第61話「案件コラボ」

「というわけで案件コラボをやることになったぞ」


 と開口一番、リスナーたちに告げる。


【コメント】

:どういうわけだよw

:説明は一応しろよw

:公式や他メンの説明見てないとわかんないだろw

:いつもの鳥節だった

:鳥さんがていねいな説明をしたらそっちが驚き

:まあ鳥さんだもんね……

:↑理解を通り越して悟りの境地に入ってないか?

:悟りの境地草

:ウォッチャーやってればそうなるさ

:これはこれで個性があってよき

:鳥って素朴で真面目なようだけど、何だかんだ配信者だよな

:没個性になりそうでならないラインを歩いてるな



 コメントがさっそく盛り上がってる。


 正直なところそろそろあいさつとかやったほうがいいのでは? と猫島さんに相談したことはあった。


 ところが「今のままでいってみましょう」というのがあの人の判断だった。

 たしかに好意的な反応が並んでるので気にしなくてもいいかな?


「というわけでコラボなんだが、ゲームタイトルは【アスレチックジャングル】。八人までで遊べるミンタカさんってメーカーのソフトだよ」


 話を続けていく。


【コメント】

:知らないな

:大手じゃないの?

:主にアクションゲーを出してるところだね

:大手から案件はまだ来ないだろうな、ペガサス……

:ビスケスですら大手案件はほぼないしね


「俺じゃ上手く説明できない気がしてるから、モルモかボア先輩の話を聞いたほうがいいかもな」


 説明上手と言えばモルモ、ラミア先輩、それからラビ、ボア先輩だろうか。


【コメント】

:コラボ相手に丸投げw

:この鳥、マジで鳥だなw

:自分の欠点を理解して、得意な人に任せるのはアリ

:適材適所って言葉もあるからね

:複数の窓を見てて忙しいw

:誰がホストなのかくらいは知りたいんだが?



 コメントを見ていてなるほどと思ったので、拾うことにする。


「ああ、そうだね。ホストはボア先輩だよ。あの人がやるのがたぶん一番安定するからね」


 俺だとまだちょっといろいろと怖い面があるからボア先輩がベストだ。



【コメント】

:ボアちゃんなら安心だな

:鳥だとまだこわさがあるかな?

:二期生推しはともかく一期生推しはまだ微妙だろ

:いつか鳥さんホストでコラボできるようになったらいいね



 まあしばらくは無理だろう。


「いや、俺にホストが務まるのかって根本的な問題があるし、そっちはたぶん解決したいと思うぞ」


 重要なのはこっちの理由のほうだから。


【コメント】

:開き直んなw

:自覚してるのはえらい

:これも鳥さんの魅力のうちだから…

:自覚しててえらい  ¥2000

:鳥さんなりに頑張ってる  ¥500

:今の投げるところだったか?

:さすが歴戦のバードウォッチャーは違うな…



 うん、まあ俺も今スパチャ来るタイミングだったか? とは思ったね。


「スパチャありがとうございます。でも今は投げるところじゃないって、実は俺も同じ意見だったりするよ。お金は大事にしてほしい」


 と言っておく。


【コメント】

:スパチャは投げたいときに投げるものだとわからせる  ¥10000

:スパチャは投げたいときに投げるものだとわからせる  ¥10000

:スパチャは投げたいときに投げるものだとわからせる  ¥10000

:おっ、わからせネキだな



「あ、はい。わかりました。投げたいときに投げてもらえれば、それでいいです」


 金の力は偉大である。

 逆らっちゃいけないといやでもわかってしまった。


【コメント】

:わからせられる鳥に草

:一瞬で負けてしまう鳥w

:金は強いな

:わかってくれたようで何より 



 見覚えのある名前の人に言われる。


「あ、はい。とりあえずゲームに戻ろうと思う」


 ここは戦術的転進ってやつだな。


【コメント】

:逃げたw

:ここは逃げの一手

:勝てないと思ったら逃げるのはえらい

:逃走は生き残るための手段だからね

:バードウォッチャー、相変わらず優しいな

:優しい世界がここにある


『それじゃあみんな揃ったから、簡単に説明をしていくよー』


 画面の向こうでボア先輩が発言する。

 

『もう知ってるかもしれないけど、【アスレチックジャングル】は最大八人までで遊べるオンラインゲームだよ。今回はペガサスの六人でやってみるよ!』


 ゲーム画面が左側に表記されていた。

 

