第6話「記念配信ラッシュ②」

『何とか怖凶竜を討伐した。ノーミスクリアはスリルがあっていいよね』


 勝てる自信はあったけど、一回もミスしないかどうかはさすがに運が絡む。

 ウルトラ級は最高難易度だけに事故が起きる確率があるのだ。


【コメント】

:おいおいマジかよ

:本当にノーミスで倒しちゃったぞ

:怖凶竜のウルトラ級、ノーミスでやれるものなんだな

:装備とスキル次第でいけるものだけど、この鳥使ってないからな…

:↑とんでもねえってのはそこなんだよな

:とんでもねえものが見られる枠

:アップされてたプレイ動画、あれって編集とかじゃなかったのか

:リアルタイム配信じゃごまかしようがないもんな

:編集してる奴はいるかもしれないが、しなくてもできる奴はいると証明

:すくなくともこの鳥さんならできてしまう

:狩りの腕がウルトラ級

:発想のおかしさもウルトラ級

:草

:ウルトラバードだな


 何か変な展開になってきた気がする。

 思ってたの違う。


 でも視聴者数は増えてるからいいのか?


【コメント】

:すごいもの見せてくれた代 ¥3000

:ウルトラ料金    ¥2000

:お布施しておこう  ¥3000

:やばかったので  ¥881

:討伐料金   ¥1000

:怖凶竜討伐報酬  ¥5000


 スパチャがいろいろと飛んでくる。

 うん、やっぱりよかったんだな。


 時間を見てみたら中途半端に余っている。


『しまったな、時間がまだ残っている。もう一回クエストできそう』


 そういう意味じゃ怖凶竜を選んだのは失敗だったかもしれない。


【コメント】

;時間マネジメントヘタクソか

:まだ二回目の配信だしな

:バスターとしての腕はヤバいが、配信は初心者

:どうしてもっといい感じのクエストを選ばなかったんだ

:ゲームは上手いのに……


 どうしてって言われてもなあ。

 理由はメチャクチャ単純だぞ。


『配信枠いっぱい使うほど時間がかかるクリーチャーがいないんだよ』


 だいたいどれをソロで狩っても、時間は余ってしまう。

 だったら視聴者の反応が期待できるやつにしようと思ったんだよな。


 詳しい人なら理解してくれそうなもんだが??


【コメント】

:知ってた

:あれだけ頭オカシイスキルだとそうなるよな

:そんな予感はあった

:強すぎるのも困るわけか

:ウルトラ級ソロを防具とスキルなしでやって、30分かからないってどう考えてもやばいんだけど……

:30分以上かかるのが普通、何なら制限時間ギリギリもある

:何だかこっちの感覚がマヒしてきそう  ¥2000

:わかる。怖凶竜ってそんな短い時間で狩れるクリーチャーじゃないよね

:ウルトラ級はとくにな


『頑張ったらできるようになるよ?』


 大事なのは練習をいっぱいすることだと思う。


【コメント】

:出たよ、天然

:素で言ってるんだよね

:廃人ってやつか


 なぜか廃人扱いされはじめたようだ。

 首をひねりたくなるけど、とりあえず次のクエストをやろう。


 あんまり時間はないんだよな。

 

『サクッと終わらせるとなると、グレート級かな。フル装備でやれば3分で終わるかもだし』


 5分以上かかりそうなクリーチャーは念のためパスしよう。

 体力が低めに設定されている獣系のクリーチャーがいいな。


【コメント】

:またまたさらっとトンデモ発言を……

:普通はグレート級ソロで倒すのに10分くらいかかるんだよ!!

:天然鳥さんまじ天然鳥さん

:グレート級ソロってどうなの? と聞こうと思ったらすでにやばかった

:さすがにウルトラ級より難易度は低いけど、それにしてもね


『あれ、意外とざわついているな。ウルトラ級ソロよりは簡単だから、なーんだと言われると思ったんだが』


 がっかりされるんじゃないかなって心配はちょっとあった。

 コメント欄見たかぎりだと大丈夫そうなんだが。


【コメント】

:そんなわけねーだろ!!

:自分が何を言ってるのか、何をやろうとしてんのかわかってない鳥

:意外とポンコツだな

:ポンコツというか天然

:天然記念物だな

:天然記念鳥かよ

:草

:珍獣扱いになってて草


 俺は珍獣なのか……?

 いや、きらわれるよりはよっぽどいいや。


『とりあえずグレード級ソロ、討伐対象は氷虎獣二頭にしようか』


 二頭同時にすると一頭あたりの体力が減るので、討伐難易度が下がるのだ。

 氷虎獣だとそこまで同時に戦う頻度が高くないしわりとおススメの部類だろう。


【コメント】

:はい、やはり飛び出しました、問題発言

:氷虎獣って状態異常攻撃がウザすぎるあのクリーチャーだよな

:そりゃ二頭同時だとたしかに体力は減りますけどね……

:そんなことだろうと思った

:とんでもねえ発言ととんでもねえプレイをせずにはいられないのか?

:これが素なんだろうな

:さすが公式ライバーだな


 コメント欄の反応が正直解せない。


『怖凶竜は狙ったけど、氷虎獣のほうはべつに……攻撃を食らわなかったらいいだけなんだし、練習すればいけるだろ?』


 と言いながらとりあえず準備を整える。


 昨日と今日の配信で一発も被弾してないんだから、わかってもらえそうなもんだが。


 それともこの考え方もどこかズレてたりするんだろうか?

 

【コメント】

:何かそう言い切られるとこっちもおやって思ってしまう

:どう考えても俺らの反応が一般的なはずなのに

:氷虎獣はたしかに被弾しなきゃ怖くないけど、それって全部のクリーチャーに言えることですよね??

