第5話「記念配信ラッシュ」

 ツブヤイターで告知しておき、いよいよ記念配信の時間になった。

 正直まだ感情が現実に追い付いていない。


『こんばんは。いろいろあってあいさつ結局決めてないけど、まあいいかなと思っている』


【コメント】

:適当w

:相変わらずで草

:こんなやつがバズったってマジ?

:まあトークと関係ないですし

:ゲームスキルとラチカちゃんツブヤキがほぼ100%だからな

:ラチカちゃんツブヤキで知りました、オカシイと思いました

:草

:まあ言いたいことはわかるよ

:視聴者数がもう3000超えてるな


 コメントがさっそくつくけど、いまのところ受け入れられているようだ。

 うん? 視聴者数3000?


『朝マネージャーさんから連絡来てびびったよ。大丈夫なのか、俺? てか視聴者数この段階で3000超えってマジ?』


【コメント】

:他人ごとだな

:現実味がないのは何となくイメージできる

:はじまってすぐ3000超えるのはかなり有望

:現実味ないのはまず主のゲームスキルだろ

:いやあれは廃人ならできる人ほかにもいるよ、たぶん


『うん、できる人いるはずだよ。野良プレイだとまれに見るし』


 あんまり会わないのも事実だ。

 ソロ中心なのはそういう理由でもある。


【コメント】

:まれなんかい

:それはそうだろう

:あんなバケモノ、ざらにいてたまるか


 あれ、何だか俺バケモノ扱いされている気がするぞ?

 首をかしげたくなったが、そのまま配信を続行する。


 告知はしたけど、配信中でも一応はやったほうがいいみたいだから。


『今日は何とちゃんねる登録者数5万人記念、10万人記念、20万人記念を一気にやることになった。やったね』


 と報告する。


【コメント】

:感情こもってなくて草

:他人ごとっぽいよな

:やけくそ感もちょっとある

:公式やってるなら金目当てなんだろうし、素直に喜べよ


 

 コメント欄の反応を見てああ、そうだなと気づかされる。


『そう言えば俺、ゲーミングパソコンと椅子がほしかったんだった』


 忘れていた。


 というか収益化なんて簡単にできるはずがないと思っていたので、吹っ飛んじゃったんだよな。


【コメント】

:忘れてたんかい

:草

:相変わらずのテンションね

:ゲーマーならやっぱりそのへんはほしいよな

:あんだけ強いのに持ってないのか?

:声からして主はけっこう若いしな

:詮索はタブーだぞ、やめれ

:思ってても言うなよ


 どうやら俺の実年齢、何となくだがばれているらしい。

 まあ年齢はどうしても隠さなきゃいけないものじゃない。


 住所や本名はばれないようにしなきゃだけど。


『やっぱり快適にプレイしたいからね。お金がたまったら買おう』


【コメント】

:ご祝儀 ¥5000

:応援してます ¥3000

:観戦代 ¥1000


『おお、これがうわざのスパチャか。どうもありがとう』


 収益化してさっそく投げ銭をしてくれる人が出るとは思わなかった。


 たしかスパチャ(投げ銭)は3割がWithTubeの取り分、2割が運営、で残り5割が俺の報酬だって説明があったな。


【コメント】

:何か淡白だな ¥1000

:そっけなくて草

:もっと喜んで ¥10000

:もっと喜んで ¥10000

:もっと喜んで ¥10000

:草

:鳥をわからせるスパチャ ¥10000

:草


「うええ!? ありがとうございます!?」


 いきなり一万円が投げられるとは思ってなかったから、声がうわずった。

 わからせるって何だよ?


 いや、たしかにまだ何もわかってないとは思うが。


『とりあえずゲームをやっていくことになっている。マネージャーさんと相談したら、普段やってることやればいいんじゃないかって結論が出た』


 と説明する。


【コメント】

:あの変態プレイ、いつもやってんのか

:素でバケモンなのか

;そりゃこの鳥、自分の何がオカシイのか明らかにわかってなかったから

:あれが鳥さん基準で普通なんだなってのはイメージしやすいよね

:まあそれくらいじゃないとあそこまで上手くはならないよ

:ウルトラ級、ノーミスってかなりやばいもんね


 何気におかしいおかしい連呼されてるな。

 ゲームあまりやらない人にとってはそうなんだろうか。


 首をひねりたくなるけど、だから自分が稼げるチャンスがあると考えようか。


『前回と同じようなプレイを見せればいいらしいので、ちょっと怖凶竜ウルトラ級の討伐をソロでやってみようと思う』


 と予告してゲームを起動させ、準備をはじめる。


【コメント】

:ちょっと!?

:怖凶竜のウルトラ級ってソロで勝てるんだっけ?

:軽いな

:知らない人は難易度低いって誤解しそう

:勝てなくはないが、めちゃくちゃしんどいぞあいつ

:あれ四人で狩る用のクリーチャーだろ?

:すくなくともイエチカのコンビニに行くノリで狩れる相手じゃないよね

:とんでもねえこと言ってるけど、やっぱり天然なんだな

:この時点ですでに頭オカシイ

:クリバス熟練者たちがすでにざわついてて草

:とりあえず相当難しいんだなということは雰囲気で察した


『慣れたらいけるよ』


 と言っておく。

 大事なのは練習量だ。


【コメント】

:あれを慣れるって時点でもうオカシイんだよな

:相変わらず天然トンデモ鳥

:言ってることはわかるんだけど、実現できるかは別問題だよね


 何だか思ってるのと反応が違っている。

 でもこの食い違いがあるからこそ見てくれる人はいるんだろう。


 何となくだけどそのことはわかってきたかもしれない。

 とりあえず戦う用の装備を視聴者に見せる。


『ガンナーで行こうと思う。もちろん防具なし』


 というと思っていたとおり反応はあった。


【コメント】

:ガンナー!? 怖凶竜をガンナー!?

