第十四話 ミリル村

 王都を出発してから二日が経ち、俺達はミリル村へと到着した。


 周りを山に囲まれている。


 俺は馬車から降りてすぐ村の入口へと向かった。


「すいませんが、村長さんにお話しがあるのですがいいですか?」


 入り口を警備している男性に話しかける。


「村長に何の用だ!」


「王よりこの村の事件を解決するように依頼を受けてまいりました」


「王よりだ! 証拠はどこにある?」


 俺は、王様より授かった依頼書を見せた。


 俺から受け取った依頼書に一通り目を通すと、


「後は任せたぞ!」


 隣にいたもう一人の男に声を掛ける。


「は!」


「ついてこい!」


 村の中に入っていく男。


 俺は、


「入っていいって」


 今馬車から降りてきた二人に声をかけて男に付いて行く。


 小走りで俺の後ろを付いてくる。


「勇者様、お待ちください」


「スレイブ! 先に行かないでよ」


 先に行く俺に向かって言ってきた。


「無駄口たたいてないで早くついて来いよ! じゃないと置いていかれるぞ!」


『は~い!』


 二人声をそろえて返事する。






 男の後ろを付いて歩くことものの数分で村長の家らしき前に到着した。


 木でできた家で、村の中にある他の家に比べると、少し大きくあった。


 コンコン! コンコン!


 男が家のトビラをノックする。


「村長! 王都より依頼を受けられた者達が来ております」


 大声で叫ぶ男。


 すると、


 ガラガラガラガラ!


 音を立てながら扉が開く。


 そこへ現れたのは白いひげを生やし、腰を曲げて杖を突いたお年寄りの男性であった。


 男はお年寄りの男性に近づいていき何か話してるようだ。

 

 話が終わり俺達の元へとくる男。


「中へ入れとのことだ」


 それだけ言って村の入口へと戻っていった。


 お年寄りの男性は先に中へと戻っていった。


 俺たちは急ぎ中へと入りお年寄りの男性の後ろを付いて行く。


 そして、客間らしき場所へと到着すると、俺を真ん中にして横一列に座った。


「この度は、わしからの依頼を受けていただきありがとう」


 頭を下げて礼を言われた。


「わしの名は、グレイド=カルト。この村の村長をしている者じゃ勇者様」


「え!!」


 なんで俺のことを知っているんだ! 王様からは正体については内緒でと言われていたのに。どうしたものか? と俺が悩んでいると、


「王様より、あなた方のことはお伺いしておりました」


「え? どういうことですか!?」


「今回の依頼についてはわしから直接王様にお話を持っていきました。その際に王様より、勇者様方に今回の事件を任せるとおっしゃいました」


「は、はーーーーーーーーーーーー!」


 思わず叫んでしまった。それと俺は、以前ミリアリアが王様のことを子供っぽい人だと言っていたことを思い出し納得した。


「ですが、わし以外この村で勇者様方の正体を知る者はおりません。これは、今回の依頼をする際の王様とのお約束でしたので」


 ふむふむ、


「お父様は本当に!」


 村長の話を聞き、怒っているミリアリア。


 それとは別に、


「分かってはいましたが」


 少し落ち込んだ態度を取るアスナ。


「村長! 早速ですみませんが今回の依頼について詳しく聞かせていただいてもよろしいでしょうか」


「そうですね。まずはこの村のことについてお話させていただきます。もともこの村には常駐している冒険者の方が四名程おりました。それは週に数回、森から迷い込む魔物がいるためです。ですが、それ以外には何もなく平和そのものでした。ですが一週間前のことです。この村にある一人の男が現れたのです。その男は、顔をローブで隠しておりました。怪しいと思った者達が冒険者の方達を呼びに行きました」


「では冒険者の方々がその男を追い払ったのですか?」


 ミリアリアの言葉に対して首を横に振る村長。


「全滅しました」


「え!! 冒険者が四人がかりで相手をして勝てなかったのですか!?」


 普段から魔物を相手にしている冒険者相手に一対四で勝ったのか?


「そうです。少し怪しいくらいで特に何もしてこない男に対して冒険者様方は話を聞こうとしました。ですが、その言葉には答えず、攻撃を仕掛けてきました。それに対して私達は一対四では勝ち目がないと勇者様方と同じことを考えていたのです。それは冒険者様方も同じようでした。それに、戦闘が始まってすぐは冒険者様方優勢で男の方は何とかしのいでいる感じだったのですが、男は途中で魔物を呼び出しました。それからすぐに形勢は男へと傾き、冒険者様方が全滅してしまったのです」


 魔物を使役する者がいるなんて初めて聞いたぞ。


「今、その冒険者達はどこにいるのですか? もしよければお話を聞きたいのですが……」


「……」


 俺の言葉に対して村長は何も答えなかった。


 それから、少しの静寂があった後、


「死にました」


 小さな声で村長が答えた。


 それに対して俺の横にいるミリアリアとアスナが手で口を押えている。


「まさか」


「本当です。即死でした。それから、男は村人達に金と食物を要求してきました。我々はそれに逆らうことは出来るはずもなく従いました。それから毎日のように男は金と食物を要求してきます。それともし断れば村人を殺すと脅しを掛けられており、どうしようもない状態にございます」


「まず俺達の仕事としてその男の討伐ですね」


「そうです。それともう一つ、これも一週間前からなのですが、山へと仕事に出た者達が毎日のように一人行方不明になって帰ってきておりません。昨日で六人もの者がです。その者達の探索も勇者様方にお願いしたいのです」


「分かりました。男を捕まえた後、すぐに探索に移らせていただきます」


「ありがとうございます。勇者様方の宿に関してはこちらで用意しておりますので、そちらに泊ってください」


「分かりました。それで村長俺達のことですが」


「分かっております。秘密でございますね」


「そうです。ですので、冒険者と言うことにしておいてもらえればと思います。それに」


 俺は冒険者カードを見せる。


「この通り、俺とアスナは実際に冒険者登録もしておりますので」


「分かりました。勇者様方の聞かれた際にはそのようにいたします」


 村長からの話が終わり俺達は今日から泊まる宿へと案内されるのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る