思議では無い。これについてはミリアリアとアスナにも話して、意見を聞いてみようと考えながら村へと戻ってきた。
「勇者様!」
先に戻っていたミリアリアが声を掛けてきた。
「ミリアリア! 早かったな!」
「いえ、皆様もそろそろかと思いまして」
「アスナはまだか?」
「はい。私も分かれて探していましたのでまだ森の中かと。ですがそろそろ戻ってくるのではありませんか?」
「そうだな」
それから一時間、アスナが戻ってこない。
さすがにおかしいと感じた俺は、
「ミリアリア変じゃないか」
「そうですね。さすがに約束の時間に彼女がこれほど遅れるとは考えられません。何かあったのでしょうか?」
「そうかもしれないし、最悪の事態を考えると村人達と同じように誰かにさらわれた可能性もある」
「それはどういう事ですか!」
俺は、先ほどまで考えていたことをミリアリアに話すのだった。
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