第十二話 新たな仲間

 俺とミリアリアは模擬戦の後、王様に呼び出されて謁見の間へと来ていた。


「今日はなんで呼び出されたんだ?」


 謁見の間にまだ王様が来ていないため、非常に暇であった。


 そのため、何故呼び出されたのか、王様の娘であるミリアリアなら何か知っているかと思い、聞いてみた。


「私も何も聞いておりません。ただ……」


「ただ、どうしたんだ?」


「ここ最近のお父様は少し変かと思っております」


 王様が少し変か~、今日俺らを呼び出したのと何か関係あるのか?


 俺は腕を組み一人頭を悩ませる。


「勇者様、そんなに頭を悩ませる必要はありません。お父様のことですから、またしょうもないことを企んでいるのでしょう」


「王様にそんなこと言っていいのか?」


「いいのです。ああ見えて子供っぽい人なので」


 いくら父親だからと言って、王様にそこまで言っていいのか?


 と俺が思っていると、


「すまん、待たせたな」


 王様が入ってきた。その後ろによく見知った顔がある。


「アスナ!」


 思わず彼女の名前を叫んでしまった。


 でも何故、彼女がここにいるんだ?


「久しぶりねスレイブ! って言っても一週間ぶりくらいだけど」


 俺はアスナと殆ど、どころかあのパーティーを追放された日以外で話したことがない。それにもかかわらず、凄く慣れ親しんだ風の話し方。


「勇者様、彼女は一体誰なのですか?」


「それはわしから話そうか」


 玉座に座る王様が話し始めた。


「彼女の名は、アスナ=レイリア。スレイブ君と同じ、元勇者パーティーのメンバーだった」


 王様の言う通りだ。だが、彼女はまだ勇者パーティーに所属しているはずなのに、今の王様の言い方だと彼女が既にその勇者パーティーを抜けているように聞こえる。


「父上! 何故、元勇者パーティーの人間がここにいるのですか!?」


「落ち着きなさいミリアリア、彼女もまた女神に選ばれた者の一人なのだ」


『!!』


 俺とミリアリアは、二人そろって驚いていた。


 一度お互いの顔を見合わせた後、


『え~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!』


 驚きのあまり、二人の声が揃ってしまった。


「二人とも仲が良く何よりじゃ」


 笑いながらそんなことを言うお王様。


「ですが、三年前に結成された勇者パーティーには、勇者様以外の女神様に選ばれた者はいなかったはずではなかったのですか?」


「わしもそう思っておったのじゃがな」


「そのことについては私からお話しします」


 と、アスナが話し始めた。


「私が十歳の誕生日を迎えた日の夜、夢の中に女神様が出てきました」


 ここはミリアリアに聞いた話と同じか。


「その夢の中で私は女神様より、治癒のスキルとこの世界を救う勇者様のお話を聞きました」


 ここも同じだな。


「その時、私は、十四歳になったら、王城へと行くように女神様に言われたのです」


 あれ? ここは違うな。


「何故かと女神様に聞いた所、私に勇者様の手助けをするように言われました。能力が覚醒する前の勇者様は、戦闘能力を持っていない。だから、私の治癒の力を使って助けてやって欲しいと言われたのです。そのため私は、女神様の言葉に従い、自分の正体を隠して勇者パーティーのメンバーとして三年間、スレイブと一緒にいました。ただ、正体を気づかれてはいけないと、接触を最小限にしてきたのです。ですが、一週間前にあんなことが起こると知っていれば、最初から正体を打ち明けておけばよかったと思います」


 な、なるほど。


「じゃぁ、あのとき俺について来ようとしたのもそれが理由だったのか?」


「そうです。私が仕えるのは本当の勇者様だけです。あんなクズのことなんてどうでもいいのです」


 俺もゼルドリスのことは嫌いだが、さすがにそこまで思ったことはないぞ。


 それに、横でミリアリアが何かを言いたそうにしている。


「と、言うわけで彼女にもこれからスレイブ君の勇者パーティーに所属してもらう。よいか!」


『は!』


 王様の言葉に対して俺とミリアリアは即答した。


 だが、


「一言だけいいでしょうか!?」


「なんじゃ」


「アスナ殿!」


「はい!? なんでしょうか」


「勇者様のことを呼び捨てとはどういうことですか? 婚約者である私でも呼び捨てなどできないと言うのに!」


「こ、婚約者ですって! どういうことですかスレイブ! 私は聞いてないですよ!」


 何故アスナが、ミリアリアとの婚約のことについてそんなに切れてるの? それにミリアリアも名前の呼び方くらいでなんでそこまでこだわっているんだ?


 だがしかし、にらみ合っている二人は怖い。ここは下手に口を挟まない方がいいかもしれないな。


「婚約についてはわしからスレイブ君にお願いしたのじゃ」


「そうですか! わかりました。ですが、まだ婚約しただけですよね」


「そうじゃ」


「そうですか。なら私にもチャンスはありますね。それに、名前の呼び方など自由でしょ!」


 アスナが俺の腕に飛びついてくる。


「な! 何をしているのですか!」


「仲間のスキンシップですよ。スキンシップ」


 ミリアリアまでも俺の腕に飛びついてきた。


 俺は一体どうしてしまったんだ?


 今の状況に頭が追い付かないでいると、


「おっほん! そろそろ本題に入りたいのだがいいかの?」


 気を使ってくれたのか、一度咳ばらいを入れてから話し始めた。


「す、すみません王様。アスナが勇者パーティーに加入すると言うのがそのお話ではなかったのですか?」


「それも話の内の一つのなのじゃが、それ以上に大事な話がある」


 そこで王様が俺たちに話したことは、新勇者パーティーの初仕事についてであった。

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