『じゃあ操作するキャラクターを最初に選んでいくね』


 ラミア先輩、ヘーファル先輩、ラビ、モルモ、ボア先輩、最後に俺という順番で選んでいく。


 これは事前の話し合いで決めていたことだ。


 年功序列的な意味合いで1期生から、あとゲームの実力的にボア先輩と俺が最後にという感じ。


「俺やボア先輩は何を使っても強いよねって判断であと回しにされました。練習するまではそんな強くないんだけど、レディーファーストかな」


 としゃべる。


「一応言っておくとどんなときでも強いって思われると困るだけで、先を譲るのがいやってわけじゃないよ」


 そして話しながら気づいた説明をつけ足す。

 子どもみたいなワガママを言うつもりはけっしてない。


【コメント】

:知ってる

:鳥さんはそんな人じゃない

:ついでに言えばどのキャラ使っても強いタイプでしょ

:うん、キャラを選ぶタイプじゃないだろうね

:最後に回された理由、わからなくもないよね



「あれ? 何か思ってたのと反応が違う」


 もうちょっと俺の味方をしてくれるような意見が来ると期待していた。


【コメント】

:いやこれまでのことを考えろよw

:さんざん無双してきた結果だからね…

:鳥さんより上手いプレイヤー、すくなくともV界隈にいないでしょ

:無自覚なのもいいんだけどね



 ううん、何か褒められまくってる……別に褒められたいわけじゃないのに。


『はいはい。リスナーと盛り上がるのもいいけど、ゲームのことは忘れないでね!』


 ボア先輩の明るい言葉で意識を引き戻される。


「あ、すみません」


 と謝るとリスコードとコメント欄で笑いが起こった。


『まあバードだしね。いつものことですよ』


 モルモの言葉は俺に対するフォローでいいんだろうか?


『そこがバードくんらしいところです』


 ラビのほうは素直にフォローだと受け止められるんだけどなあ。


【コメント】

:お、2期生てぇてぇかな?

:モルモちゃん、フォローしてるようでしてない気がするw

:ラビちゃんはしっかりフォローしてるね

:いや、言うほどフォローなってなくない?

:肯定してるけどフォローはしていないみたいなw


 

 そうだよな。 

 モルモもラビも別にフォローしてくれたわけじゃないってのは同意見だ。


「ふたりは何だかそういうところあるけど、この話はまた今度にしよう。先輩たちを待たせてるからね」


 三人だけのコラボだったらもっと話を転がせるんだけど、今日はそういうわけにもいかない。


『お気遣いどうもありがとうね! 2期てぇてぇを邪魔しちゃったみたいで悪いけど、今日は案件だから! お仕事優先だから!』


 とボア先輩が明るく笑いながらしゃべる。

 イエスマム、と答えればいいのかな? と迷ってるうちに彼女は言葉をつむぐ。


『どんなゲームなのかはわたしたちがプレイしてるところを見てもらったほうが早いかなー! 協力プレイと妨害プレイがあるんだけど、今日は協力プレイだけやるつもりだよ!』


 とボア先輩が話す。


【コメント】

:妨害アリだと鳥とボアちゃんが強いからだろうな…

:鳥は遠慮するかもだけど、ボアちゃんは容赦しないぞ

:ゲーム苦手な子もいるから阿鼻叫喚まったなし

:案件でそんな展開はあんまりよくないな

:↑だからやらないんだろ

:鳥が味方なら安心安全


「そうだな。みんなに安心してもらえるように頑張るよ」


 俺の役目はゲームが得意じゃない人たちのフォローをすることだと考えている。

 ボア先輩とふたりで四人の援護をするなら、それなりの結果を得られるだろう。


 事前に情報を軽く調べた範囲だと、ゲーム難易度が鬼畜なメーカーってわけじゃなさそうだった。

 

 そんなゲームを案件で持ってくるというのはなかなか考えられないけど、念のためだ。


『じゃあ最初のステージだねー。実はみんな練習してないから、どうなるかわからないんだよね!』


 とボア先輩が暴露する。


【コメント】

:え、マジで?

:初見プレイなの?

:こそ練してないの?


 

 コメント欄がざわめきはじめたので、拾っておこう。


「他の人はわからないけど、俺は完全に初見だよ。一応操作できるキャラクターの特徴くらいは見たけどね」


 さすがにそれすら知らずにプレイするのは、ミンタカにとって失礼な結果になるリスクがあると判断したからだ。


【コメント】

:こそ練するかどうかは各自の自由ってことか

:鳥はやらなくても何とかしそうだな……

:鳥とボアちゃんはいけるでしょ。他メンは知らん

:ゲームが得意じゃない子は練習してたかもね




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待たせてごめんなさい&待っててくれてありがとうの連続更新です


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