第36話 恋愛占鑑定士

「クラン、これって卑怯じゃない?」


 ステフが小声でつぶやいた。


「まあ、見てろって。コウタ、乱戦になった場合は、お前が攻撃の要だ。俺は、口だけで倒す」


「口だけでですか」


 半信半疑のようだな。裏ステータスを甘く見たらいけないぞ。そして、恋のもつれの恐ろしさもな。


「そして、二人目ハンナ!」


「え、私?」


 ドキワク暴露ターイム♪


「お前はハモンドが好きなあまり、ゴンベをふった!」


 ゴンベと呼ばれた魔術師の男は、成り行きを黙って見ていた。静かな怒り。


 だが、それが確信に変わったという強固なものになる。


 お、ハンナにつかみかかった。


「お前に何回プロポーズしたと思ってる!」


 プロポーズ回数、計三回か。過去の欄の詳細。切ないね。何度もプロポーズをあきらめない、その根性に拍手。


「か、回数の問題じゃないでしょ! あのときは私はハモンドとつき合ってたのよ!」


 ゴンベがハンナの肩をつかんで、押し倒す。おお、激しいね。これは、泥沼の予感。ドキワクしてくるよな。じゃあ、四人目!


「それから、四人目アマンダ! お前は――」


 あんまりきつく言うとかわいそうかな。


「ハモンドにふられただけだ。ガンバレ」


「え、わ、私? はい、がんばります。恋愛ラブキュー鑑定士ピットさん」と、片隅で見守っていたアマンダは小さくうなずく。


 あ、俺は恋愛ラブキュー鑑定士ピットになるのは嫌だったんだけど。


 ま、しょうがないよな。でも、アマンダを味方につけたぞ。


 アマンダの習得してる呪文の欄見た? あんなに魔法が羅列られつされてたらさ。勝ち目ないじゃんって俺凹むところだったぞ。


「そして、俺はアマンダにふられた」と、五人目のリーダー格の男。


「あ、そこ、自分で言うのかよ! ったく、恋愛事情がもつれすぎだろ魔術師集団!」


 ゴンベが押し倒したハンナの髪をむしり取る。ダメージとしては、10程度。


 ゴンベからはいつくばって逃れたハンナは、ハモンドの足に食らいつく。


 おお、これまた痛い攻撃。もう、歯からいっちゃうとか、もう修羅場すぎてたまらないよな。もう、手も足も口も出るってか。


「ここらで、盛り上げますか」


 弓をつがえる。矢は四本。親指と人差し指、人差し指と中指、中指と薬指、薬指と小指の間にそれぞれはさむ。麻痺の確率は半分。


 バシュ!


 一度に四発。十人中、四人に当たればそれでよし。恋愛デスマッチ中以外の四人だ。ポイントは全てかすり傷ですまさせること。矢で倒しちゃったらつまらないし。結果、三人麻痺。


「お前たちなにをしている! 戦え、あの宮廷キング鑑定士アイを焼き殺せ!」


 リーダー格の魔術師は、俺のことを知ってるみたいだ。鑑定士じゃなくて、宮廷の鑑定士って知ってたよな。


「そうか俺って有名人? 町でうわさのクビになった宮廷キング鑑定士アイ様ですよっと」

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