第5話 ゴリゴリのゴリラゴリラ
夏も終わり、紅葉が色づき始めた頃のこと。
カランコロン。
お店のドアが開き、大悟さんが小走りに対応しにゆく。
僕はコーヒー豆の焙煎をしている、これは味の命運を大きく左右する目が離せれない作業だ。
「おーい、守ーーー」
大悟さんが呼んでる、少しの間なら目を離しても大丈夫かな。
キッチンから出るとそこには、あの時のベンチプレス男がいる。
驚きのあまり少しの間フリーズ。彼がいたことに驚いたのではない、お店にゴリラが来店したことに驚いていているのだ。
初めて二足歩行の状態の彼を見ると身長は185㎝ほど、デカイ、全てがデカイ。
アニメに一人はいるムキムキキャラクター、彼がそれの人類代表ではないのか。
勿論、服はタンクトップ。鬼に金棒=筋肉にタンクトップ この方程式を教科書に載せることにしよう。
「あの時は助けて頂き本当にありがとうございました。こういう時はお礼の品を渡
すべきとYah○o知恵袋に書いてあったので、自分が好きな品を選びお持ちしまし
た」
思っていたより丁寧な態度に、この人は脳まで筋肉タイプではなかったのかと僕は考えを改めることにしよう。
(想像とは言え、悪口を言い過ぎたと反省。)
かく言え僕も誰かにお礼の品を貰うような人生は送ってこなかったため、何を貰えるのかと少しワクワクしている。
「つまらないものですが、」
定型文を聞きつつ有難く受け取る。大悟さんも何が入っているのか気になるようにこちらを見ている。
ずっしりとした重量感、なんとなく粉っぽい。高級なお茶かな?喫茶店だから考えてくれたのかと想像を巡らす。
「開けてみてもいいですか?」
どうにも中身が気になってしまい、失礼ながらも聞いてしまう。
「勿論、構いませんよ」
彼とまともに言葉のキャッチボールをしたのはこれが初めてだ。包装用の袋を丁寧に開けていく。
袋からブツを取り出す、パッケージをみる<マ○プロテイン?>
思わず聞いてしまう。
「これはプロテインですか?」
「はい!俺が一番貰って嬉しいものはプロテインなので、こちらをお渡ししようと思いました!!」
再び訂正しよう、こいつは脳まで筋肉で出来ている。
脳まで筋肉ゴリラ、 脳筋肉ゴリラ~タンクトップを添えて~
隣で大悟さんが大爆笑している。
「マジで腹痛いww。なんでプロテインなんだよwww」
貰いものに文句は言えないが、これだけはキレてもいいのではないかと心底思う。
ゴリラは何がおかしかったのか、皆目見当がつかないような顔で立ち尽くしている。
「ナチュラルチョコレート味、嫌いでしたか?」
「……。」
もうこの人は手遅れだ、脳まで侵されてしまっている。こうなったら感謝の気持ちを伝えて早々に帰って貰おう、
そう決めて言葉にしようと瞬間。
「この店で働かない?
君みたいな面白い人がいるともっと楽しい職場になると思うんだよね。」
「いや、大悟さんそれはダメですよ。脳筋肉ゴリラですよ!?」
思わず心の中の呼び名で読んでしまう。
「俺のシックスセンスが彼を呼んでるんだよ。頼むよ守!!」
これだけはお願いされても嫌だなと思って、ムッとした表情を浮かべている。
「なんか、焦げた匂いしませんか?」
ゴリラが唐突に話し始める、さすが野生の動物だ嗅覚も人間離れしてるのかと皮肉を思う。
でも確かに臭い、何の匂いだ、、、、、、、、?
「あ!豆!」
急いでキッチンに戻るが時すでに遅し、真っ黒になったコーヒー豆はもうお店には出せない…。
Wアタックをくらいメンタルがやられる。
僕が落ち込んでいるときにとんとん拍子で話が決まってゆき、この野生動物は採用となる。
当店三人目のスタッフ 東郷(とうごう)和人(かずと)の仲間入りだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます