第九話 勇者パーティーのそれから 2
それはゼルドリス達勇者パーティーのメンバーがダンジョンの二階へと来た時のことであった。
「なんだ! これは!」
ダンジョン内にあるトラップにアスナ以外のメンバーが引っかかったのである。
「早く脱出させろ!」
自分を早く出せと叫ぶゼルドリス。
だが、アスナ以外の他のメンバーも同じトラップに引っかかっており、抜け出すことが出来ない状況にある。その中で助けを求めても誰も助けに来ることが出来ないと分からないのかと、アスナは思っていた。
もっと慎重に進んでいれば、このようなことになることもなかったはず。
「おい! アスナ! 勇者の俺を助けろ! 俺がいなくなったらこの世界が終わるぞ!」
無事であるアスナを見つけるや叫びだすゼルドリス。
それに対してアスナは、
「何故私が、あなたを助けるのですか?」
その言葉に対して怒りだす。
「何故だと! 俺は勇者だ! この世界を救う勇者なんだ! その俺がこんなところで死んでしまえば、この世界が終わるだろうが! そんなこともわからねぇのか!」
「別にあなた一人死んだくらいでこの世界がどうにかなるのだったら、この世界は既に終わっています。少しは身の程を知りなさい!」
それに対して、
「あんた! その口の利き方は何なの!」
ラミアが怒り出した。
「アスナ! いつもいつも口答えばっかり、一体何様のつもりなの? 私達は勇者パーティーなのよ。そのパーティーのリーダーは勇者であるゼルドリスなの。私達全員がそのゼルドリスの指示に従うことは使命なのよ!」
(どこまでバカなの? 勇者が絶対なんて誰が言ったのかしら? それに三年前のあの日、王様が指さした相手はもう一人いたのに誰も何も言わなかった。でもこうなってしまっては私がここにいる意味はもうないわ)
アスナは心の中で答えを出した後、
「一人だけは助けてあげるわ。だけどその後は勝手にして」
その言葉に対しての反応は予想通りというか、アスナの思った通りであった。
「なら俺を助けろ!」
最初の一言がそれかとアスナは思った。
自分を勇者だと言うのであれば、他のメンバーのことを気遣い先に助けさせるのが普通ではないか? だが、それが出来るのであれば、こいつはスレイブをパーティーから追放したりなどしていないだろうなと思うアスナであった。
結局アスナが助けたのはゼルドリスでもなく、副リーダーのラミアでもなく、セルカであった。
そして、
「さようなら。私があなた達に今後会うことのないことを願っているわ」
それだけ言い残して勇者パーティーを抜けていくのであった。
そんなアスナを見ながらゼルドリスやラミアが大声で何かを叫んでいるようだったが、その言葉がアスナに届くことはなかったのである。
私がゼルドリスのパーティーを抜けた翌日、
「まずは冒険者ギルドかな? あそこに行けばスレイブの足取りも分かるよね」
朝起きてすぐに冒険者ギルドへと向かうのだが、
(昨日いい感じに別れを告げといてばったりゼルドリス達に再会するのだけはやめて欲しいわね)
心の中で私はそんなことを願いながら冒険者ギルドへと到着した。
スレイブがパーティーを抜けてから既に三日以上が経っているし、もしかしたら王都にはもういないのかな? などと考えながら私は冒険者ギルドのトビラを開いた。
中はいつも通りの賑わい。
私は掲示板に向かわずに直接受付へと向かう。
向かった先は、私達の担当受付だった。ここ大事、私は既に勇者パーティーを抜けた身だからね。
アルムさんの元へとくると、
「あ~ら~、アスナさんじゃない~の~、一人なん~て、珍し~いわね」
いつも通りの話し方で話してくるアルムさん。ただ、私はこの人のことが少し苦手であった。話し方がどうしてもイライラさせる。
「少しお聞きしたいことがあるのですがいいですか?」
「あ~ら? 何か~しら?」
「最近ここに、勇者パーティーのメンバーだったスレイブは来ませんでしたか?」
私の問いかけに対して少し考えるアルムさん。
そして、
「来まし~た~よ。た~し~か~。三日、ま~えに~、王様からの~依頼を受けていたわ~」
「では今はお城にいるのですか?」
「わからな~いわ~、あれ以来、顔をみていないか~ら~ね」
私にとってはその情報だけで十分。
アルムさんから話を聞いてすぐに私はお城へと向かった。
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