第13話 2001/7


[You don't have to be a star (to be in my show)]


プラネタリウム 見上げる君の

瞳、星降る ミルキィ・ウェイ

とってもきれい、かがやいて。..


高原の空、夜、かけてゆく

彗星みたい、流星みたい....

ほら、またひとつ....瞬いて。



君はスター 僕の星空

いっぱいにして、ほほえんで

君はスター、僕のSHOW

ステージ、輝く、musical-スタァ....


いついつまでも、そのままでいて

星空みたいに evergreen

永遠のように 高く、ひかりを

遠い 果てから なげかけて....

君はスター、僕は夜空さ

君はスター、僕はShow-man.....


You , don't have to....be a star....

to be in my show.




[作: shoo 2001/5 ]




--------------------[長文のコーナー]------------------------------------



土曜日。


きょうは授業も半日でおわり。

テスト前で部活はなし。


運動部の連中は、こんな時しか遊ぶ時間がないから、

ここぞ、とばかりに遊びまくる....。



少女は、制服のまま。

駅の改札口で。

すらりとした脚、ブルーのスニーカーの爪先で

地面に○を書いている....。


......遅いナ....。


....きょう、三時間目。古文の授業中。

背中つつかれて。


「え、なに....?」


後ろの子から、まわってきたお手紙。



....今日、練習休みだから、ちょっとつきあってくれないかな?

駅で待ってて。



と、彼の乱暴な字。


そっと、彼の席の方を見たら、前の子の背中に隠れて。

鉛筆持った手振って、ニカっと笑ってた。


....もう。


誘ってくれるの、うれしいけど。

いつも突然なんだから。


学校帰りじゃなくて、お休みの日に、おしゃれして行きたいのにな...。




何両か、電車が行きすぎる。

緑色、一両だかの電車が走ると、歯車のうなりと、レールの響きが

ゆっくりと、去って行く。


風が舞い、少女のみじかい髪を巻き上げる。

セーラー服の裾、プリーツのスカート。

黄色いスカーフ、風になびいて。


夏近し。


列車風すら、清涼な.....



