第34話 ステータスは見放題(ステータス画面ネタ回)

 人の焼け焦げた臭いが風でただよって来る。黒い灰が残った熱風で飛んできた。焼け死んだ剣士と魔術師の髪も混じっている。ステフは鼻が敏感だから必死に鼻を押さえている。


 吐き気をもよおす。焦げ臭さすぎる。


 コウタはもうすでに泣いているので、俺は目を押さえといてやる。勇者候補といえど、異世界日本人のピュアなハートを守らなければ! 


 二人分の肉がこんがり焼かれてくち果てている。残り火が消える。骨だけ黒い泥を塗ったような状態で残った。肉は欠片も残らなかった。


 炎の上位魔法。それを唱えた下っ端魔術師は、魔術師集団に答えをあおぐ。


「邪魔者はいなくなりました」


 魔術師集団のリーダー格と思われる男がうなずく。顔はフードで隠れて鍾乳石しょうにゅうせきの陰からじゃ、よく見えない。魔術師たちは全部で十人。一体全体なんの集団だ?


「下っ端が炎の上位魔法を使えるってことは、あいつらAランク。いや、全員が魔術師ってことも考慮すると、おそらくSランクパーティ」


 コウタが俺の手を押しのけて涙をふく。


「あ、あれがSランクパーティーなんですか?」


 のぞき込もうとするので、引きとどめる。


「バカよせ。消されるぞ。俺たちも」


 本当にSランクの実力者たちなのか、目視で推し量るのは難しい。強制ステータスオープンだな。


「では、先に進もう」




 魔術師のリーダー格の男が、俺たちの隠れている鍾乳石しょうにゅうせきの方に向かってくる。


 うおー! まずい。


「こっち来た。かがめ! 伏せろ! はいつくばれ!」


「ダーリン。あたしの美脚が、はみ出る」


「うっさい黙れ」


 敵は十人。だが、ステータスは見放題。月額無料。じっくり見るには時間がないか? 分からない。スピード勝負だ。十人分見放題してやる!


 スィン。スィンスィンスィンスィンスィンスィンスィンスィンスィン。




 一人目

【名 前】 ハモンド

【種 族】 人間

【性 別】 男

【レベル】 900

【体 力】 1000

【攻撃力】 800

【防御力】 500

【魔 力】 400

【速 さ】 800

【固有スキル】『幻惑』幻覚を見せる。


裏ステータス

【魔 法】 体感フィード時間ロス延長スロウ

【特 技】 なし

【弱 点】 青春時代の黒歴史

深層心理……出世したい

願望……金儲けしたい

過去……いつまでさかのぼりますか? 年数を選択して下さい。


 二人目

【名 前】 ハンナ

【種 族】 人間

【性 別】 女

【レベル】 750

【体 力】 700

【攻撃力】 900

【防御力】 700

【魔 力】 800

【速 さ】 900

【固有スキル】『ダンス』敵を踊らせる。


裏ステータス

【魔 法】 体感フィード時間ロス延長スロウ剃屑刃ソリッダ

【特 技】 なし

【弱 点】 ハモンド(元カレ)との嫌な思い出

深層心理……彼氏募集中

願望……恋愛したい

過去……いつまでさかのぼりますか? 年数を選択して下さい。


 三人目

【名 前】 ゴンベ

【種 族】 人間

【性 別】 男

【レベル】 600

【体 力】 900

【攻撃力】 900

【防御力】 700

【魔 力】 600

【速 さ】 600

【固有スキル】『歌歌い』歌で攻撃魔法の威力を上げる。


裏ステータス

【魔 法】 体感フィード時間ロス延長スロウ剃屑刃ソリッダ睡魔レム誘発バラード水流砕岩ウォーターダラー

【特 技】 肘鉄、足蹴り

【弱 点】 ハンナにふられた過去

深層心理……もっとイケメンになりたい

願望……髪型を変えたい

過去……いつまでさかのぼりますか? 年数を選択して下さい。


四人目

【名 前】 アマンダ

【種 族】 人間

【性 別】 女

【レベル】 800

【体 力】 800

【攻撃力】 650

【防御力】 750

【魔 力】 600

【速 さ】 800

【固有スキル】なし


裏ステータス

【魔 法】 体感フィード時間ロス延長スロウ剃屑刃ソリッダ睡魔レム誘発バラード水流砕岩ウォーターダラー照明ポラ魔法イト火炎球ファイヤーボール中級火炎球ファイヤーボール上級火炎球ファイヤーボール斬撃スライスラ飛翔ライド自白テルミ魔法オール

【特 技】 絞殺、膝蹴り、エルボー、ローキック、ハイキック、ドロップキック、タックル、右フック、左フック、踵落とし、回し蹴り、宣戦布告、降参

【弱 点】 ハモンドにふられた過去

深層心理……もっと美人になりたい

願望……化粧をなおしたい

過去……いつまでさかのぼりますか? 年数を選択して下さい。




 五人目……これまだ見るのか俺。


 まだ見る? 


 ほんとに? ほんとにほんと?


 どんどん、魔法とか特技とか増えていってるけど?


 もう、見るのめんどくさくない?


 さすがに、もういいだろ。もう見るの疲れた。


 そうだよな? そうだと言ってくれ俺! っていうか、来る!


 魔術師の影がおおいかぶさった。もう、見つかる。


「もう無理いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい! 呪文多すぎいいいい! お前らの恋愛事情なんか、知ったことかあああああああああ」


「誰だ! そこにいるのは!」

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