エピローグ
「あの……殿下。ご無礼を承知でお尋ねしたいことがあるのですが。あの二人が何者か、わかっておられるのですか?」
「ええ、わかっているわ。『常闇の人々』でしょう。違うの?」
「あ、いや。オ……僕はあくまで彼らは自称『常闇の人々』と思っていたので」
「自称でも何だって良いわ。あの子たちがこの世界に来ているっていう風の噂を聞いて、ずっと会いたいと思っていたから」
「殿下。本当に、本当に、常闇族はいると信じているんですか?」
「信じることぐらいさせてくださいよ」
「あ……はい。そう……ですよね」
「もし、常闇族がいなかったとしても、死んだ孫たちが会いに来てくれたのよ。わたくしはそれだけで幸せ」
「え? 孫?」
★
「あのババア、ヒジリのバカにそんなこと言わなくて良いのに!」
額縁の中に映った祖母さんとヒジリの姿を見て、ジャスは悪態をつく。
「まあ、まあ。無事、金のジャイロスコープを取り戻せて良かったし、それぐらいは」
深紅の椅子に座ったあたしは、机の上から「金のジャイロスコープ」を手に取る。
「それはそうと、あいつはなんだったんだろうね」
あたしはジャスの方を見る。
「逃げちゃったもんね……。ボクらは『金のジャイロスコープ』を持って行く義務はあっても、捕まえる権利や義務はないから、いいんじゃない?」
「まあ、そうなんだけど……。戻ったら、長やチャリオットさんにご報告をしないといけないとは思うわ」
「それはしないとダメだよね」
ジャスは大きく背伸びをする。
「あー。でも悔しいわ。たかが眷属に逃げられるなんて! しかも頭の悪そうな龍になんて!」
あたしは思わず悪態をついてしまう。
「馬鹿で良かったじゃないか。『金のジャイロスコープ』の使い方を読めないスカタンでさ。もしも、ちょっとでもこの情報を握っている奴だったら、この程度で済まなかったよ」
「そりゃあ、そうだけどさあ……」
「終わりよければ、すべてよしって言うし」
ジャスはそう言いながら、窓の桟にもたれかかる。
「でも、まさか、今があの祖母さんが生きてる時代とは思わなかったよ。ボクらが常闇に転生してから、結構時間が経っているはずなのに、ピンシャンしてるなんてさ」
「そうよねえ」
あたしは頬杖をつく。そして、深く溜め息をつくと、
「やっぱり、悔しいわ。あんな低俗な眷属にやられるなんて! 悔しくて腹立ってきた。帰りましょ。ここにいても仕方が無いんだし」
あたしの言葉に、窓の方に移動していたジャスは、
「ちょっと待って」
と話す。
「ん? 何かあるの?」
「そこに、クレープ屋さんが来てる。有機体を返したら、しばらく食べれないからね。行ってくる。ウィズも食べなよ。イライラしているのはお腹がすいているからでしょ?」
ジャスは相変わらずなんだから。あたしは、違う、そうじゃないわ、と一言、言って
おいた。
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