:一発も被弾しないことがきついってことにまず気づいて

:↑ほんそれ

:練習したってことは、昔はできなかったはずなのにね?

:↑ほんそれ


 とりあえずツッコミを受けてることだけは理解できた。

 何でだろうなぁ? と首をかしげながらプレイをする。


『まあいいや。時間がもったいないのでサクッと氷虎獣を討伐しよう。短時間討伐狙いだけど、大して強くないからスキルはナシの方向で』


 注目を集めるためのプレイじゃなくて、時間を消費するためのプレイだけど。

 氷虎獣ならそこまでガチじゃなくても勝てるもんな。


【コメント】

:だからそんな適当で勝てるクリーチャーじゃないと

:グレート級って普通にかなり難しいクエストなんだが

:この配信見た初心者、絶対勘違いするだろ

:一周まわって勘違いしないかもしれない

:何回言っても全然伝わってる感じがしないよね…

:そう言えば鳥のガチ装備、まだ一度も見たことがない

:必要ないからじゃない?

:怖凶竜にあのプレイで勝てるなら、そりゃ必要ないよな…

:一応装備必要そうなクリーチャーはいるけどね

:怖凶竜より強い奴いるし


 コメント欄をチラ見してスタートする。

 今回はすぐにクリーチャーと遭遇できないパターンだった。


 まあこういうほうが多いし、氷虎獣がいるエリアは頭に入っている。

 ダッシュで探していると無事に発見した。


『発見。今回は二刀流なので、高速狩りいけると思う」


 と実況がてら話す。


【コメント】

:は? 毎度高速狩りを見せられているんだが?

:装備考えりゃ討伐速度が頭オカシイのは明らか

:いままでもたついてるって自覚あったの?

:あるなら装備ちゃんとしていけ


 あれ? 何だか思ってたの反応が違う。

 いや、それはいつものことか?


 すくなくともクリバス関連で、コメント欄が予想どおりだったことはない。

 なら気にしなくてもいいか。


『氷虎獣の討伐方法。まず攻撃をこうしてかわして、左から回り込む。足を狙ってラッシュ攻撃を叩き込む。反撃が来るから回避して、ラッシュを叩き込む』


 見てればわかると思うんだけど、念のため解説を入れてみる。


 初心者にわかりやすいかどうかわからないけど、映像だけよりはマシだろうと思って。


【コメント】

:あのさ、言いたいことはわかるんだけどさ

:ようやくちょっとはまともな実況はじめたところ悪いんだけどさ

:それができりゃ苦労しねーんだよって説明になってんぞ

:↑草

:統率のとれ方に草

:初配信からまだ60分たってないのに、早くも息ぴったりだね

:こんなの見せられたらそりゃ言いたいことは統一されるよ……

:言いたいことと言うか、ツッコミと言うか

:鳥のプレイを見て楽しむなのか、鳥のプレイにツッコミを入れる枠なのか

:↑ゲーム詳しくない人は前者、詳しい人は後者

:一枠で二度おいしい枠なんですね(棒読み)


 氷虎獣グレート級相手なら、コメント欄をチラ見するくらいの余裕はある。

 だからみんなにまたつっこまれることは何となくわかった。


 おっかしいな。

 俺ってどこにでもいる普通のぼっちだと思っていたんだけど。


『はい、逃げ出したね。もう捕獲するだけなんで、捕獲します』


 倒したほうが早い場合もあるんだけど、氷虎獣の場合は微妙だ。

 時間を見るかぎり、クエストが完了してゲームを終えればちょうどいい感じかな。


 予想どおりの展開になったのでちょっと満足。


『いろいろあったけど、まあいい感じの時間配分になったんじゃないかな』


 と自己分析する。


【コメント】

:ただの結果論のように思える

:終わりよければよしでいいんじゃないかな

:ちゃんとゲーム中心の配信だったし

:実況とは言ってないもんね、そう言えば

:ガバった感はなきにしもあらずだけど、調整用クエストで調整できたのはさすが

:イケボだから実況も聞いてみたい

:いいね、実況

:慣れてない感が初々しくてよかった

:↑たぶん参考にならねえぞ

:この鳥、練習すればできるのに何でできないんだって思ってそうだからな

:それな

:大丈夫、参考にできるなんて思ってないから

:草

:それは草

:まあコメント欄見てたら、初心者でもそう思いそうだよね


 反応は悪くないな。

 実況の需要はあんまりなさそうだけど、うーんどうしよう。


『そろそろ次の枠の告知をしたほうがいいのかな。まだ聞いてくれる人いる?』


 さすがにみんないなくなるってことはないだろうが、一応聞いてみた。


【コメント】

:いるから告知して

:次は何やるの?

:鳥のスキル考えたらシューティング系かアクション系かな

:PSが物を言うゲームならだいたい強そう

:運が物を言うゲームだと逆に弱いのかな


 興味ありそうな反応が多いな。

 じゃあ言ってもいいか、残りあとちょっとになったし。


『次は頂上戦争ってパソコンゲームをやるよ。3対3で戦うあれ』


 これで伝わるかな?

 

【コメント】

:あれかー、いまめっちゃ盛り上がってるよな

:海外はともかく日本でもすっかり定着したよな

:あれってチーム戦だろ? ぼっちの主、どうするの?

:オンラインで仲間集められる仕様だから、ぼっちにも優しいよ

:なお、仲間は選べない

:上手い人と組めるとはかぎらない

:事前にチャットやSNSで連絡とり合えば、知り合いと組めるんだけどね


 そうなんだよな。

 ぼっちの俺にとってはありがたい仕様だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る