第7話「(自称)大したことがないゲーム配信続き」

『連絡とれる知り合いなんてボア先輩と、そのフレくらいだけどな』


 ボア先輩だけと言うのは何かまずい気がして、とっさに言い方を変える。


【コメント】

:ぼっちアピールかな?

:天然鳥さんにそんなこと思いつくとは思えない

:戦略とか考えてなさそう

:公式ならマネージャーがついてて、戦略考えてくれるだろ?

:たぶん鳥は素でやらされてるな

:演技とか台本通りとかできるイメージがないもんね

:さすがにそれはないでしょ。公式だよ?


 何かいろいろ言われてるなぁ。

 台本もらってないし、戦略もゲーム配信としか言われてないのはそのとおりだ。


 みんなが鋭いのか、俺がわかりやすいのかどっちだろう。

 ……もしかしてと思ったんだが、両方だったりする?


『とりあえずゲームを起動させよう。フレンドすくないから、そんなにランク高くないけどな』


 と語った。

 頂上戦争にはプレイヤーランキング制度がある。


 大事なのは勝利数で、多いほどランキングがあがりやすい。


【コメント】

:本当かな?

:ダウト

:鳥さん基準で高くないってオチなんでは?

:みんなそう思ってるだろうよ

:もしかしたら本当にランク高くないかもしれないじゃないか

:まあ可能性はゼロじゃないよな、いまのところ


 何かみんな俺のランクが高くないってことに半信半疑だな。

 否定的な人もいるようだ。


『俺のいまのランクはマスターだよ』


 マスターは上から二番目である。

 一番上はモナークで、三番目がロードというランクシステムだ。


【コメント】

:はい、やっぱり大したことがない詐欺でした

:予想どおりだな

:ここまでくるとそういう台本かなって思う

:メタな発言はひかえよう

:すごいのかすごくないのかわかんない

:頂上戦争の世界プレイ人口は7000万を超えている

:マスターになれるプレイヤーは上位0.2%から0.3%と言われている

:トップのモナーク、二番目のマスターは特別って運営方針だから、人数に上限あるし戦績悪いと下のランクと入れ替えられるんだよね

:マスターのランクを維持できてる時点でバケモノ確定


『同ランクのプレイヤー、10万人はいるはずだから』


 と言い訳してみる。

 だからそこまでじゃないと思うんだ。


 トップの「モナーク」は400人限定だし。

 選ばれし真の強者の400人って感じでカッコイイよな。


【コメント】

:素で言ってるんだろうなあ

:鳥さんだし素なんだろうね

:7000万人中で10万台ってやばいだろうよ!

:モナークのプレイヤーはもう人外だからな

:マスターも充分人間やめてるよ



 なんてコメント欄が来る。

 そんなものかな……まあゲームが苦手な人にはそう見えるのかも?


 とりあえずゲームをはじめよう。


『仲間を補充せずにプレイをさせてもらう』


 いつもやっていることだ。

 仲間はランダム補充だと誰が来るかわからないので、リスキーだったりする。


 強い人が確定で来るならソロでやる必要ないんだが。


【コメント】

:やはりソロでマスターランクだったか

:鬼畜の代名詞のはずなんだけどね……

:もう驚かない

:驚きすぎて驚く機能が壊れたわ

:まあ待ち合わせなしだとそうそう知り合いと組めないでしょ

:当たりはずれ多すぎるよ

:ソロでマスターなのがやばいんだよ、気づいて

:?? マッチングって同ランク帯で決まるんじゃないの?

