第十九話 救出
結果は言うまでもない。ミリアリアの圧勝で終わった。
魔族の二人はミリアリアの攻撃に気づいてはいた。いたのだが、その速さに目が付いて行かず、何もできずに一刀両断で倒されたのだ。
「歯ごたえがありませんわ」
「仕方がないさ。アジトの入り口だ。そんなところに配置されている奴に期待しても仕方がないさ。だが、この奥にいる悪魔族の内、二人、かなり厄介な奴がいる」
「そのようですね。私も嫌って程感じていますわ。しかもこの世の者では敵わないと思うほどの相手ですね」
「ああ、ここまで戦ってきた奴より明らかに上だろうな」
アジトの中を見ながら話していた。
この中に入ったら悪魔族を全て倒すまで出てこれないだろう。つまるところ生きるか死ぬかの二択でしかない。
だがそんな覚悟俺達は既に出来ていた。
「行くとするか」
「そうですね」
お互いに交わす言葉はこれだけでいい。
なぜならミリアリアの目が今までに見たことがない程に真剣な物であったからだ。
アジトの中はそれほど広くない。
そのため入ってすぐ分かれ道へと差し掛かった。このアジトの中には何個かの分かれ道がある。その一つ目であった。
「勇者様どちらへ行きますか?」
「右だな。アスナ達はそっちにいる」
「分かりました」
探知魔法で既にアスナや他の村人達の居場所は分かっている。後はその方向に進むだけ。
それに先ほどまで監視をしていた二人の悪魔族の魔力もない。
アジトの中に何人かの悪魔族がいたが、俺達がアスナの所に着くまでの間、出会うことはなかった。
「アスナ!」
大声で叫ぶ。
「っえ! え! スレイブなの!?」
アスナの声が聞こえてきた。とりあえずは無事で一安心。それに、
「助けが来たのか」
「わしらはこれで助かるんじゃの」
「やっと戻れる」
それ以外に男の人達の声も聞こえてくる。
「皆さん無事のようですね」
ミリアリアも安心した表情を浮かべている。
「そうだ! 無事でよかった」
そして俺達はアスナ達の捕まっている部屋へと到着した。
そこには無事な姿のアスナと、村人達がいた。
声を聞いて分かってはいたが、それでも無事な姿を見て俺は安堵のあまり腰を抜かしそうになり、尻もちをついてしまった。
「スレイブどうしたの? 大丈夫?」
「ああ大丈夫だ! アスナの無事な姿を見て安心しただけだよ」
思わず顔がにやけてしまった。
それほどに安心したということだ。
「それならいいんだけど、何かあったんじゃないかって心配したわよ」
「そうです。私も、スレイブ様に何かあったのかと思いました」
背後にいたミリアリアも俺にそんなことを言ってきた。
「なんで俺が心配されているんだよ」
少し笑ってしまった俺。
そんな俺に、
「あなた方はいったい?」
「俺は、そこにいるアスナと冒険者パーティーを組んでいますスレイブです」
「私もスレイブ様やアスナとパーティーを組んでいますミリアリアです」
「冒険者として、皆様の村の村長様に救出の依頼を受けてやってきました」
「こんな危険なところにですか」
「そうです」
「我々は戦いに関しては素人です。あなた方の方が詳しいでしょう。そんな私達でもわかります。この中にいる者達は異常、いえそんな言葉では生ぬるい。逆らえば皆殺しにされるでしょう」
「確かにあなた方の言う通り、この中にいる者達の強さは異常です。ですが心配はいりません。俺達なら大丈夫です。それに」
俺は背後から近づいてきていた悪魔族に気づき、背後に向かって剣を振る。
「ぎゃぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」
俺の剣が悪魔族を一撃で倒した。
「この通りです。これくらいの相手であれば問題なく倒せます。ですので皆さんは村へと戻って家族の方達に元気な姿を見せてあげて下さい」
「分かりました」
俺達は捕まっている村人達を出口までへと案内する。
結果的にここまで戦った悪魔族は一人のみ。
つまり、ここからの戦いは残り九体の悪魔族の相手をすることになる。
村人の人達を見送った後、
「さて行くとするか」
二つ目の依頼の半分がこれで完了。後は、今後同じようなことが起きないようにする。つまりはこの中にいる悪魔族を全滅させるだけになる。
「ええ」
「かりはしっかり返さないとね」
二人とも気合は十分の様子。
俺もそうだ。
「そうだな。やるぞ」
再び中へと戻っていく。
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