第4話 夢日記をはじめる③

俺は、深夜になっても興奮して眠れなかった。夢日記を書くことで、何かが変わると期待していたが、現実はそう簡単ではなかったようだ。


「うーん、これはどうしたもんかなあ。せっかくの夢日記の機会を逃すわけにもいかんしなあ。思ったが吉日だしなあ。」

俺は考え込んだ。


すると、ふと思いついた。「そうだ、何か刺激的なことをしてみればいいんだ!」


自分を刺激して、興奮を高めることで眠りにつきやすくなるという話を聞いたことがある。逆転の発想だな。知らんけど。

今までの生活が単調すぎてあまり興奮するようなことがなかったので、それが原因かもしれないと思った。


「じゃあ、何をすればいいかな。うーん、そうだ! オンラインゲームでもやってみるか。あの世界に入り込めば、俺の心も興奮するに違いない!」


俺は、パソコンを立ち上げて、オンラインゲームにログインした。


「うおおおおお! こっこれは…!?」


しばらくプレイしていると、確かに興奮が高まってきた。自分がプレイヤーキャラクターになり、仮想世界で冒険するという感覚に、俺の心は奮い立っていった。


「もしかしてオンラインゲームも夢見たいなものか!? 仮想現実だし。」


その後、ゲームを終え、再び夢日記を書き開く。自分は気が付いたらゲームをやった感想を夢日記に書いていた。疲れてたのかな?


「あれ、意識が飛びそうだ…。よし、これで夢日記を書けるぞ。さて、今晩はどんな夢を見るかな?」

視界がぐにゃぐにゃしているなかで、俺はチラッと時計を見た。気が付くと午前の5時だった。


「ま、まずい。今寝たら学校に間違いなく遅刻する。」

俺は結局、気合いで起き続けて寝ないで学校へ行くことを選択した。


次の日、授業中には思わぬ眠気に襲われていた。俺は、夜更かしとオンラインゲームの興奮が、体力を奪ってしまったことに気が付いた。


「やっぱり、夜更かしは良くないよなあ。しかもこの授業の先生の柏木、めっちゃ怖いんだよなあ。」

「はい、ここの問題はテストに出すので覚えておくように!」

視界がぐるぐると回り出した。椅子に座って動かないからか、なおさら眠気がやってくる。


「あっダメだ…」

自分はどうやら授業中に眠りに落ちてしまったらしい。




「はっ、なんなんだここは…」

よく分からないけど、ものすごい胸がざわざわする。意識が朦朧としている中、俺は周囲にいる人々に呼びかけた。


「助けてくれ! なんかおかしいんだ! どうなっている!」


しかし、誰も俺に反応しなかった。俺は手を伸ばし、周囲を探ったが、何もつかめない。


「誰かいないのか? 助けてくれ! 誰でもいいんだ!」

俺は絶望感に打ちひしがれた。何もかもが現実と夢の狭間で、俺自身がどこにいるのかも分からなくなってしまった。俺ってなんなんだ?


「助けにきたよ! 早く私の手を掴んで!」

後方から女の子の声が聞こえる。


「あっ、どこだ!? どこなんだ! 俺を助けてくれ!」

何も見えない。周囲の人もただの影のように見える。


「怖がらずに飛び込んで! 掴んで!」

「う、うおおおおお!」

俺は一生懸命に手を伸ばした。そしたら何かに掴まった。すると向こうも握り返してきた。


「うわああああ!」

しばらくして、俺はようやく目を覚ましたようだ。頭がぼんやりとしていたが、現実と夢の区別がつくようになっていた。


「はぁはぁ…。ああ、夢か。よかった…。ん、あれ? 何かがおかしいぞ?」

目覚めると俺の手を誰かが握っていた。俺はゆっくりと顔をあげる。すると誰かが俺を覗き込んでいた。


「おはよう! ゆうとくん。今から起こることはすべて現実だよ! 分かってるね?」

「あ、アハハハ! 先生やだなぁもう…。」


柏木は満面の笑みで俺の手を握っていたのだ。冷や汗が垂れる。これも夢であって欲しい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界を越えて君に会いたい 夢日記ノベリスト @supesuzu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