人生を賭けた……

ポンポン帝国

人生を賭けた……

 人々が賑わう繁華街、その端っこにポツーンと存在しているボロ銭湯。そう! ここが俺の今日の戦場だ!


 苦節一週間。銭湯内の視察に四日(気持ちよかった)。外周の観察に一日。逃走経路に二日。もう何をするかは紳士、淑女、変態のみなさまにならわかるよな?


 覗きだ!! あぁ覗きさ!! 悪いか!! いや、悪いか。悪い事だよな……。っと騙されるとこだったぜ。


 そんなこんなで俺は今、はしごから昇って、窓に張り付いている。ここは昨晩忍び込んで開けておいた窓だ。一度開けてしまえば、もの凄い高い位置なので閉める事が出来なくなる。


どうだ!? この完全犯罪! しかもこの窓は周りからほぼ死角になっていて、周りからは殆ど見えない。ただ問題一つ問題があるとしたら、めっちゃ高い。今はしご揺らされたら俺、転生しちゃう……。あぁ、ハーレムだったらこんな事してなかったのに。どこかにハーレム落ちてないかな?


 おっと、それどころじゃない。今は現実の話だ。ここの窓を開ければそこから先は楽園だぜ! 


 ゴクリ……。あれ? 開かない。そんな馬鹿な! 


「ふふふ、爪が甘いのだよ」


「誰だ!?」


「私か、名乗る程の名はないが、あえて言うなら『名探偵』だ!」


「いや、名乗ってるし! てか何でバレた!」


「それは私が『名探偵』だからだ! 私の推理がピカリと輝き、ここが最善の場所だと導き出されたのだ。そして昨晩、窓の鍵を開けた。なのになぜそこが閉まっている!?」


「お前探偵じゃねーじゃんか!! むしろこっち側じゃんか!! あれだろ? 俺が先に開けて、それを、間違って閉めちゃったんだろ!!」


「ふざけるな!! 先に開けたのが私で、閉めたのがそっちだ!!」


「そこが問題じゃねえええ!!」


 考えろ俺!! このままじゃ目の前の楽園が閉ざされてしまう。いや、まだ開いてすらいないんだけど。今日の為にどれだけイメージトレーニングをしてきたんだ。最悪の想定もしてたんだろ? いや、乱入なんて考えてなかったし、せめて中の楽園ボイスだけでも聞こえるように窓に耳を付けよう。


「「…………」」


「被るんじゃねーよ!!」


「そっちが被ったのではないか、私の方が一秒早かった! やーい、やーい!!」


「誰だ!! そこで騒いでる奴は!!」


「くそ! バレた!!」


「逃げろ!!」


 くそ! こんな筈じゃなかったのに……! こいつのせいだ!! はしご急いで降りるのこえーし! 足元よく見えねーし!! おい! 名探偵!! こっちを掴むな!!


「私は高いところ苦手なのだ……」


「なら何でこんな事してんだよ!!」


「楽園を探してたのだ」


「仲間じゃんか。ってなる訳ねーだろ! 代わりに俺の生贄になれ! うりゃ!!」


 はしごを蹴り飛ばし振り落とす! ざまぁみろ! っておい、もう地面じゃんか! これじゃただはしごが倒れてより目立っただけだ。


 あーっと、こんな奴に構っている場合じゃない! ほれ逃げろ!!


 計画していた逃走経路を走る。幸いにも俺は足が速い。学生時代、『とびっ子歩ちゃん』と呼ばれた程足が速いのだ。あんな奴、さっさと置いて、逃げるが勝ちだ。


「何で同じ方向なんだよ!!」


 てかめっちゃ足速いし!!


「そっちこそ!!」


 くそ、後ろから追手が来ている。


「こういう時はバラバラに別れて、錯乱させるのが一番だろが! あっち行け!」


「何を!! 私は初めからこの道から逃げる予定だったのだ!! お主こそあっちへ行くのだ!!」


 こうなったら、こいつを転ばせて、その隙に逃げるしかない。


「「うりゃ!!」」


 お互いの足を掛け合ってもつれてコケる。同じ事考えてんじゃねーか!! ホント禄な事ねーな!


「仲良くお縄に付け!!」


「「先にこいつから捕まえろ!!」」


 そして、仲良く二人共警察に連れていかれたとさ。


 みんな……こんな大人になっちゃ、駄目だぞ?


 次は脱獄編だ!! (続かない)

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人生を賭けた…… ポンポン帝国 @rontao816

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