:ウルトラ級怖凶竜をガンナーって、主はマゾなのか?

:予想どおり頭オカシイと言いたかったけど、予想を超えて頭オカシイ

:普通に考えるなら自爆ギャグプレイになるんだよね……

:どういうことなの?

:クリバス履修してない民、解説待ち

:怖凶竜はタフな上に銃攻撃に強い。おまけに遠距離攻撃が豊富

:ガンナー殺しってプレイヤーたちに言われてるクリーチャー

:ガンナー愛好者たちも怖凶竜と戦うときだけは装備変えるのがセオリー

:うわぁ……

:なるほど、だからそんな反応

:とにかく鳥の発想がやばいことだけは理解できた


 期待どおりコメント欄が盛り上がってる。

 こういうのを猫島さんや会社も狙っていただろう。


『攻略に時間はかかるけど、見ごたえはあるんじゃないかな』


 飽きる人がいないか、それだけが心配なんだよな。


【コメント】

:見ごたえってレベルじゃねーよ

:まず勝てるかどうかの心配をして……

:全然落ち着いているね。もしかして何度も倒してるの?

:ははは、まさか

:勝てる人いないとは言わないけどなあ

:みんな興味津々だな

:というより半信半疑?


 本当に勝てるのかと思われてるなら、大丈夫かな。

 

『よし決めた。不屈系スキルなしでいこう』


 これならさらに注目や関心を集めることができるだろう。 

 なんせミスできなくなるからな。


 正確には二回まではできるけど。


【コメント】

:はああああああああああああああ!?

:ふぁあああああああああああ

:やっぱりこの鳥、頭オカシイ

:異常を超えた異常

:すごいやオカシイを通り越して、正直かなり引く

:何を言ってるのかわかんねーけど、やべーことだけは何か伝わった


 うんうん、盛り上がりが加速している。

 こうやって盛り上げていけばいいんだな。


【コメント】

:今日は90分&記念コラボあるんでしょ? いまから飛ばして大丈夫?


 おっと、何やら心配してくれてるコメントが届いた。

 配信スケジュールを把握してるくらいだから、もしかしたら俺のファンかも?


『飛ばすも何も、マネージャーさんには平常どおりでいいって言われてるから、いつもやってることをやろうとしてるだけなんだよね』


 だから特別なことはやっていない。

 

『もちろん、最初が一番盛り上がったってだけの可能性もあるんで、三十分したら他のゲームに切り替えようかな』


 とちょっと説明した。

 これくらいなら言ってもかまわないだろう。


 配信予定のゲームを全部しゃべる人もいるらしいし。


【コメント】

:平常どおり……??????

:いつもやってること????

:何を言ってるのかわからないけど(以下略)

:ほんとこの鳥さんは天然だよね

:素でバーサーカーかよ

:言葉は通じ合ってるのに会話がかみ合ってない

:草

:他のゲームの予定もあるんだね

:他のゲームでも同じくらい上手いの?

;↑さすがにそれはないだろう

:いくらなんでもね……


 ざわついているが、とりあえず他のゲームもやるという告知はできた。


『じゃあ行くよ、ウルトラ級』


 クエストを受注して出発する。

 まずは怖凶竜を探すところからだけど、これは運よくすぐに見つかった。


 ならあとは狩るだけだ。

 距離をとって銃を取り出して弱点属性を撃っていく。


 攻撃が来たら回避し、距離をとって銃弾を撃ち込む。

 ひたすらこの作業のくり返しになる。


【コメント】

:あれ、怖凶竜がよろめくの早くない?

;このクリーチャー、銃弾には強いんじゃなかった?

:この鳥、全部クリティカル距離から銃弾撃ち込んでる……

:発想がやべえ奴は立ち回りがやばかった

:クリティカル距離?

:何それ?

:クリーチャーへのダメージ判定が1.2倍になる距離のこと

:銃弾に強いってのはダメージ判定が等倍って意味だから、全部クリティカル判定出せるなら、実質有利武器で殴ってるのと同じになる

:まあ有利武器なら1.2倍×1.2倍になるんだけど、いまは省略

:動き回る上に遠距離攻撃が多い怖凶竜相手に、ずっとクリティカルとかやばすぎる

:はっきり言って前回のプレイより今回のほうがやばい

:マジか

:バズった配信よりさらに上の段階があったなんて(ごくり)


 さすがに怖凶竜と戦ってるときにコメントを見る余裕はない。

 やがてマップ移動したので、ひと息ついて見てみたら盛り上がってる。


 これなら大丈夫だろう。


『じゃあ追いかけて仕留めに行く』


 一言言ってマップを移動してクリーチャーを追いかけた。


【コメント】

:ほんと平常運転なんだな

:淡々とプレイしてるもんね

:普通はもっとあせったり喜んだりするもんだが

:そういう路線で楽しむ配信じゃないだろう?

:そうそう、そういうのは他のライバーで間に合ってる

:この枠は鳥無双を楽しむためのもの

:オンリーワンだよね

:草

:まだ配信二回目なのにすでに悟ってるバードウォッチャーたちがいて草

:悟るしかないこの配信

:ここまで強いならライバーやらなくても食っていけそうだ

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