第3章
近辺調査により自分達の祖先に出会う
1
一方イアンは調査のためすでに出発していて、飛行船で西に向っていた。
【四人乗りでタイヤの無い乗用車のような乗り物】
百キロくらい飛んできたところで集落を見つけ、
ブナやモミの木が生えた、小さな山の開けた場所へ着陸して船を透明にして隠した。
周りを見渡して慎重に歩いていると、
山の麓(ふもと)に砦(とりで)と家の屋根のような物が見える、そのまま歩いていると、
後ろから女の声が聞こえて、振り向くと弓を構えた若い女がいた。
「お前は誰だ何をしている!」
イアンは驚いた、言葉の通じる自分たちと同じ人間がいる?
「私は旅の者で怪しい者ではない」
と言うと女は怪訝(けげん)な顔をしてじっと見つめている。
突然女の後ろにサーベルタイガーが現れた。
「後ろだ!危ない!」
と声を出すと、女はとっさに身をひるがえし弓を構えたまま、睨み合いになったがタイガーが襲い掛かりそうになった所で、イアンがレーザー銃を撃った。
【レーザー銃の威力は弱・中・強の3段階がある】
中で撃った光は螺旋(らせん)の円を描いてタイガーの首の辺りに命中すると、
ギャーッと叫んで飛び退き、そのまま尻尾を巻いて逃げていった。
女はその場に座り込んだ…
近づいていき、
「大丈夫か?」
女はこっちを見ながら小さく頷(うなず)いる。
しばらくして落ち着いたのか
「ありがとう」と言って微笑んで立上がった。
そして「あなたは変わった格好をして、凄い武器を持っているのね何者かしら?」
「僕の名前はイアン、遠い所から来て上司の命令でいろいろ調査に来たんだ」
「私の名前はニコル、何を調査したいの?」
「君たちの村や生活を見たい」
少し考えた後、
「いいわ助けてくれた御礼もあるし村に連れて行ってあげる」
「本当に?ありがたいな、お願いします」
二人は歩きながらイアンが尋ねた。
「ニコル、さっきは何故一人で山にいたの?」
「私は山菜と薬草を採りに行ってたの」
「そうだったんだ」
二人は会話しながら歩いていると門の前に着き、ニコルはそこに準備されている木の棒で、二重になった板を叩くとバンバンと大きな音が鳴った。
すると砦の上から男が顔を出し、にっこり笑って、
「ニコルちょっと待ってろ」
そして間もなく勝手口のドアが開くと、二人が中に入っていき、
「ジョイさん今日はお客さんを連れて来たからよろしくね」
「そうかそうか、ゆっくりしていくと良いよ」
と言うとまた上に登っていった。
2
「ジョイさんは家が一番近いから進んで門番してくれているの」
「優しそうな人だね」
と返事をしながら周りを見渡した、思っていたより広く、
井戸の周りで洗濯している女性や、囲いの中にヤギが数匹いて畑があり、
のどかで平和そうに感じた。
「ここの住人は何人くらいいるのかな?」
「三百人位かな、ここから2キロ位離れた場所にも別の集落があるよ」
「へーそうなんだ、住みやすそうで良い所だね」
「そうだよ、みんな良い人たちばかり、そうだ今からイアンを村長さんに紹介するね、初めて村に来た人は村長さんに会ってもらうのが決まりだから」
「わかったお願いします。」
少し歩くと集会所のような建物が見えて、建物の前のベンチに座ってこっちを見ている人物がいる、白髪の長い髭をたくわえて優しそうな笑みを浮かべていた。
二人は近づいていき、ニコルが声をかけた、
「村長さん、こんにちは」
「こんにちはニコル、さて、そちらの方はどなたかな?」
「こんにちは村長さん初めましてイアンと申します」
「こんにちはイアンくん」
ニコルがさっき起こった事を話した、村長は長い顎(あご)鬚(ひげ)を触りながら…
「なるほど話はわかったゆっくりしていくと良い、ところで君は変わった格好をしているが気になったのはそのベルトのマークじゃ、同じマークが社(やしろ)の場所にある」
「このバックルと同じマークのものがあるのですか?それは凄く興味があります」
横で笑みを浮かべながら、
「あとで私が案内してあげる」
村長に別れの挨拶をして二人は歩き始めると、
「あなたお腹すいてないの?」
「少し空いている、何か食べさせてくれるの?」
イアンはよその国の食べ物に興味津々であった。
「私の家に行って何か食べようよ」
少し歩くとニコルの家に着いた、木造平屋のしっかりした作りの家だ。
「おかあさんただいま」
と声を出すと母親が奥から出てきた。
「まぁニコルお客さんを連れてきたの?」
「そうよ母さんお腹すいたから何か作って」
笑いながら、
「もう帰ってくると思って用意してあるわ」
テーブルに案内してニコルも奥に入っていった。
五分くらいで二人は四角いトレーのような物に、料理を乗せて運んできた、
木のボールに入った具沢山のスープと木のスプーン、パンがのっている、
二人が座り食事が始まった、
イアンはうれしそうに、
「いただきます。凄くいいにおいだ」
美味しそうに食べていると母親が優しく笑いながら、
「たくさんあるからおかわりしても良いわよ」
「ありがとう凄く美味しい、この中に何が入っているのですか?」
「畑で採れた野菜とイノシシの肉よ」
食事は終わり、家族のことを聞くと祖母・父親・母親・ニコル(十七歳)弟ポコ(十五歳)の五人家族で今はおばあさんとポコは畑に、父親は仲間と猟に行っているらしい。
バックルのマークの話しが気になって、
「さっき言っていた社に連れて行ってくれないか?」
「いいよ、すぐ行きましょう」
イアンは、母親にお礼を言って二人は社に向った。
3
五分くらい歩くと、丘のような場所に小山が見えてきた、
円錐型の石を積み上げた柱が二本と、階段が見える。
近づいて階段を上って行くと右手に、人工的に作った丸い祠(ほこら)が見えたので、
指をさして、
「あれはなに?」
「亡くなった人の頭蓋骨を祀(まつ)ってあるの」
「そうなのか」
話しながら階段を上りきったところでバックルが光りはじめた。
何かに反応しているようだ。
目の前の光景に驚いた!