:↑普通はそう思うだろ? 残念、完全ランダムです

:味方ふたりは格下、敵は三人と同ランクなんて鬼みたいな展開あるあるだからな

:まじ? クソゲーじゃん

:頼りになるフレがいないプレイヤーが不利になるゲーム

:逆に何で鳥は高ランクなんですかねえ

:そりゃ鳥がやべーやつだからだろ

:まだはじまってないのにすでにオチが出てて草


 とりあえずダブル、ふたりぐみのプレイヤーと合流させられる。

 だが、彼らは仲間じゃないので、助けてもアシストポイントはもらえない。


 お互いを囮にしたり、漁夫の利を狙うために利用し合ったりする仲となる。

 そして最後の三人になった場合は殺し合う関係だ。


 いますぐ撃ちあうのは敵を呼び寄せるだけだからやらないんだが。


【コメント】

:ルールはだいたいそんな感じ

:へー、ありがとう

:ソロは圧倒的に不利なんだな……

:そりゃ自分が撃破した数と最後のひとりになって生存点とるしか、ポイントを稼げないからな

:チームプレイだとアシストポイントが加算されるし、仲間の誰かが最後に立ってるだけで自分も生存点ももらえる


 コメント欄でもルール説明があったようだ。

 ソロの立ち回りの基本は誰かが戦ってるところに横槍を入れること。


 そして囲まれないことの二つかな。


 障害物に隠れながら移動していると、交戦をはじめたチームがあったので、遠くから狙撃しよう。


 ヘルメットに当てるとダメージ軽減させられてしまうので、そのすぐ下をピンポイントで狙う。

 

 一発撃って撃破1、それから続けて撃って2撃破だ。


『いきなり2撃破は幸先がいいな』


 と言う。

 ゲーム配信だから一応何か言わないといけないんだよな。


 うっかり忘れそうになるけど。


【コメント】

:ちょっと待って

:さらっとヘッドショットで即死させんな

:2発撃って2撃破ってウソだろ……

:どっかの漫画の理不尽系ラスボスか?


 コメント欄が何か驚いてる。

 俺のプレイでもう驚かないって言ってたのにな。


『ヘッドショットのコツは、ヘルメットに当てないようにすることだよ』


 即死させないとソロの場合、反撃される危険がすごく高い。


『即死させたら決着がつくし、残ったほうは警戒して寄ってこないからな。ミスると舐められて集中砲火を受けやすくなる』


 ソロで戦っていくコツは「下手にこいつに近づくと即死がある」と警戒されることにあると思う。


 最後まで生き残って生存ボーナスを目指すなら、強敵はあと回しにする。

 あるいは集団で袋叩きにするのがセオリーじゃないだろうか。


 そういう意味で序盤で目立ちすぎたらいけない。

 集中砲火を浴びやすくなってしまうのだ。


【コメント】

:何言ってんのこの鳥

:言ってる理屈はわかるけど、解説になってねえぞ

:どうやったらそれができるのか? が抜け落ちてる


『俺も昔は立ち回り下手だったぞ? すぐに集中砲火浴びて撃破されたからな。立ち回りを学習して、中盤まではほどほどにするのがいいんだ』


 と話す。

 序盤セーブするとたしかに撃破数を稼ぎづらくなる。


 だが、集中砲火で早めに落とされるよりは終盤まで生き残ってたほうが、トータルでは稼げるのだ。


『終盤まで残っていれば生存点をとれるチャンスもあるしな』


 ソロで生存点をとるのはかなり難しい。

 ダウンさせられたとき助けてくれる仲間がいないから。


 それでもゼロじゃなくなるってのは重要だ。


【コメント】

:は? ソロで生存点?

:何言ってるんだ、この配信者?