学生たちが、ぱらぱらと歩いて来る。


「あ.......。」



そのうちの一人。


長身で、がっしりとした短髪の少年。

スニーカーのかかと踏んづけてあるいてくる。

ポケットに手を突っ込んで。



「よお。」


「遅かったのね...なにかあったの?。」



「いやぁ、罰の掃除当番でさ..。」

と、彼は、照れ笑い。

短い頭の毛をカキカキ。




「なにしたの?。」



「へへ、ちょっとな..。」

と、彼はニカッと笑う....。




「ねえ、きょうはどこへ行くの?。」

と、彼女はちょっと甘い声。



「プラネタリウム、だよ。」



「....そういうとこ、好きだっけ....?。」

と、彼女は、物問い顔。

長身の彼への視線。

自然と、上目に。

そんなしぐさ、ちょっとかわいらしい。



「ま、いいだろ、電車のるぞ。」

と彼は。

改札を抜け、入ってきた電車に乗ろう、と。




「あ、待って。もぅ。ずっと待ってあげてたのにぃ。」

と、彼女はあわててかばんを持ち、定期券を出して駅員に見せた。

古い、昭和を思わせる電気軌道の駅。

一両だけの電車が到着し、ブレーキの音が響く。


階段2段だけ、というホーム。

電車のドアがガラリ、とばねで引っ張られたように開く。


彼は、彼女の方を振り返り、

にこやかに。

ドアを押えて待っている。


彼女は小走りに2段を昇り、ホームを駆けて。

手下げかばんについているマスコットも揺れて。


「はあ、はあ..すみません.....。」


駅員は、にっこりと。

ブルーのスニーカーがドアの向こうへ登ったことを確認し、

指差し、車両の前後。

車掌、手笛を吹く。


ドアが、がらり、と閉じた。


「ありがと...ちょっと、汗かいちゃった。夏ね、もう....。」

と、前髪をかき上げて、彼女。



「そうだな、もう....夏、だな....。」

彼は、青空の向こうの雲を見ながら。


「あ、ほんと。入道雲ね。あれ。」

と、彼女は彼の視線のかなたを見て。



電車は、ギアの音を響かせて。

下町の路地裏、古い街並みの軒先を走る。

モーターの音が途切れると、レールの音。

カタン、カタン.....カタン..。



「わたし、好きだな、この電車。なんだか一生懸命走ってて。」

と、彼女は、彼に笑いかけながら。



彼は、その言葉に笑う。

「はは、『一生懸命』か、らしいよな。

ほんとに好きだよな、そういうの。」

と。



「今年は、選抜に勝とうね、絶対!。」

と、彼女は少し真剣な顔で。



「ああ。」

と彼は、彼女の瞳を見つめて。



冷房のない電車は、木枠の窓が開け放たれて。

走りすぎる街の匂いを風は運んで。


潮の香り。

街。

軒先の洗濯物、シャボンの匂い。

林の、木のかおり....。


自動車の匂いがする。

オイルの匂い。

どこかの料理屋さんの、おいしそうな匂い。


...そろそろ、街の方に近づいた。


「降りるぞ。」

彼は、ぶっきらぼうに。


「え、降りるの...。」

彼女は、ちょっとおどろいて。


電車が、ブレーキのきしみを響かせると

ちょっと開けた街並みの駅、に停止した。


さっきのように、がらり、とドアが開き、

彼は、かかとつぶしのスニーカーで降りる。

ブルーの、ちょっとこぶりのスニーカーが並ぶ...。



駅員に定期を見せ、構内踏み切りを渡った

ふたりは、駅前から、バス通りを歩いて

角の古いビルディングの前へ。


「ここ?」

と、彼女は、彼の方を向いて。


「ああ、ここ。...もう、閉館なんだ。」

と、彼。

見ると、案内看板の下、手書きの文字。

きれいな楷書。


.....秋には閉館。



「なくなるの?ここ。」

と、彼女。

ちょっとさびしそうな顔。



「ああ、その前に見せておきたい、と思ってさ。」

と、彼は短い髪に手をやり、ちょっと照れくさそう。



「....ありがとう。」

と、彼女はにっこり。



「さ、入るか。」



「うん。」





ちいさなホール。

椅子を後ろに傾けて天井の☆を見る、というスタイル。

中央に映写機、その周りに椅子が円を描くように。


観客はまばら.....。


「ちょっと、暗いのね...。」

と、彼女は初めての雰囲気にどぎまぎ。


まん中に近い椅子に、二人で並んで座った。


しばらくすると、明かりが落ち、静かな音楽が流れた。


(ドビュッシーのようだ、が、スポーツ系のふたりには

曲名なんてわからない。し、知る意味もない^^;)



それでも、フランス印象派の情緒ある音と、☆のきらめきは彼女の胸を打つ......。


「きれいね......。」

と、☆の瞬きを瞳に映して、彼にささやく。


「ああ。」

と、彼は、その瞳のきらきらの方を「きれい」と思う。

....ずっと...

...いっしょだったからさ...

...なんだか、いまさら...

「好き」だなんて..ie ne e yo....。

....でも、いつかは....


と、想いに耽りながら。


眠ってしまう(笑)



「本物の星、みたいね...。」と、

彼女はとなりの彼を見る。


....あれ....寝ちゃってる。

....練習で疲れてるのかな。

....いつも、ありがとう。

がんばっている、あなたが好きよ。

でも...言えないわ。...だって....。


流れ星、願いかなうっていうけれど。

お願い、伝えて、彼に、ひとこと。


プラネタリウム、でも叶うかな?



.....あ、流れ星......!




☆................





[作:shoo 2001/6]


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ふんわり・のんびり 深町珠 @shoofukamachi

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