小山のように見えた物は、
長年にわたり雨風にさらされて、すっかり土に埋もれ、
コケがついた大きな物体だ、
マークの部分は村人が磨いているようで、汚れていない。
「これは自分達のマークと同じだ」マークを手で触り確信した。
理解できずイアンの行動をじっと見つめている、腕のリングから電波を送ると、マークの場所が開いて入り口ができたのだ。
只々驚いて口を押さえている、
イアンが中に入ると恐る恐るついて来た、船の中は予備の電気が使われている。
周りを見渡して…
「不思議だ、かなり年月が経っているようだけど僕たちの船とよく似ている」
迷わず機械の前に行き記録を探していると、透明なスクリーンに映像が出て語りだした。
「私の名前はポール・ジャクソン一時間くらい前に十九万年の眠りから目を覚ましたばかりだ、
何故こうなったのか今から話をはじめよう。
ジム・ハリソンキャプテンとクルー三十名○年○月○日惑星アトラを出発旅の途中で磁気嵐にあい
【コンピューターや計器類が制御不能になる】
ワープ【超光速航法・瞬間移動】をした、
すると今度は流星群の中に出てすぐまたワープをする羽目になった、
燃料は少しになりこの惑星に辿り着いた、
この星は寒冷期だったが、比較的暖かい場所を探して住みはじめた、
百年後、人口は増えて大規模な街になったが、ある日気候の変動が起こり極寒となった街は、氷に閉ざされ始めたので、
人々は飛行船に乗り込み各地へ散らばって行った―。
この地に下りて長期冬眠モードにしたカプセルに入り、気候が良くなるまで待った、
この船には二十名乗っている今から外に出て調査をはじめる」
頷きながら、
「なるほど記録によると、今から百五十年くらい前に、ポールさんは目覚めたようだ、
ニコルたちのご先祖様だね、ちなみにジム・ハリソンは僕のおじいさんだよ、
時間のズレが起きて十九万年前に着いたんだ」
記録を入力した後納得したように、
「ニコル船を出るよ」
頷いて後をついていった、
入り口が閉まったあと、
「驚きの連続ねでも、なんとなく理解できたわ」
イアンは真剣な顔をして、
「僕もまさかこんな展開になるとは思わなかった、でも大きな収穫だ、キャプテンに報告しなくてはきっとびっくりするよ」
興奮気味に、
「私たちはつまり、同じ人間と言うことかしら」
「そうだね、初めて会ったときそう感じたよ」
「複雑だけど何となくうれしいわ」
「じゃあ今日は帰るから門まで送ってもらえる?」
会話をしながら門まで歩き着いたところでイアンは言った。
「また必ず来るからコレを持っていて」
と言いながらマークの付いたペンダントを手渡すと、
「それを首にかけてみて、十キロ以内だとペンダントが光り会話ができるんだ」
そう言って別れた後、飛行船に着いたところで、手首に付いたリングで話しかけた。
「ニコルぼくだよ」
ペンダントが光り、
「イアン聞こえるわ」
「それじゃあ今日は帰るけど近くに着たらまた連絡するから」
「わかった。また会いましょう」
4
上機嫌で帰っていき、そして出発するときにはなかった町を見下ろしながらホープの中へ入っていった。
司令室に行くとすでに調査隊三名も帰っていた、キャプテンがイアンの方を見てー
「やぁお帰りイアン、みんなもさっき戻ったばかりだ」
「遅くなりましたあとでよい報告があります」
と言って席に座って、
みんなの話を聞いていると、
あっちこっちに村が点在していて、東には大きな村もあるようだ、そしてイアンの番が来たので、
今日起きた出来事を一通り話した後、記録データをコンピューターに入力した。
透明なスクリーンから情報が流れ出すと、全員が息を呑み驚愕(きょうがく)している。
キャプテンは手を叩いて言った、
「イアンでかしたな、これはすごい情報だ、私の父たちは我々の五年前に出発していたのだが、
まさかこの様な事態になっていたとは想像もしなかった、
約十九万年前にこの星に来ていたことになり、
子孫を作り繁栄していたということだ、
コンピューターによると寒冷期が何度か繰り返し、約二~三百年前から温暖な気候になり、
場所にもよるが徐々に氷が溶けたのだろう、
これは興味深い話だ。
我々と同じDNAを持った人間が大勢存在している事になる、
引き続き調査をしてくれ今日は皆さんご苦労様でした」
会議は終わったので弟に通信を送ると、
「にぃちゃん何かよう?」
「仕事が終わったから会おうか今どこにいるの?」
弟は噴水のところにいるというので行ってみると、
子ども達と遊んでいた、
ベンチに二人並んで腰をかけて今日の出来事を話すと目を輝かせて「すげぇすげぇ」と連発して声を出し大興奮した。
しばらく話をしていると急に黒い大きな影が横切った、
見上げてみると不気味な宇宙船が飛んでいる二人は顔を見合わせてロビンが不安そうな顔で、
「何かいやな感じだね」と声を出した。
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