第4話 筆が遊び、僕は生まれる。

 僕は、僕を見ている。

 僕が見ている僕は、四角いキャンバスの中で自由に宇宙を飛んでいる。

 僕って、こんな形なんだ。なんかすごく、カッコいい。


 そうか、僕はこの人によって生み出されたんだ。この人の頭の中にいる僕と、この人の頭の中にある宇宙。自由気ままに起きて飛んで、僕は幸せだよ。


 この人は今まで何度か、僕を生み出そうとした。暑い時期に僕を生み出そうとした。

 でも、いつも途中で僕の上から違う色の絵具を置くんだ。


 今日も僕は宇宙を翔ける。

 この人に上書きされるまで、自由に翔ける。筆が自由に遊んで、僕は翔ける。


──どうか僕を完成させてね。



『きらきらの羽根』

──完──

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きらきらの羽根 幻中六花 @mamonaka_locca

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