第3話 男の友情。
ビリッッッ!!!全身に衝撃が走る。
なんだ、何が起きた。
脳が少しづつ知覚する。
目を開くと顔を真っ赤にした和人(かずと)が、涙目で顔を真っ赤にさせながらこちらを見ている。
「俺、今、守(まもる)さんのことビンタしました!」
体育会系らしい正直な報告を受ける。
さらに大男は続ける。
「今は俺がいるじゃないですか!前と違って一人じゃないんですよ!!それとも俺
じゃ頼り無いでふか!!?」
大事なところで舌を噛む、その上痛みを我慢しているのかさらに苦悶の表情を見せる巨人。
自然と笑えてくる、さらに僕の人生で経験が少ない人の温もりに触れ目頭が熱くなる。
泣いてるかの笑ってるのか分からない。その時の僕のへんてこな顔は、遺影で使われたくない写真ランキング堂々の一位だ。
「悲しくて泣いてんのか、痛くて泣いてんのかどっちなんだよ。」
振り絞って、ひきつって、嗚咽混じりのギリギリの声で僕は言う。
「守さんも俺を救ってくれたじゃないですか、今度は俺のターンですよ!今回だけじゃなく、生涯俺の∞ターンですよ!」
また訳の分からないことを言う。でも何度この調子に助けられ励まされたことか、彼との過去を自然と振り返る。
彼と初めて会ったのは一年前の夏。大悟(だいご)さんに連れられ訪れた古い市民体育館でのこと。
こんなところで筋トレしてる奴なんて、余程のドMか筋トレのし過ぎで脳まで筋肉になってしまった人の二択だと思っていた。
案の定顔を真っ赤にしてベンチプレス(鉄の棒の両端に重りを取り付け、その下に潜り込み持ち上げるというトレーニング)をしている男(後の和人)を見て、守はこの説を確信した。
大悟さんが何の用事か知らないが、受付の方と話している間に「お前も少しは体動かしてこい」と言われ、軽いジョギング感覚でランニングマシーンを使用していた。
見知らぬ男と狭い室内で二人、普段なら有り得ない状況だが不思議と嫌な気持ちはしなかった。
男は相変わらずベンチプレスをしている。
重りの数が徐々に多くなっている、大きな円盤に小さな円盤が連なってスタッキングタワーみたいになっている(笑)
僕は興味本位で重りの計算をし始めた。
片方に重りが1、2、3個。重さが30、15、10kg合わせて55kg、反対も合わせて110kg!?
信じられなかった、僕なら押しつぶされて死んでしまう。110kgを持ち上げるビックリ人間を背中に僕は汗を流していた。
「ゔぅ」鈍い声がどこからか聞こえた。
後ろを振り向くと驚愕、もう二度とこんな光景は見たくないと心から思った。
大男の首に110kgがのしかかっている。
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