:またまた御冗談を

:寝言は寝て言ってほしいよね……

:激ヤバ鳥だけに冗談だと切り捨てられないのが怖い


 何かコメント欄が変な方向にいってるな。

 おっと、やばいからゲームに集中しよう。


 射線を通せるチームが現れたのでそそくさとその場を離れる。

 ほかにも手ごろそうな相手がいるせいか、無理に追ってこなかった。


『まだそんなにチーム数が減ってないから、特定の相手にかまけるのは危険な状態だしな』


 まあわかる人もいるだろうけど、一応話しておく。


【コメント】

:言ってることは間違いじゃない

:こういうとこだけまともなのか

:まあソロでマスターランクいくなら、これくらいはできないとな

:射程に入ってた瞬間射線を切られたら、相手は無理に詰めてこない

:まだ序盤だしな



 さて身を隠しながら漁夫の利を狙っていこうと思う。

 こっそり動き回っていると、右サイドで交戦しているチームを発見する。


 どっちもいい感じに削り合っているようだ。

 これは下手に均衡を崩すのもなぁ。


 ということで銃を二丁取り出して、左右のチーム両方を狙撃する。

 左はヘルメットのすぐ下にきれいに着弾したが、右はすこしずれてしまった。


 どちらも即死させられたのでよしとしよう。


【コメント】

:はぁぁあああああ!?

:初めて見た、二丁撃ち……

:てか両方即死させやがったぞ、この鳥

:いや、たぶん両方いい感じに体力減ってたんだよ、そのはずだよ

:何をしたのかさっぱりワカラナイ

:この鳥いろいろとオカシイと思っていたが、やはりオカシイ


 コメント欄がいい感じでわいている。

 

『左はともかく右は体力減ってなかったら死んでなかっただろう。俺もまだまだだよな』

 

 と発言した。

 それだけ二丁撃ちは難しいとは言え、だ。


 こんなんじゃプロゲーマーの世界で勝ち残れない気がする。

 とりあえず居場所がばれたのでここは逃げよう。


 最初倒したチームより手ごわい感じがするから、ぐずぐずしないほうがいいな。


【コメント】

:なんて見事な逃げっぷり

:生存ボーナスとりたいなら、逃走能力は必須レベル

:囲まれないって大事だよな

:視界の外から狙撃されるのは普通だからな



『逃走能力は大事だよね。俺は昔囲まれやすかったから、囲まれないための立ち回りを頑張って覚えたよ』


 と語る。

 こう言えば理解されやすいんじゃないかと期待した。


 おっと、交戦してない敵と遭遇しそうだ。

 遮蔽物に隠れて様子見をしよう。


【コメント】

:言ってることはおかしくないけど、やってることがおかしい

:立ち回りど下手じゃないかぎり包囲されなくね?

:普通は2対1、3対1なら余裕で落とせるからな

:囲む必要がないんだよな

:下手すぎて敵の真ん中に出てたのか、強いけど立ち回りが下手だったから囲まれたのか

:↑鳥のことだし後者じゃないかな

:いくら鳥でも最初から強かったわけじゃないだろうに


 

 ちらちらコメント欄を見ていたら敵チームに発見されてしまったので、仕方なく交戦する。


 まずは顔面を撃ちぬいてひとり撃破。

 何発か被弾しながら、さらにもうひとり首を撃ちぬいて撃破。


 最後のひとりになったところで、横から漁夫の利狙いのチームに落とされる。

 これはちょっとまずいかも。


『もうすこし被弾せずにいきたかったんだけどなぁ』


 ソロの限界と言うべきだろうか。

 どうしても運が絡んでくるしな。


 画面右上に出る残りプレイヤー数は19になっている。

 単純な計算だと俺と6チームってところか。


 ダブルが残ってる可能性もあるけど、あえて考慮しないでおこう。


『そろそろ勝負どころだな』


 ソロで残ってる俺を狙いやすいと思ってくるのか、ソロならいつでも勝てると思ってあと回しにされるのか。


『撃破数が多いとここで全員に狙われるという事態になる。3対1ならともかく18対1で勝てるゲームじゃないからな』


 と解説する。


【コメント】

:なるほどそうだったのか……??

:マークされないって大事なのね

:いやいやいや、これ3対1なら勝てるってゲームじゃねえから!?

:何でひとりだけ無双系ゲームなんですかねえええ!?!?

:3対1だったのに2人倒して返り討ちにしてたの、普通におかしいからな!?

:↑普通、あそこでボコボコにされて落ちるんだよなあ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る